トップ > 指導と評価 > 2006年 9月号

月刊誌 指導と評価

2006年 9月号
  1. 2006年 9月号  Vol.52-09 No.621  定価:450円
特集
  • 習熟度別学習、少人数指導はこれでよいか
  • 【在庫なし】
  • 特集

    習熟度別学習・少人数指導はこれでよいのか   「一人一人の子ども」の学びの成立にこだわる
    上智大学名誉教授  加藤 幸次

    ★今日の習熟度別学習、少人数指導は次の3点より根本的に見直す必要がある。

    ★「加配」なのだから、ばらまき型配置ではなく、指導体制、指導計画がしっかりしている学校に重点的に配置する傾斜加配策を利用すべきである。

    ★伝統的な一斉授業という指導法は限界があると自覚し、新しい「個に応じた指導形態」を追求しなければならない。率直に言って、教師は習熟と別学習、少人数指導に対する必要官を持ち合わせていない。すなわち、子ども一人一人の「学びの成立」に目が向いていない。従来通り一斉授業を行って、指導についてこられない子どもを深く思いやる気持ちが欠けている。

    ★「一人一人の学びの成立」に、すなわち「きめ細かな指導」に最大の努力を傾けねばならない。一人一人をとらえ、どのように対応していくべきか、考えねばならない。教えっぱなしになっていないか、反省すべきである。

    習熟度別学習・少人数指導で学力を向上させる
    横浜国立大学教授  石田 淳一

    ★当該学年の学習を進めるために、それに関する既習事項の確実な定着が必要である。しかし、児童の達成状況は一律でなく、補充的指導を必要とする児童もいる。また、学習に要する時間量の違いの個人差もある。そのために習熟度別指導が必要である。

    ★習熟度別指導の方法には、学級を解体して習熟の程度に応じたコース別指導と、学級を解体せずにクラスの中で習熟の程度に応ずるクラス内習熟度別指導がある。

    ★習熟度別指導を効果的なものにするには、本時の学習目標を達成させるのにふさわしい学習問題を用意した上で、児童の既習事項の定着の程度を把握して、習熟度別に対応するように一時間の授業展開を考えることが大切である。

    習熟度別学習への疑問
    東京学芸大学名誉教授  杉山 吉茂

    ★学力の低下を止め、学力の向上を図るため、さらに個に応じた指導をするため、習熟度別学習が行われている。しかし習熟度別学習では、進んでいるグループは進んだ学習ができるが、遅れがちなグループの学習はさらに遅れがちになる。子どもは教師から学だけでなく、こどもからも環境からも学ものであるが、習熟度別グループを作ると、遅れがちなグループは進んだ子どもから学ぶことが無くなるからである。

    ★また、学習指導要領の不備から、学習の必要宇な子どもが学ばずに、必要のない子どもに学習の場をつくるという無駄なことも起こっている。学ぶ情報源をせまくしないためにも、少人数習熟度別学習はするべきではない。

    習熟度別学習・少人数指導の実践
    京都府綾部市立中筋小学校教諭  小嶋 康弘

    ★「中筋スタイル」という本校独自の学習スタイルをもとに、児童の「生きる力を育む確かな学力の育成」を図った。

    ★習熟度別学習では、ただ習熟度別のグループに分ければいいというものではない。成功させる条件として、以下の三点が上げられる。
    1.何のためにその集団を作るのか?
    2.どの場面で、どんな指導がなされるべきか?
    3.指導が一人一人の児童の学習に焦点を当てた「個に応じた」指導となっているか?

    ★習熟度別学習において、認知面での変容を客観的にどのようにとらえるかについては、課題である。

    習熟度別学習・少人数指導の実践
    宮城県仙台市立黒松小学校教諭  五十嵐 昌広

    ★平成13年4月に実施した算数の標準学力検査CRTの結果は、4学年以上で全国平均を下回り、得点の分布では低得点層が多く学力差が大きいなど、きわめて深刻な状況であった。

    ★そこで、習熟度別指導を中心とした全校指導体制を構築し、一人一人の学びを保証しながら「わかる喜びとできる楽しさ」を味わわせる実践を開始した。2年後の学力検査では、基礎学力の向上を示す結果が得られ、学習意欲の面でも高まりが見られた。

    ★ここでは、本校が取り組んだ全校指導体制のシステムと、児童の変容を中心に報告する。

    「確かな学力」をめざして
    静岡県富士宮市立富士宮第四中学校教諭  望月 裕子

    ★習熟度別少人数指導を数学・英語で取り入れ、よりきめ細かな個に応じた適切な指導が可能になった。コースに分かれたことで基礎コースの生徒も活躍でき、自己存在感を味わうことができ授業に満足している。

    ★数学・英語とも、「授業が楽しく好きになった」「授業の課題がつかめるようになった」と答える生徒が増えた。

    ★標準学力検査NRTの追跡調査においても、学年があがるにつれ全体的な学力が伸びていると判断できる。



    ★「指導と評価の一体化」「教材開発」「授業形態の工夫」を柱とする授業改善によって、「確かな学力」を向上させることができる。

    中学校英語の習熟度別少人数指導について
    埼玉県嵐山町立菅谷中学校教諭  松本 光正

    ★「レディネステスト+アンケート+面談」によるクラス編成とした。最終的には自己評価で正しくクラス選択できる力の育成を目標とした。テストの結果によるクラス割り振りだけでは、点数での輪切りになる懸念があった。

    ★評価には苦労した。基礎クラスと発展クラスとで「同じものさし」で評価する必要がある以上、何をどこまで同じにするかが課題であった。そのためテスト問題も工夫した。

    ★成果であるが、生徒にはある意味で歓迎されたものの、即学力向上につながったかは疑問であった。教師のたゆまぬ指導技術の工夫・向上・改善、教師の熱意、周囲の協力がなければ存続しえない。

    習熟度別学習・少人数指導のためのコース別指導案と教材
    東京都世田谷区立八万小学校教諭  滝井 章

    ★習熟度別少人数指導への取り組みというと、グループ分けの仕方、グループ毎の指導案に目がいくことが多い。しかし、その前に明確にすべき前提がある。また、習熟度別少人数指導への取り組みが有効に働くために必要な条件もある。これらに目がいかないと、算数教育は知識・理解面、技能面へ偏って進むというマイナスを生む。結果として、習熟度別少人数指導への取り組みが形骸化して、学級担任を任せられない教員を習熟度別少人数指導担当に配置するという愚かな事態がうまれたりしかねない。

    ★そこで、習熟度別少人数指導実施の条件、前提を6年生「分数のかけ算」での実践を例に解説する。

    学び合い、高め合う少人数学級
    愛知県犬山市教育委員会指導課長  滝 誠

    ★できる子もできない子も一緒になって、なかよく素直に教え合い学び合う場、それが学校である。学校がただ知識を中心とした学力の定着を図るためだけの場と化したなら、公立学校としての存在意義はない。

    ★子どもの人間としての成長は、学習と生活が一体となってこそ達成できるものであり、生活と学習の一体化を確保しながら、少人数の有効性を生かしていこうとするのが犬山の少人数学級である。

    ★習熟度別によらない犬山の少人数学級は、子ども同士、さらに教師と子どものふれあいを深め、良好な人間関係を育み、人間形成を図る上で、より効果が発揮できる学習環境なのである。

    連載

    授業をつくる(12)中学校音楽科   本校音楽科の指導計画 筑波大学附属中学校教諭
    若林 浩
    坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり   「わかる」と「できる」-基礎・基本の考え方(3) 青山学院大学教授
    坪田 耕三
    教育評価の基礎・基本(6)   指導と評価の一体化 文教大学学園長・応用教育研究所長
    石田 恒好
    ペーパーテストで思考力・表現力を測る(4)   中学校英語(2)聞く能力・読む能力 新潟大学教授
    松沢 伸二
    私の教育評価実践(10)   ルーブリックで子どもの学びが見える 兵庫県三日月町立三日月小学校教諭
    桑田 隆男
    どうする?小学校英語(21)   英語活動の指導案作成と実施上の留意点 国立教育政策研究所名誉所員
    渡邉 寛治
    だんわしつ 静岡県立袋井高等学校教諭
    鈴木 秀幸
    ひとりごと 元公立中学校教諭
    吉冨 久人