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月刊誌 指導と評価

2004年 10月号
  1. 2004年 10月号  Vol.50-10 No.598  定価:450円
特集
  • 学校教育の役割
  • 【在庫なし】
  • 特集

    学校の役割の変遷
    日本女子大学教授  岩木 秀夫

    ★1872年の学制に始まる欧米先取りの教育発展と第二次世界大戦での敗北を経て、日本は東西冷戦体制下で世界史上まれにみる経済発展を遂げた。

    ★80年代半ばには「一人勝ち」を先進諸国から批判され、科学技術立国・貿易立国の国是を姿勢緩和・内需拡大に転換した。

    ★それを成熟社会論の論理で教育改革に翻訳したのが臨教審である。「新学力観」「ゆとり・生きる力」はその直接の産物である。

    ★世紀末の学力低下論争を経て、教育政策は英米並みのグローバル能力主義になし崩しに転換しつつあるが、その先にはおぞましい近未来が予測される。

    ★それを回避するには、学力向上・規律回復の異議を、第4次産業論に焦点を合わせて解釈し直すことが必要である。

    学校教育の役割   オーストラリアから学ぶこと
    山梨英和大学副学長  笹森 健

    ★先進各国では総じて、1980-90年代に大きな教育改革が行われた。大まかにいえば、基礎重視と、そのための国としての統一性の強調といえる。

    ★オーストラリアでは、従来の州段階の中央集権的体制から、国としてナショナル・カリキュラムを設定する一方、地域へ権限を委譲し、住民が学校審議会を通じて実質的な学校運営に参加させている。

    ★オーストラリアのナショナル・カリキュラムの特徴は、基礎学力の重視と、公正・平等の理念に沿った教育内容の充実である。後者の具体例は、移民への言語教育・先住民の多様性を尊重した教育・遠隔地教育に現れている。

    「生きる力」「確かな学力」の提唱と21世紀初頭の学校の役割
    東京学芸大学教授  児島 邦宏

    ★二者択一的な学力観のもとで、学校はいずれに向かうべきか混迷状況の中にある。ここから抜け出すには、層的な学力の積み上げによる学力観に立ち、子どもの自立への道筋をとらえることが緊要である。

    ★この上に、知的な面からの確かな学力をしっかりととらえ、個々の子どもに学びが成立するように、きめ細かな指導に取り組まねばならない。

    ★子どもに活動と時間とを保障するという意味から「ゆとり」をとらえ、習熟・定着を図る上で、考える力や表現力などをはぐくむために、体験や実践力を豊にするためゆとりを用意しなければならない。このために豊かな教材が用意される必要がある。

    学校教育で身に付ける学力
    白梅学園大学教授  無藤 隆

    ★学力を、基礎的読み書き算、子どもの主体性と社会との関連性、教科の系統性、自己学習力、学習意欲、客観的に測定される学力、知的広がり、といった面から検討できる。

    ★基礎となる知識・技能とそれを問題解決に適用し、さらに問題そのものを見いだして自ら学んでいく面とからとらえていくことができる。

    ★今後の学校がそのどれかに限定することは好ましくないだろう。とはいえ、学力の形成を学校が独占することも無理になり、家庭・地域との連携や相互補完を以下に進めるかが課題となる。

    ★学校は特に最低水準の共通的な確保と、それを超えた才能の伸張について進めるべきである。個による水準や価値が大きく異なるところは家庭・地域にゆだねられよう。

    学校教育で身に付ける社会性   「他者の視点に立てる」子どもを育てる
    明治大学教授  諸富 祥彦

    ★子どもたちに育てたい社会性を考えると、「他者の視点に立てる」ことが大事である。そのベースになる「役割取得」と「自己肯定感」がポイントだ。

    ★役割を取得する機会が、子どもたちの生活から非常に減少した。それを学校でも家庭でも意識的に補う必要がある。1990年代以降、体験を重視した道徳授業の方法の多様化が進められており、今後もそれを推進したい。

    ★自分のことしか考えないといわれる子どもたちは、実は刹那的で自分も他人も大切にできない、自己肯定感の低い子どもたちが多い。そうした子どもには自己肯定感を高めることが他者の視点に立てるベースになる。

    ★キャリア教育とも結びつけ、自分の人生を大切に思うから、いまは我慢しようという長期的視点をもてる子どもを育てたい。

    特別支援教育と学校教育の役割   障害のある子どもの教育の新しい仕組み
    筑波大学教授・元国立特別支援教育総合研究所上席総括研究員  柘植 雅義

    ★障害のあるこどもの教育が、特殊教育から特別支援教育へ大きく転換した。学習障害児(LD)や注意欠陥・多動性障害児(ADHD)等、通常の学級に在籍するが特別な教育的支援を必要とする児童生徒にも、積極的に対応いていくことを目指している。担任一人が悩んでいた実態から、校内のチームによる支援や必要ならば校外の専門家からの支援も受けられる体制を目指す。

    ★すでに平成15年度から全国でモデル事業が始まっている。支援体制を整備するためのガイドラインや、個別の指導計画作成や指導の進め方が各自治体で作成され始めている。これらを参考に各学校で取り組むことが大切だ。

    ★特別支援教育で進められていることは、一人一人の多様なニーズに応える教育の推進という点で、他の子どもにとっても有効と考えられる。

    キャリア教育と学校教育の役割
    筑波大学人間系教授  藤田 晃之

    ★バブル景気終焉後の日本では、「いい高校→いい大学→いい会社」という人生行路を王道としてきた学歴・学校歴社会が大きな揺らぎをみせている。現在、私たち一人一人が「社会人としての自らの存在価値はどこにあり、それをどう生かしていきようとしているのか」を自問せざるを得なくなっている。

    ★しかし、若者のなかには、きわめて脆弱な勤労観・職業観しかもたないまま、学校から職業への接続を余儀なくされている者が少なくない。若年の早期離職者、モラトリアム型のフリーターなどが増えている。

    ★そこで、「児童生徒一人一人の勤労観、職業観を育てる教育」としてのキャリア教育が必要となる。小・中・高校の12年間にわたるキャリア教育により、視野の拡張と現実吟味の機会を体系的・継続的に提供し、確固たる職業観・勤労観を育てる必要がある。

    教育の弾力化・自由化と学校教育の役割
    帝京大学名誉教授・日本連合教育会会長  亀井 浩明

    ★21世紀になり、生き方・生活スタイルは各自の自由が正しいという発想が次第に有力になってきている。加えてグローバリゼーションの進行に伴う競争の激化があり、各国とも学力の向上に着目している。

    ★自由・競争重視という発想は、今後の基本的流れであり否定はできない。教育もその流れに乗ることとなるが、人間を育むという教育活動は、やはり特別の分野である。自由でありつつ公平を維持するという難しい対策を講じなければならない。教師の創意工夫をこらした実践の充実が期待される。

    共に学ぶ意義
    カリフォルニア州ミルズ大学教授  キャサリン・ルイス

    連載

    小学校算数の基礎・基本の指導と評価(17)   計算について考える(6)-習熟のための計算練習 元筑波大学附属小学校教諭
    正木 孝昌
    読書教育(1)   読書教育再考 聖徳大学教授
    福沢 周亮
    豊かな人間を育てる授業シリーズ(1)   豊かな人間を育てる授業とは 教育臨床研究機構理事長
    中野 良顯
    ドリルについて考える(7)無理・無駄のない効果的なドリルを求めて(3)   ドリルを考える力の土台にする算数 どんぐり倶楽部 代表
    糸山 泰造
    最新のテスト事情(4)「作文評価」 東京都墨田区立東吾嬬小学校教諭
    梶井 芳明
    だんわしつ 藤川 大祐
    ひとりごと 元公立中学校教諭
    吉冨 久人