月刊誌 指導と評価

2006年 7月号
  1. 2006年 7月号 Vol.52-07 No.619  定価:450円
特集
「生きる力」のカリキュラム
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特集

現行教育課程の課題と今後の改善の方向

白梅学園大学教授  無藤 隆

★基礎学力の低下といわれる中核は、低学力層の増加と低下であり、意欲の喚起や、補習、家庭学習の指導が求められる。学力全般では、PISA調査の「読解力」が弱い。これは文章や図表を解釈し、文章でそれを整理して書き表したり、問題解決過程を述べたりする力であり、国語だけでなく、さまざまな教科でその育成が必要となる。

★生きる力、問題解決力、思考力といった大きな目標は、もっと具体化して示し、その習得をめざす必要がある。

★国語と算数は他教科の基礎となる教科であり、初等教育ではとくに重要である。基礎・基本の習得と、実践的または応用する場を増やす。

★どの教科も、「鍵概念」を中心に内容を精選する。

生きる力を育てる教育課程の方向

明星大学教授  吉冨 芳正

★子どもたちの学習の状況や知識基盤社会への展望などから、確かな学力などの「生きる力」を育成することはいっそう重要となっており、その実現のための手だてを講じることが必要である。中央教育審議会教育課程部会では、このような考えに立って、言葉と体験を重視するなどの学習や生活の基盤づくりを重視するとともに、「人間力」といった社会の側からの視点を取り入れながら、教育課程の構造を明確化する方向で審議が進められている。

★このような学習指導要領の見直しの時期にあって、各学校では、教育課程部会の審議の動向も参考にしながら、「生きる力」をたしかにはぐくむ観点から、重点をおいて育成をめざす資質や能力と、そのための具体的な手だてを明確にして、カリキュラムの改善に取り組むことが重要である。

各学校におけるカリキュラム評価と開発

筑波大学教授  田中 統治

★カリキュラムはおおよそ4つの層からなる複雑さをもっており、このためカリキュラム評価は調査法による、根気のいる地道な仕事となる。

★各学校がカリキュラムを開発するうえでは、マネジメントの発想をもって、「評価による改善」を進めていくことが必要である。カリキュラムの「効果測定」を試みるのでなく、改善策の効果を確かめる。これがカリキュラムの改善を図る王道であり、そのために学力テストの結果や教師の声をデータとして活用したい。

★学校改革は授業を含むカリキュラムの改善から着手すべきであり、カリキュラム・マネジメントが鍵を握っている。外部評価ではカリキュラムの改善に向けた経営の努力を訴えたい。各学校が根拠となるデータをどれだけそろえられるか、それは説明責任というよりも、評価による説明と対話の課題である。

生きる力を育てるわが校のカリキュラム

千葉県館山市立北条小学校教諭  石川 康治

★カリキュラムには、どんな教育をめざすのかが映し出されていなくてはならない。北条小学校のカリキュラム「北条プラン」は、教育理念を描き、各教科の方針(教科構想)、単元構想と一貫した考え方のもとに編成している。

★カリキュラムは固定的なものではなく、改善の営みが必要である。そのために北条小学校では「カリキュラム管理室」を中心に、「プラン実践検証サイクル」というシステムを構築した。日常的に実践と評価を行うことで、カリキュラムを改善していくことが重要である。

★カリキュラムの作成と評価は、教員としての資質向上を図る機能をあわせもっている。

生きる力を育てるわが校のカリキュラム

前京都市立陶化中学校長・京都市教育委員会生涯学習部主席社会教育主事  古田 義久

★少子・高齢化社会が著しく進行する本校地域社会の中で、将来のまちの主体的な担い手となるべき子どもたちを、地域の中で地域とともに育成していくために、内閣府が進める構造改革特区事業(教育特区事業としての研究開発学校設置事業)を活用した小中9か年一貫教育システムを模索している。二期生のもとで校区3小学校との共同研究・共同実践を通して、いわゆる中一問題の解消も含めた新たな教育カリキュラムづくりに取り組んできた。教育特区認定2か年の教育実践を振り返り、今後の課題と展望について考察する。

品川区における小中一貫教育

東京都品川区教育委員会指導課

★小学校と中学校には、まったく異なった学校風土や慣習といったものが存在しており、子どもたちはその“文化の違い”ともいうべきギャップにとまどい、それが成長の過程で大きな障壁となっている。

★こうした課題を克服するため、品川区では義務教育9年間を通した系統性・継続性のある一体的な教育活動で、確かな学力と個性・能力を伸ばす小中一貫教育を実施することにした。

★すべての公立小中学校で実施するため、教育課程編成基準と、各教科等の学習指導指針を示した「品川区小中一貫教育要領」を策定した。こうした「地域基準」を明確に示し、実施しているのは全国初の試みである。

★各教科のカリキュラムは、一貫教育として育てたい資質・能力を明確に打ち出し、それぞれに特徴をもたせている。とりわけ「市民科」や「ステップアップ学習」、1年生からの「英語科」などは、品川独自の学習として全国から注目されている。

生きる力を育てるわが校のカリキュラム

筑波大学駒場中・高等学校副校長  小林 汎

★「教養主義」的なカリキュラムが生徒を育てる。

★「教えたいことを教え」、「学びたいことを学ぶ」の両輪が生徒を育てる。

★「ヒドゥンカリキュラム」の充実が生徒を育てる。

★「自由闊達」で民主的な校風が、生徒を育てる。

★生徒も教員も中高“完全”一貫性が、生徒を大きく育てる。

諸外国のカリキュラム改革   アメリカ合衆国

国立教育政策研究所統括研究官  松尾 知明

★アメリカでは、すべての子どもに高い学力を保障するという、卓越と平等の両方を目標とした教育改革が進行中である。地方分権が強いが、近年では国際競争力を高めるため、国のリーダーシップも問われている。国では各教科のスタンダードを完成させ、州ではこれを参考に州のスタンダードを作成している。
 さらに最近では、大学や職業で必要とされる能力を明らかにして、それに対応した高校改革や幼稚園から大学までの教育システムを構築しようとする動きがある。

諸外国のカリキュラム改革   北欧

早稲田大学名誉教授  中嶋 博

★一つの社会圏の様相を呈している北欧の各国で、近時あいついで学校教育法、学習指導要領の改正、改訂がなされている。ねらいは、明日の社会に「生きる力」を得させる「確かな学力」の育成であり、そのためのカリキュラム改革である。そしてこれは、クロス・カリキュラム・コンピタンスの重視でもあるが、従来の各教科の基礎・基本の習得を無視したり、おろそかにするものではない。OECD/PISAの意図するところと一致するものであり、次回以降の調査結果にもそれは反映されよう。

諸外国のカリキュラム改革   イギリス

文部科学省生涯学習政策局調査企画課外国調査官  篠原 康正

★イギリスでは、1988年に全国共通カリキュラムを定め、各学校はそれに基づいてカリキュラムを編成する。全国共通カリキュラムでは、指導内容を示す「学習プログラム」と、その習熟度を示す「到達目標」を定め、さらに複数学年からなる4つのキーステージごとに期待される標準到達レベルを定めている。また数学、英語、理科を中核教科としている。
 近年の動向は、就学前教育と初等教育との接続を重視、中核教科以外の充実、中等の必修教科を段階的に削減、などである。

諸外国のカリキュラム改革   ドイツ

玉川大学助教授  坂野 慎二

★ドイツでは、従来「生活の場としての学校」が重要視され、学校も午後1時半ころで終わることが多かった。しかし、2001年に公表されたPISA調査の結果が予想外の不振だったことから、教育改革が進められている。地方分権が強いなかで、PISA調査の結果がよかった州を参考に、各教科での到達目標を設定した。しかし、単なる知識・技能だけでなく、実際の生活における問題解決能力を重視している。また、早期教育、教員の質的向上、「終日学校」などに取り組んでいる。

諸外国のカリキュラム改革   韓国

文部科学省生涯学習政策局調査企画課専門職  金子 満

★韓国では、従来からの教育課程の基準を国で定めている。2000年から施行された新教育課程では、国際化と知識情報化時代に対応するため、これまでの画一的な詰め込み式教育から、自ら主体的に学ぶ能力を育てることを目標としている。習熟度別課程や、高校2・3年での選択中心の教育課程など、個に応じた教育への転換を図っている。また、週五日制への移行中であるが、授業時数をなるべく削減せずに、各学校の裁量を拡大する方向である。

連載

坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり   「わかる」と「できる」-基礎・基本の考え方(1) 青山学院大学教授
坪田 耕三
教育評価の基礎・基本(4)   教育評価の手順(2)評価資料の収集 文教大学学園長・応用教育研究所長
石田 恒好
新しい評価の枠組み(8)   全国学力調査について 静岡県立袋井高等学校教諭
鈴木 秀幸
ペーパーテストで思考力・表現力を測る(2)中学校理科(第2分野)   ペーパーテストで「科学的な思考力」を評価する 筑波大学附属中学校教諭
新井 直志
新しい教育評価の動向/主要論文の解説(15)Wハーレン   教師による総括的評価の実施と学習のための評価-緊張関係と協同 静岡県立袋井高等学校教諭
鈴木 秀幸
どうする?小学校英語(20)   到達目標に準拠したカリキュラムを開発しよう! 国立教育政策研究所名誉所員
渡邉 寛治
だんわしつ 東京都大田区立矢口西小学校教諭
山 隆夫
ひとりごと 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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