月刊誌 指導と評価

2001年 7月号
  1. 2001年 7月号 Vol.47-7 No.558  定価:450円
特集
学校の自己点検・自己評価
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特集

学校の自己点検・自己評価は今なぜ必要か

聖徳大学教授  牧 昌見

★「ゆとりの中で生きる力の育成」を目指すためには、「できるかぎり学学校の判断にて自律的に特色ある学校教育活動」を行うことができるようにしなければならないとは、中教審の提言である。このためには、学校の経営責任の明確化が求められるというわけである。学校の自己評価の必要性はここにある。

★小中学校を中心に、学校評価が行われてきたが、十分に機能してきていないというのが実情である。

★自己評価のためには、自校の実態把握のあり方が決定的となる。そうでないと、なぜ、何を教育実践の名の下に行っているかを説明できないからである。本稿で示した「学校経営診断カード」は、そのための一つの工夫である。校長としては、リーダーシップを発揮すべきところはどこかなどについて、データに基づいて対応できるからである。

カリキュラム評価

京都大学大学院教授  天野 正輝

★評価の活動は一連の教育実践の全過程に内在しており、この評価を自覚的に位置づけ機能させること(自己点検・自己評価)が、学校の自主性・自律性確立の基本条件である。

★カリキュラム評価は、教育目標を効果的に達成するために、カリキュラムの立案と実施が適切に行われたかどうかを点検し、改善点を明らかにすることである。そこに、学校・教師の主体的実践を支える原点がある。

★カリキュラム評価とその研究が不振である要因をつきとめ、そこからカリキュラム評価実施上の留意点を明らかにする。

学校の自己点検・自己評価としての授業評価

跡見学園女子大学教授  藤澤 伸介

★適切な授業評価を考えることは、適切な学習者評価を考えることにつながる。教師支援の立場から授業評価を考え、八つの点を指摘したい。

1.理想的授業モデルがあるわけではない。 

2.時には、教師も生徒役を体験してみる。 

3.評価者に魅力が評価できるようにする。 

4.評価法は魅力が反映できるようにする。 

5.学習活動を考えた授業を高く評価する。 

6.評価の後は、改善策を学習者と考える。 

7.結果と改善策の公開で信頼感の獲得を。 

8.公開時は学習者のプライバシーに配慮。

我が校の標準学力検査による教科指導の自己点検

秋田県鷹巣町立中央小学校教諭  嶋田 美香

★毎年、年中行事のようにただ行っている学力検査になっていないだろうか。児童の到達度を測るだけでなく子どもを伸ばす観点から、指導法の改善につなげたいと考え、学校独自の分析を試した。特に定着がよかったところと悪かったところを明確にし、その部分の指導を再点検し、改善点を考える。さらに学級や全校で、ポイントをしぼって新たな実践に取り組むことにした。

1.朝学習の漢字計算スキル 

2.漢字計算ぐんぐんテスト 

3.教科担当からの呼びかけ 

4.TTの活用 

などは全校一致して取り組むことで効果を上げている。今後、さらに、よりよい分析の仕方やカリキュラムの編成の工夫に取り組みたい。

教師による授業評価

元東京都足立区教育研究所長  涌井 澄夫

★今、授業について厳しく問われているのは、教師自身も求めていながら授業に抱く忸怩たる思いにこだわって、教育改革が求めている授業の実現に努めてこなかった「不作為」の行為である。

★その不作為を修復する出発点は教師の自己評価だが、教室での学びが相対化しているので、授業評価に第三者評価を導入することが求められている。

★授業評価の結果を公開し、それを教育改善にどう生かしたかを公表することがアカウンタビリティの内容である。

★授業の評価基準を共同で作ると、相互評価は共通の基準に照らす客観的な作業になり、授業に抱く忸怩たる思いから解放される。

子どもによる授業評価を生かすには

(財)応用教育研究所研修主事  岡安 道夫

★「振り返り」の内授業はありえない。とりわけ子どもによる授業評価は欠かせない。しかし学校の現状をみると、教師と子どもとの関わりの中で、それらが必ずしも機能しない面がみられる。

★それらを解決する手だては、まず教師が変わることであり、子どもの見方を変え、ふれあいのある温かい人間関係を構築することである。その上で、よりよく子どもを理解し、能力・適性に応じたきめ細かな授業を展開していくことである。

★これらの手だてを講ずることによって、子どもによる授業評価は、自然に、本当の意味での活用を図ることになるものと考える。

家庭・地域との協力を求める学校の自己点検・自己評価

東京都世田谷区立松沢小学校長  橋本 誠司

★教育改革のまっただ中にあり、特色ある学校づくり、地域に開かれた学校づくりが求められている。また、学校の説明責任や結果責任が問われ始めている今、他者の声に真摯に耳を傾け、日々の教育活動に生かしていくことが大切である。

★本校では、学校の自己点検・自己評価としての「学校評価」に加えて、「保護者による学校評価」を試みた。学校と家庭・地域が一体となって「ともに育てる、ともに育つ」教育環境作りを目指している。

★「保護者による学校評価アンケート」の結果を次年度の教育課程の編成・実施に生かしてきたが、アンケートの内容・対象などを検討・改善していきたい。

日常の教育活動に生かす我が校の学校評価

滋賀県大津市立瀬田北小学校長  前山 享

★教育実践者として、責任ある教育を展開するために、著しい社会変化の中で求められる学力観、学習観、教育観を明確にする。

★学習を「学びとその活用」という一連の流れの中でとらえ、幅広い観点に立った多様な評価観を創造していく。

★学校経営基本構想の中で、自己決定学習や基礎・基本の徹底を明確に位置づけ、それぞれにかかわる教師の資質・力量の観点を明らかにするとともに、学びの道筋を構造化する。

★あくまでも個人が具体的目標、仮説、活動を設定し研究推進する方式の構内研究を通じて、教師自らの学習観の変革を図るとともに、学びを活動に、活動から学びをという、より高次な学習への発展をめざした評価観を構築し、あわせて信念をもった教育姿勢の構築を図る。

日常の教育活動に生かす我が校の学校評価

青山学院大学教授  坪田 耕三

★筑波大学附属小学校でおこなわれている教育実践のなかでの評価活動に関する考え方を中心に述べたものである。

★現職教育の場であることがこの学校の大きな使命でもあり、教科・道徳および、総合活動の新しい試みをつねに発進している。したがって、その中で行われる評価の考え方は、次の授業をよりよくするためのものといった考え方になる。

★この数年に行われてきた研究「自分づくりを支える教育課程」の実践の成果をふまえ、次の研究「子どもの豊かさに培う共生・共創の学び」へ向かう研究過程でのいくつかの事例も紹介する。

連載

生きる力を育てる評価(9)   「豊かな人間性」 筑波大学名誉教授
高野 清純
教科の基礎・基本(12)   <中学校社会科>(2) 筑波大学付属中学校教諭
山口 正
パフォーマンス評価の実践的研究(4)   「外国語(英語)科」 国立教育政策研究所名誉所員
渡邉 寛治
新しい教育評価の動向   主要論文の概説(3)「H・カードナー」 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
総合的な学習の実践と評価(3)   「瞬時の評価で」 東北福祉大学特任教授
有田 和正
だんわしつ 甲南女子大学助教授
原田 隆司
ひとりごと 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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