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月刊誌 指導と評価

2003年 6月号
  1. 2003年 6月号  Vol.49-06 No.581  定価:450円
特集
  • 学習適性としての知能
  • 【在庫なし】
  • 特集

    知能とは何か
    (財)応用教育研究所所長  辰野 千壽

    ★今日の教育では、個性重視の原則の下に確かな学力の向上を目指し、個に応じたきめ細かな指導を提唱している。この指導を効果的に行うためには、まず個々の子どもの個性(独自性)の重要な側面である知能について正しく理解することが必要である。

    ★現在では、知能は学習に対する適性と考えられており、知能検査は、学習適性の個人間差異だけでなく、個人の知能の特徴(個人内差異)を明らかにするものと考えられている。

    ★ここでは、知能の考え方、特性論・構造論と過程論、知能・適性・学力の関係などについて最近の考え方を述べる。

    知能観と知能検査の変遷
    関西大学教授  比留間 太白

    ★知能観と知能研究は相互に影響を与えている。私たちの素朴な知能観が最新の知能理論に反映されたり、知能研究の成果が私たちの知能への見方に影響を与えている。

    ★知能研究の変遷をひと言でまとめるなら、それは知能研究における対象・方法・概念の拡張の歴史であったといえる。

    ★知能の遺伝的性質は、知能研究の先駆者であるゴールトンの時代からの重要なトピックである。最近では、知能の教育可能性についても検討され、肯定的な結果も得られている。

    ★ここでは、知能観と知能研究との関係、ゴールトンからガードナーまでの知能理論と知能検査の変遷、そして知能の教育可能性について述べる。

    測定の立場から見た知能検査の原理
    法政大学教授  服部 環

    ★長い間、因子分析法を用いて知能の構造が研究されてきた。スピアマンのモデルを用いて、測定の考え方を説明した。

    ★従来の因子分析には統計的にはやや決定力に欠ける点たあり、そのために多くの知能構造モデルが提案されてきた。しかし今日では、統計的にも優れた手法が開発され、知能構造モデルの研究に応用されることが期待できる。

    ★知能検査の妥当性と信頼性について説明した。二つの検査を概観したところ、手引き書には妥当性と信頼性について記述されていた。

    ★知能検査の得点に成長曲線モデルを当てはめ、知能を固定的に考えるべきではないこと、さらに発達的な変化にも個人差が大きいことを示した。

    集団知能検査はどのように活用できるか
    (一財)応用教育研究所副所長  宮島 邦夫

    ★集団式知能検査は多人数の情報を短時間で入手できる。教研式新学年別知能検査は、その集団式知能検査に分類される。

    ★新学年別知能検査から得られる様々なデータは、学習する上での知的な面の個性を知るために有効である。

    ★知能検査の結果は集団内の相対的位置が知能偏差値で示されるので、同じく集団内の相対的位置を偏差値で表す標準学力検査NRTが相関的利用には適する。知能・学力相関座標は新成就値の理論を背景に持ち、知能相応の学力を発揮しているかどうかが視覚的に把握できる。

    ★学力向上が叫ばれる中、集団式知能検査の利用価値が高まってくるであろう。

    児童相談所におけるLD児の診断   個別知能検査WISCについて
    大阪府中央子ども家庭センター健全育成課長  山本 恒雄

    ★児童相談所では、児童の診断に心理学的アセスメントを用いている。WISCはその一つで、アメリカで開発され日本で標準化された児童用個別知能検査である。年齢・発達の中核とも6歳以上と見られる場合は第一選択肢となる。

    ★WISCでは、実際に現在表現されている知的対応能力を、対応分野の特性毎に測る。動作性と言語性に区別され、また情報処理の特性から、言語理解・知覚統合・注意記憶・処理速度の四つの群に分かれる。これにより、発達にばらつきを示すLDなどの子どもの見立てに役立つ。

    ★ただし、実施の手続き・解釈には、工夫・熟練も要する。

    ★結果は慎重に解釈し、相談当事者・保護者・学校と共有し吟味することが重要である。

    強い認知処理様式を活かした指導と個別知能検査K-ABC
    北海道教育大学札幌校教授  青山 真二

    ★学習のつまずきの原因には、様々なものが考えられるが、特に認知特性の問題は見えにくいために、十分検討されないことが多い。しかしながら、子どもの認知特性を明らかにすることによって、つまずきの原因のみならず、今後の指導の手だてまでが見えてくることが多い。

    ★したがって本稿では、具体的な事例を通して、K-ABCなどによる心理アセスメントの重要性を示す。本事例は、英語等の学習に大きなつまずきを抱えており、認知特性としては、継時処理が同時処理よりも弱いという特徴をもっていた。このため、本児の強い同時処理能力と視覚的短期記憶を活用した英語学習の指導を試み、意欲的な学習態度の形成が図られたケースである。

    学習スタイルに着目した学習指導の工夫   小学校4年算数科の少人数指導を通して
    愛知県吉良町立荻原小学校教諭  牧野 昌世

    ★四年生の算数科学習で、知能検査の知能のタイプ(Aタイプ・Bタイプ)による少人数クラスの編成を行い、「わり算(2)」の単元で、それぞれの特性に合わせた学習指導を工夫した。

    ★特に、Aタイプのクラスについて、Aタイプの特徴である言語的な能力を生かし、次のような指導の工夫を試みた。

    ア.図に言葉を結びつける。(ノート指導)・・・具体的な操作を中心とした活動においては、言語的な補助を必要とするため、図に言葉を添えることで、図の意味をわかりやすくする。

    イ.友達の発言を復唱する。(発言指導)・・・問題の解き方を説明する友達の発言を、そのまま復唱することで理解を深める。

    よさや可能性を生かす学習指導の展開   標準学力検査等を利用してよさを把握し指導法を工夫する
    栃木県足利市立教育研究所次長  若井 祐平

    ★子どものよさや可能性を生かす教育を行うために、まず一人一人のよさや持ち味を把握することが大事である。それには、教師の日常の観察と、教育心理検査を組み合わせたい。

    ★知能検査からは学習適性、学習ペース、課題解決スタイルなどがわかる。

    ★標準学力検査からは学力の実態を客観的に把握できる。

    ★学習適応性検査や性格検査からは、学力に影響を与える環境や学習習慣、性格などを把握し、個に応じた指導やグループ編成の手がかりを得られる。

    ★教育心理検査はバッテリー利用することによって、一層有益な情報が得られる。

    連載

    私が行っている継続可能な目標準拠評価(3)   小学校社会 北海道教育大学附属札幌小学校教諭
    吉村 雅徳
    私が行っている継続可能な目標準拠評価(3)   中学校社会 千葉市立花園中学校教諭
    多田 健芳
    小学校算数の基礎・基本の指導と評価(1)   二つの目標-知能・技能の伝達と活動する力を育てること 元筑波大学附属小学校教諭
    正木 孝昌
    中学校の総合的な学習と選択教科の実践(1)   学ぶよろこび、ふれあうよろこびのある学校をめざして 前兵庫県西宮市立山口中学校教諭
    松岡 健介
    標準学力検査を活用した教育実践(12)   学校としての結果責任と標準学力検査NRT等の活用 栃木県小山市教育委員会指導主事
    橋本 美智明
    だんわしつ 京都教育大京都府亀岡市立安詳小学校教頭
    亀谷 陽三
    ひとりごと 元公立中学校教諭
    吉冨 久人