月刊誌 指導と評価

2005年 9月号
  1. 2005年 9月号 Vol.51-09 No.609  定価:450円
特集
学力問題を考える(2)国内学力調査を中心に
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特集

教育課程実施状況調査の結果

文部科学省初等中等教育局教育課程課専門官  山下 恭範

★国立教育政策研究所教育課程研究センターでは、教育課程の基準や学習指導の改善等に役立てるために教育課程実施状況調査を行っており、現行の学習指導要領のもとで行う初めての小・中学校に関する調査結果を本年四月に公表した。

★分析の結果、全体としては学力の低下傾向に若干の歯止めがかかったのではないか、このことは、各学校における教員による基礎的事項等の徹底などの努力が結果として表れたのではないかと考えられる。しかしながら、国語の記述式や中学校数学、さらには学習意欲や学習習慣が必ずしも十分でないことなど昨年末に公表された国際学力調査と類似の課題が見受けられ、これを真摯に受け止める必要がある。

★文部科学省としては、引き続き各学校等におけるさらなる取り組みを促していくとともに、学習指導要領全体の見直しや全国的な学力調査の検討を進めていく必要があると考えている。

教育課程実施状況調査の結果   小学校算数課・指導上の改善を考える

青山学院大学教授  坪田 耕三

★平成十五年度教育課程実施状況調査の小学校算数においては、「その結果の全般的状況を見ると、設定通過率との比較において全体としてはおおむね良好となっており、また前回と同一問題での通過率との比較においても今回の結果からは向上の傾向が見られる」との発表であった。

★ここでは、わずかな情報ではあるが、具体的な問題に関連しながら、今後の指導上の改善点に焦点を当てて考察する。

教育課程実施状況調査の結果   「中学校国語」の授業改善ノ方策

文部科学省教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官  河野 庸介

★平成十三年度および十五年度の教育課程実施状況調査を踏まえつつ、国語科における言語能力の向上について、主として「読む能力」という観点から、その具体的な方策について述べた。

★緊急に克服すべき課題として、次の諸能力の育成を指摘した。

-文章を読んで、根拠を明確にしながら自分の解釈や考えを述べる能力。

-文章中の記述について、話の展開を踏まえて解釈する能力。

-課題に対する自分の考えを文章で記述する能力。

★最近のいわゆる“学力低下”をめぐる議論に関連し、その対応策は、国語科だけではなく、広く今後のわが国の学校教育をどのような教育理念のもとに再構築していくのかという大きな枠組みの中で考えられなければならないことを指摘した。理念のないところに目標や計画は生まれないからである。

学力調査の今後のあり方と活かし方

大阪教育大学名誉教授  北尾 倫彦

★学力検査問題として状況的思考、実行、関心度等をみる新型のテストが工夫されている。この改善をおし進め、質のよい学力をとらえるようにしたい。

★通過率だけでなく、得点の度数分布も示し、個人差に関する情報を提供すべきである。

★他の資料との照合・比較によって、結果の解釈が妥当なものになるように配慮することが大切である。

★記述式検査については、複数の観点にわたる採点や採点基準の設定が望まれる。

★実践の場における活用を進めるために、学級単位の集計やクロス集計の資料が必要である。

★標準化された学力検査や適応性検査の利用によって、調査の信頼性を高めるべきである。

PISAの質問紙調査

国立教育研究所科学教育研究センター統括研究官  小倉 康

★PISAにおける質問紙調査の目標は、学力調査で測定される到達度を、生徒や学校の背景要因、学校間と学校内の学力格差、国の教育制度やその背景的状況と関連づけることによって、国間での違いを説明することである。到達度との関連性を説明する背景要因として、質問紙調査からさまざまな指標が構成され分析に用いられた。

★分析結果からいうと、例えば、わが国では生徒の数学的リテラシーの学校間格差が大きく、生徒全体の学力格差の程度も大きい。また、学力格差に占める生徒の家庭の教育環境の影響の度合いは国際的に低い基準であるが、高校一年の段階では、家庭の教育環境の格差が学力の学校間格差に強く結びついて表れていることが分かる。

標準学力検査などを活用した一人一人の良さを活かす学習指導のあり方

栃木県足利市教育研究所次長  村田 正幸

★基礎・基本の確実な定着と自ら考える力の育成を図るためには、児童生徒一人一人の実態把握が不可欠であり、その子のもち味であるよさや可能性、学習状況などを多面的かつ継続的にとらえたうえで、個に応じた手だてを工夫することが大切である。

★知能検査と標準学力検査、学習適応性検査を組み合わせて実態把握を行うことで、児童生徒一人一人の学習のつまずきや学力不振の要因や背景を多面的にとらえ、個に応じた指導の充実を図ることができる。

★学習適性や学習ペースなどの学習特性をとらえ、個別の指導や支援にあたることで、子供一人一人のよさを伸ばし、学習意欲を高めることが可能になる。

米国の科学学業達成評価(NAEP)ノ最近の結果と国際比較(TIMSS、PISA)

長洲南海男・畑中 俊伸

★米国のNAEPの科学の学業達成に関する一九九六年と二〇〇〇年の評価の基本的枠組みと評価の結果、およびこの時期に行われたTIMSSとPISAとの比較について明らかになった主なものは以下である。

★科学リテラシーの要素を二次元の評価の枠組みにし、これに発達論に基づいて多様な評価問題を作製した。4、8、12学年を対象とした。両年の違いはほとんど差異がみられず、北東部の各州が上位、男子の方が女子よりわずかに、また白人の方が上位で、ツールとしてのコンピュータ利用の生徒の方がそうでない生徒よりも上位であった。

★TIMSS、PISAとNAEPでは性格が異なるが、前の二種類で米国より上位は日本を含めて四か国であった。

イギリスの全国学力調査   -問題や課題の例と特徴

教育評価総合研究所代表理事  鈴木秀幸

★イギリスでは新しいテストやパフォーマンス評価の開発のために、APUといわれる学力テストの開発研究に多くの人材、資金が用いられた。

★現在のイギリスでは、ナショナル・カリキュラムのテストが学力調査の主要な方法である。

★イギリスの学力調査の問題や、採点(評価)基準、採点のための技術開発には、わが国も学ぶべきものがある。

連載

作文指導(4)   ワークショップ型作文授業ノ発想法 東北福祉大学準教授・授業づくりネットワーク代表
上条 晴夫
授業をつくる(2)   小学校国語「かかわりの中で表現数する子どもを育てる」 筑波大学附属小学校教諭
青木 伸生
学習指導に役立つ外国文献紹介(4)   メタ認知と学習(1) (財)応用教育研究所所長
辰野 千壽
諸外国の初等中等教育改革ノ動向(5)   イギリス-「ブレア政権が進める初等中等教育改革」 文部科学省生涯学習政策局調査企画課外国調査官
篠原 康正
私の教育評価実践(3)   子どもと保護者ガ業火に参加する観点別長期ポートフォリオ 鳴門教育大学附属小学校教頭
宮本 浩子
どうする?小学校英語(16)   小中連携の英語教育における課題 国立教育政策研究所名誉所員
渡邉 寛治
だんわしつ 東北福祉大学特任教授
有田 和正
ひとりごと 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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