月刊誌 指導と評価

2005年 11月号
  1. 2005年 11月号 Vol.51-11 No.611  定価:450円
特集
目標準拠評価の現状と課題
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特集

目標準拠評価の現状と課題

文教大学学園長・応用教育研究所所長  石田 恒好

★目標準拠評価については、高校入試で「評定」が主観的で安心して使えないといわれているのが現状である。

★教育評価の手順は何についても共通なので、手順の一つ一つを正確に行い、精度を高めることが必要である。

★手順の一は「評価目標の設定」である。評価目標は、指導目標から抽出して設定する。指導目標を一〇〇%、だれでも測定できる形に具体化・明確化にする。

★手順二「評価資料の収集」・・・途中の見取りは三段階で、成績については二段階で採点し、収集する。

★手順三「評価資料の解釈、評定」・・・段階の分割点を学校、教科、教師で共有する。

「思考力・表現力」の評価

富山大学教授  佐伯 眞人

★社会化において「思考力・表現力」の評価をしようとするには、授業の中でそうした評価が見られる場面を設定することが必要である。つまり、授業の改善を図ることが必須のこととなる。授業改善は授業形態を工夫するだけではなく、一斉学習の中でもできる工夫もあるし、ペーパーテストの問題を工夫することも大切なことである。大切なことは、何のために評価するかということであり、それは生徒に返るものでなければならないし、授業改善につながるものでなければならない。そして、それは生徒にどのような力をつけることをねらいとするかという根本にかかわることである。

「関心・意欲・態度」ノ目標準拠評価に向けて

富山大学教授  佐伯 眞人

★「関心・意欲・態度」は、生徒の行動や言動に表れるものと仮定し、評価するしか実際的な方法はない。そこでまず、観察可能な行動目標的な記述による評価基準を策定し、さらにそれを三段階の評価基準におろす。

★単元ごとの評価場面と評価方法を、年間であらかじめ用意しておく。具体的には、観察法による観察実験の場面や話し合いの場面での評価、レポートの評価やワークシートの感想欄の評価などである。

★定期考査による評価も、作問を工夫して実践したい。

「科学的な探求」と目標準拠評価

大阪府立今宮工科高等学校教頭  樋口 真須人

★児童生徒の科学的探究能力を系統的に育成するためには、探究活動を指導する教員が、探求に必要なスキルの内容とその発達に対して共通の認識をもち、発達段階に対応した評価と指導を行うことが必要である。

探求力には、さまざまなスキルが含まれているため、ルーブリックを利用した評価と指導を行うことが適しているが、基準に従って評価することは容易ではない。そのため、分かりやすく共有しやすいルーブリックの開発、教員研修の実施、目標準拠による指導を支援するシステムの充実が望まれる。

目標準拠評価を支える評価理論と測定理論

国立教育政策研究所総括研究官  山森 光陽

★基礎的・基本的な内容の確実な習得を図ることを重視する教育においては、集団準拠評価は不適切であり、目標準拠評価が行われる必要がある。

★自ら学ぶ意欲や思考力、判断力、表現力などの資質や能力までを含めた、学習の到達度を適切に評価しようとする考え方は、真正の評価(authentic assessment)という考え方と軸を一にしている。

★最近注目されている測定理論である項目応答理論を使うことが、適切な目標準拠評価の実現には直接つながらない。

★テスト以外の方法による評価が適切に行われているかどうかを検討するには、一般化可能性理論を用いることができる。

★目標準拠評価を適切に行うには、その背景となっている評価理論の裏づけを得ながら、測定理論に対する正しい理解とその適切な利用が必要である。

イギリスのナショナル・カリキュラムノ全国テスト

元ケンブリッジ大学試験委員会総括試験官  アラン・ハドソン

★イギリスの全国テストは、七、十一、十四、十六歳で実施される。十六歳はGCSE試験を用いる。

★七歳でのテストは、外部作成テストを教師が採点するが、そのほかは外部の採点者による。採点者の採点の一貫性を維持するシステムを導入している。

★試験の結果は、テストの点数をもとにしてレベルで表示する。レベルの区分基準の決定は、複雑な手続きを経て行われる。

オーストラリアの目標準拠評価の枠組み

教育評価総合研究所代表理事  鈴木秀幸

★オーストラリアの目標準拠評価は、スタンダード準拠評価によって行われている。

★発達段階評価を取り入れており、目標とする達成水準を設定し、これが事実上カリキュラムを決定している。

★学校内評価を重視する傾向にあり、スタンダード準拠評価にモデレーションを加えて実施している。

連載

作文指導(6)作文教育の今後の課題 筑波大学教授
桑原 隆
授業をつくる(4)中学校数学科   表現を大切にする授業をつくる 筑波大学附属中学校教諭
水谷 尚人
学習指導に役立つ外国文献紹介(6)   自己制御と学習 (財)応用教育研究所所長
辰野 千壽
新しい教育評価の動向/主要論文の概説(12)J・イルソンほか   習熟度別編成の効果に関する研究 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
諸外国の初等中等教育改革の動向(7)フィンランド   統合制学校、教育課程基準及び優秀な教員による格差の解消 文部科学省生涯学習政策局調査企画課専門官
岸本 睦久
私の教育評価実践(5)   基礎的・基本的学力の定着をめざす学年経営と評価 福岡県糟屋郡宇美町立原田小学校長
井上 和信
標準検査を活用した教育実践(3)   「CRTノ循環型活用をめざして」 福岡県春日市立白水小学校教諭
野田 敏孝
どうする?小学校英語(17)   コミュニケーション活動を通して子どもの主体性を育もう! 国立教育政策研究所名誉所員
渡邉 寛治
だんわしつ 全校国公立幼稚園長会事務局長・前東京都公立中学校長
楚阪 博
ひとりごと 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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