月刊誌 指導と評価

2006年 4月号
  1. 2006年 4月号 Vol.52-04 No.616  定価:450円
特集
教育指導力を高める(1)
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特集

評価力を高めよう

文教大学学園長・応用教育研究所所長  石田 恒好

★評価力を高めるには、教育評価の解説書を読み、研修会で学ぶことであるが、根本的な解決は、教員養成課程で「教育評価」を必修科目にすることである。

★教育評価の用語の正しい理解から始めてほしい。教育評価の基礎、基本を理解していないと正確な実施はできない。

★教育評価は、評価目標の設定、評価資料の収集、評価資料の解釈と活用という手順で行われ、それぞれの段階で必要な能力がある。例えば、目標の具体化・明確化能力、作問能力などである。それぞれに磨きをかけてほしい。

★目標の具体化は、すべての教師が測定できる水準まで行い、共有したい。各市町村の教科部会、できたら国で行うべきである。

国語の力の構造化と系統化を図る

鳴門教育大学附属小学校教頭  宮本 浩子

★言語活動は、思考活動と相即している。したがって、国語の目標を明確にするためには、言語活動の技能を、分節・分化させてとらえるのではなく、構造的にとらえなければならない。

★国語学力の構造は、「国語科のめざすもの」「生涯学習力として身につけさせたい発展的・総合的国語の力(生きて働く力)」「基礎となる力」「要素的な力」という四層でとらえられる。

★「生涯学習力として身につけさせたい発展的・総合的国語の力(生きて働く力)」がどのように発達していくかを問うことにより、学びの質的な深まりをとらえることができる。また、学力の発達については、学期・学年を越えて系統的にとらえることが有意義である。

算数の基本の考えを見きわめる

青山学院大学教授  坪田 耕三

★算数科において、最も大切なのは「数学的な考え方」である。そのもとになる具体的な考えは何か。それを明確にして、日々の授業を充実させ、その結果としての評価を具体化すべきである。

★ここでは、筑波大学附属小学校の算数部が考えた十個の「基本の考え」を提示し、そのいくつかについて内容を解説し、具体的な評価についても考えたい。

目標の具体化と評価問題-ペーパーテストを中心に「中学校国語」   -「書く能力」「読む能力」について

京都市立衣笠中学校長  北原 琢也

★まず最初に、目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)は、学習指導要領の各教科などの「目標」や、それに関連づけられた「内容」が基本的な要素であり根拠となる。

★評価基準の設定には、学習指導要領(国)レベルから教科書(地域)レベル、そして学校(授業)レベルへのスモールステップの段階がある。すなわち、国立教育政策研究所教育課程研究センターの参考資料レベルから、指導内容に適した教材で構成されている「教科書レベルの評価規準」を作成することである。

★そして、各学校が教科書レベルで作成された評価基準に「適切な評価方法」を設定し、生徒の学習活動における実際の姿をもって「実用的な評価規準」を作成することが重要である。

目標の具体化と評価問題-ペーパーテストを中心に「社会科」

大阪教育大学教授  峯 明秀

★社会科歴史における思考力評価のための問題は、歴史的理解と歴史的思考の統合からなる「歴史のための全米規準」が参考になる。

★年代学的思考や歴史的理解をもとに歴史の研究方法を用いて、歴史的事象を分析し解釈する問題、それらを包括する歴史的論争間の分析と意志決定の問題が考えられる。

★歴史的な分析と解釈に焦点をあてた問いと、資料の活用及び学習者による説明を要求する評価問題作成方略を提出する。従来、知識の記憶、再生に陥っていた問題の改善が図れる。

★推論の程度、資料が適切に用いられているかどうかについて、評価基準の具体的なレベルを示すことが必要である。

中学校数学科における数学的な見方や考え方の評価

文部科学省教科調査官  永田 潤一郎

★観点別学習状況の評価の一つの観点である数学的な見方や考え方をペーパーテストで評価する場合、子どもの思考のプロセスに注目して、記述式の問題を用いることが多い。しかし、その結果、無解答が多くなり、子どもの学習の実現状況を把握することが困難になる傾向がある。図形の証明は、その典型的な例である。

★「図形の証明ができる」とはどういうことなのか。ここでは、その目標を4つのステップで具体化して問題を試作してみた。評価の結果を指導に活かすことを考えて、さらに検討を進めていく必要がある。また評価の前提となる指導のあり方や、テストの実施の仕方などにも注意しなければならない。

目標の具体化と評価問題-ペーパーテストを中心に「小学校理科」

文部科学省教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官  日置 光久

★評価の第二観点「科学的な思考」と第三観点「観察・実験の技能・表現」は、子どもの思考や行動を評価するものなので、ペーパーテストで測るのはなかなか難しいのが実態である。この二観点については、ポイントを絞って調査することが重要である。また、子どもを状況に入れるということも考慮しなければならない。

★ここでは、平成15年度教育課程実施状況調査問題を例に考察する。さらに、本調査結果の概要から、小学校理科の課題を明らかにする。

目標の具体化と評価問題-ペーパーテストを中心に「中学校英語」

新潟大学教授  松沢 伸二

★中学校英語の7目標の内、具体化が難しいのは受容技能の聞くこと、読むことの目標である。とりわけ読むことの目標はあいまいになりがちで、このことが本来の読みの授業とペーパーテストづくりを妨げている。

★学習指導要領などの公の文書は、読むことの目標の具体を示していない。

★読む技能の目標の具体化とは、「どんな文章をどのように読む技能を養うか」を規定することである。

★「どんな文章を」では言語的特長や話題など、「どのように読む技能を」ではタスクや会技能を規定すれば目標を具体化できる。

★各教師には、このような具体化をほかの技能の目標についても行って、自校の指導力と評価力を高めることが求められている。

連載

諸外国の初等中等教育改革の動向(12)   OECDが考える「鍵となる能力(キーコンピテンシー)」とは 国立教育研究所国際研究・協力部長
渡辺 良
授業をつくる(9)小学校音楽科   友達とかかわり、情操を養う授業づくり 筑波大学附属小学校教諭
高倉 弘光
教育評価の基礎・基本(1)   教育評価とは何か 文教大学学園長・応用教育研究所所長
石田 恒好
新しい評価の枠組み(5)   検討課題-高次の技能の観点と評価 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
私の教育実践(9)   思考・判断・技能・表現はもちろん関心・意欲・態度までも評価する中学校社会科のペーパーテスト 富山市立北部中学校教諭
高瀬 一寿
だんわしつ 大阪教育大学名誉教授
北尾 倫彦
ひとりごと 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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