月刊誌 指導と評価

2007年 11月号
  1. 2007年 11月号 Vol.53-11 No.635   定価:450円
特集
志を育てる
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特集

志を育てる教育

日本教育文化研究所所長  森 隆夫

★志とは文字どおり「士(さむらい)」の「心」である。現代の武士は、私利私欲に走らないで、社会のために貢献、奉仕する心の持ち主である。

★そうした志を育てる方法としては、人が社会的存在(責任感ということでもあるが)であることを幼い頃から一貫して教えることである。その基礎は幼児期における初期言語教育にある。つまり、赤ちゃんに教える最初の言葉は何かということである。欧米では第一に「ありがとう」、第二に「どうぞ」、第三に「どういたしまして」であるといわれる。

★志を育てる第二の方法は、忍耐心の養成である。それは、強い意志に支えられて持続的に精進努力するには忍耐心が不可欠だからである。

★最後は奉仕の精神、ボランティアの日常化である。

学校で志を育てる教育を

跡見学園女子大学教授  片野 智治

★人は仕事を通じて学ぶ。学校教育において志を育てるというキャリア教育の根底に、子どもが勉強することは大人が仕事することと同じだという考えがあることが望ましい。また、自己肯定感に支えられたキャリア概念を育てたい。

★キャリア教育を通して学び育てたい性格特性として、情緒安定性、親和性、誠実性、開放性をあげたい。

★実社会で必要な我慢強さと柔軟性を身につけるためには、ふれあい集団を形成することが必須である。

こころざしをはぐくむ   先人に学ぶ養育・教育のあり方

東京都台東区きょういく館副館長  内藤 幹夫

★こころざし教育は、本年一月、台東区教育委員会の委嘱を受けて、「こころざし教育研究委員会」を立ち上げ、進めているものである。

★本稿では、子どもの養育や教育のあり方について、先人の考えたこと、成したことに焦点を当ててみた。それは同時に、養育あるいは教育にあたる親や教師の養育(教育)の心得でもあった。

★今後は、発達段階に即し、どのような内容を、どのような方法で、どのような場を通して行うかを明らかにしていきたい。

志を育てる教育(小学校)   肯定的な自己概念を育てる視点から

京都教育大京都府亀岡市立安詳小学校教頭  亀谷 陽三

★子どもたちが志を育てる基盤には、肯定的な自己概念がある。志を育てる教育で大切なことは、肯定的な自己概念の形成を支援することである。

★子どもの自己概念を形成する要因は、育ちの環境である。とりわけ、子どもにとって大切な人から、子どもに向けられる意識が重要である。

★教師と子どもとの関係、子どもどうしの関係、自分自身との関係、さらに親と子どもとの関係を通して肯定的な自己概念は育つ。そして、肯定的な自己概念を育てる環境が、子どもたちの志を育てていく。

★着実に志を育てていくために、親や教師、あるいは社会が、子どもたちが志を育てていく環境づくりに誠実であってもらいたい。

志を育てる教育(中学校)   道徳の授業には志を育てる力がある

熊本県立教育センター指導主事  桃崎 剛寿

★義務教育最後の三年間である中学校。生徒の心に志を育てることは、生徒が苦しいときにがんばれたり、踏みとどまれたりすることにつながる。

★「志を育てるオリジナル道徳授業例」として、1.平井堅さんと小田和正さんが歌手になるという志を決めた時期を資料とした実践例と、2.辺境医療に尽力された道下俊一さんの札幌での開業医の夢と、赴任した地への思いに悩む心に着眼した実践例、この二つを紹介する。

★「教師の志を育てる」教員研修において、どんな「志」を立てて教師という職に対峙すべきなのかを考えさせる、「教師への道徳模擬授業」を紹介する。

志を育てる教育(高等学校)   「求めて学び、耐えて鍛えよ」のキャリア教育

文教大学准教授  新井 立夫

★これからの社会人・職業人には、コミュニケーション能力や、課題発見・解決能力が求められる。したがって、進学・就職希望の別なく、高等学校では、知識の習得と同時に、努力して成長する喜びを体で覚えること、礼節やマナーの修得、人間関係を築く力の養成などに取り組むべきだ。

★自分自身の生き方を考え、切磋琢磨することで共に生きる喜びを感じることが、キャリア教育としての進路指導のもとである。

志の喪失

(財)日本青少年研究所長  千石 保

★日本の若者の志の喪失は、外国と比べても顕著である。豊かな社会で育ったからであろう。志には勉強に打ち込むことが不可分であろうが、勉強に価値をおかず、一生つきあえる友達を得たい、趣味や楽しいことを思う存分やっておきたい、とする若者が、日本青少年研究所の調査では多かった。

★こうした背景には、終身雇用と年功序列という雇用構造もあると思われる。しかし、こうした雇用慣行は崩れつつあり、若者は偉くなりたくないと考え、家族回帰がが見られる。自分の自由に高い価値をおく、普通の国になりつつあるといえるが、組織の幹部、世話役になれる責任感のある若者が求められる。

連載

坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり   「わかる」と「できる」-基礎・基本の考え方(17)わり算(2) 青山学院大学教授
坪田 耕三
心理学を教育実践に活かす(5)   記憶の心理学 山形大学教授
出口 毅
学力調査を正しく読み取る(2)   学力調査におけるテスト理論の活用-項目反応理論(IRT)- 東京大学副学長
南風原 朝和
教育心理学の外国文献紹介(4)   新任教師と熟練教師の違い (財)応用教育研究所所長
辰野 千壽
標準検査を活用した教育実践(10)   標準学力検査(NRT)結果を活かし、「学力保障」をめざした長野市の取組 前長野市教育センター所長
宮下 袈裟登
豊かな人間性を育てる授業シリーズ(8)   「クリティカル・シンキングができるようになろう!」(中学一年生版) 教育臨床研究機構理事長
中野 良顯
どうする?小学校英語(28)   小学校英語活動におけるコミュニケーション・スキルをめぐって 国立教育政策研究所名誉所員
渡邉 寛治
だんわしつ   教えて考えさせる授業のよさ 埼玉県草加市立八幡小学校長
鏑木 良夫
ひとりごと 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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