月刊誌 指導と評価

2001年 8月号
  1. 2001年 8月号 Vol.47-8 No.559  定価:450円
特集
基礎・基本の考え方と実際
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特集

今日の学力観と基礎・基本

聖徳大学教授  福沢 周亮

★学力を「学校という場における教授=学習活動によって形成される能力」と考える。学力の中に、知的能力、感情能力、技能能力、態度能力、または、知的学力、技能的学力、態度的学力の種類を認める。

★学習指導要領の学力観をみると、時代の要請や社会の要請によって、考え方が変わってきていることがわかる。今回は、「自ら学び自ら考える力」と「基礎的・基本的な内容の確実な定着」が両輪になっており、体験的学習や問題解決的な学習の積極的採用が求められている。

★今日の学力観では、基礎・基本をどう考えるかがカギで、上の教育方法を採用し、態度の育成に重点をおいても、国語や算数では系統的な学習への配慮が必要である。

総合的な学習と基礎・基本

東京大学名誉教授  柴田 義松

★「総合的な学習」では「自ら学び自ら考えるなど<生きる力>をはぐくむ」ことをめざし、基礎・基本については「繰り返し学習」をすることによって確実な習得を図るというような二元論的学習では、創造的能力の育成もおぼつかないし、基礎・基本の確実な習得も保障しえない。

★基礎・基本の確実な定着を図るためには、従来の内容を間引きするだけの量的精選ではなく、教科構造の質的改造を図るような、真に学問的に裏付けられた基礎・基本に内容を精選することが必要である。

基礎基本が問われる背景 -大学から-

京都大学教授  上野 健爾

★大学の実情からは、ここ十数年、学力低下が続いている。入試の答案や授業で自分で考えて工夫することができない学生が増えた。

★第三回国際数学・理科教育調査の結果でも、少し見れば、通常の学力も、自ら考える力も低下していることは明らかだ。

★「ゆとり教育」というこの間の教育改革は、めざす目標とはほど遠い結果をもたらした。

★21世紀に必要な基礎学力とは、まず自分の考えを的確に表現できる「読み・書き・話す」力と現実を科学的に分析できる論理力・数値把握能力である。

★授業時間を増やし授業内容の密度を高めて、小・中学校では、「読み書き計算」を十分行わせることや、なぜという疑問をもったり、求め方を自分で考えて工夫する経験が必要だ。

基礎・基本を身につける実践   読み書き計算の徹底反復を軸に

広島県尾道市立土堂小学校長  陰山 英男

★新学力観の十年が終わったあと、突然低学力問題が提起された。そして、今度はその反対ともいえる基礎基本という古典的な教育が急に注目されはじめた。あまりにも急激なこの転換はなぜ起きたか。そして、平凡ともいえる山口小学校の実践がなぜ注目をあつめることになったのか。その読み書き計算の徹底反復という古典的な手法を支える革新性を明らかにし、来る新教育課程の問題克服の手がかりを提起したい。そしてそのことが、勉強することが子どもの心を荒らすという、教育界の悪しき迷信に終止符を打ち、21世紀の教育再生の一助となればいいのだが。

基礎・基本を身につける実践   国語・算数の「スキルタイム」

宮城県仙台市立荒町小学校教諭  佐藤 優

★平成14年度からの新学習指導要領の完全実施に向け、学校改革を進めてきた。その中で、学習の基礎・基本である読み・書き・計算については、全児童にしっかりと定着させるために、朝に15分間の「スキルタイム」を設定し、全校一斉に取り組むことにした。

★「スキルタイム」を導入するにあたっては、学校改革の中の「一日のリズムの再編成」「モジュール制の導入」「授業時間の確保」などが条件である。

★いくつかの確認事項をもとに、各学年、児童の実体に応じてさまざまな方法で取り組んだ結果、基礎学力の向上につながった。

基礎・基本を身につける実践   習熟度別編成による中学校数学の基礎・基本の徹底

全校国公立幼稚園長会事務局長・前東京都公立中学校長  楚阪 博

★中学校数学で基礎・基本を身につけるため、昨年度より習熟度別指導に取り組んできた。自分の学習状況を自己診断して自分に会った問題に取り組むことで、基礎・基本の力とともに、学習の仕方を身につけることを目指している。

★能力別編成とは違うことから、次の点に配慮している。

1.自分の理解度状況や目標から自分の希望で学習コースを決める。途中でのコース変更もできる。

2.全員に全問題・解答を配り、どの子も努力すれば最高をめざせるようにする。

3.学習が進んだ子にミニティーチャーとして教えさせる。

4.授業時間外にも学習相談時間をもうける。

5.学校公開を通して、生徒の様子を保護者・地域の方にも見てもらう。

標準学力検査を利用した基礎・基本の評価

栃木県小山市教育委員会指導主事  橋本 美智明

★標準学力検査には、NRTといわれる相対評価検査と、CRTといわれる到達度評価検査の2種類があり、知能検査や学習適応性検査とバッテリー利用することで、児童生徒をより客観的、多面的に理解する資料として有効活用できる。

★標準学力検査は、児童生徒の実態を把握し、指導の改善や教育計画の見直しに、個人レベル、学級・学年・学校レベル、市レベルでその有効活用を考えることが必要である。

★絶対評価への準備が急務となってきている現在、各学校においては評価観を統一した上で、標準学力検査と自分たちの評価や評定を比較し、より客観性のある評価システムづくりに生かしていくことが必要である。

連載

新しい観点別評価のポイント(1)   小学校国語科 文部科学省教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官
井上 一郎
新しい観点別評価のポイント(1)   中学校国語科 文部科学省教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官
河野 庸介
教科の基礎・基本(13)   <中学校社会科>(3) 元大正大学教授
館 潤二
パフォーマンス評価の実践的研究(5)   「算数科」 青山学院大学教授
坪田 耕三
生きる力を育てる評価(10)   「健康面の評価」 九州女子短期大学教授
鈴木 美智子
総合的な学習の実践と評価(4)   「単元指導計画等の改善(1)」 千葉市教育委員会教育センター指導主事
硲 茂樹
だんわしつ 滋賀県今津町立今津中学校教諭
来見 誠二
ひとりごと 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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