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月刊誌 指導と評価

2007年 3月号
  1. 2007年 3月号  Vol.53-03 No.627  定価:450円
特集
  • 全国学力調査のあり方
  • 【在庫なし】
  • 特集

    国が行う学力調査の目的と期待される活用法
    文部科学省初等中等教育局学力調査室長  高口 努

    ★これまで文部科学省において実施してきた教育課程実施状況調査、および特定課題に関する調査は、学習指導要領改善のための基礎的なデータを得ることを目的としている。平成十九年度から実施する全国学力・学習状況調査は、教育の結果の検証を国の責任で行うものであり、国語、算数・数学の教科に関する調査のほか、児童生徒に対する学習意欲、生活習慣等に関する質問紙調査、および学校に対する指導方法に関する取組や人的・物的な教育条件の整備状況等に関する質問紙調査を実施し、学力との相関等を分析・検証する。

    ★全国学力・学習状況調査で把握・分析・検証した結果を課題などの改善に役立てるため、学力調査の結果に基づく検証改善サイクルの確立に向けた実践研究等を実施する予定である。

    全国学力・学習状況調査(予備調査)からみる調査問題の基本的な考え方
    国立教育政策研究所教育課程研究センター学力調査課長  篠田 智志

    ★平成十九年度から実施される全国学力・学習状況調査において、教科の内容に関する調査として国語と算数・数学の調査が実施される。

    ★調査にあたって、「知識」と「活用」に分けて出題することが、今回の特徴である。いずれも、現行の学習指導要領の内容について正しく理解できているかを調査するものである。

    ★調査を実施することにより、一人ひとりの子どもの学力の状況が明らかになるが、日々の授業等を通して学習改善につなげていき、教育におけるPDCAサイクルを確立していくことが重要である。

    結果の分析とその公表のあり方   誤答例の分析と小冊子の提供を
    静岡県立袋井高等学校教諭  鈴木 秀幸

    ★学力調査の結果は、平均点などを示すだけでは学習の向上への効果は限定的である。逆に、テストに向けた学習指導を引き起こし、点数だけが上昇するおそれさえある。

    ★学力の向上に役立つためには、生徒の解答を分析して、どこに誤りが多いか、具体的な解答例などを示すことで、形成的な機能を果たすことが必要である。

    ★結果の報告書は、教師が読みやすいものとして、実際に指導の参考になるものとする工夫が必要である。

    全国学力・学習状況調査とPISA、TIMSS
    静岡大学教授  長崎 栄三

    ★文部科学省による「全国学力・学習状況調査」と、わが国が参加している二つの国際学力調査である、経済開発協力機構による「生徒の学習到達度調査」(PISA)、国際教育到達度評価学会による「国際数学・理科教育動向調査」(TIMSS)の比較を、調査目的、調査方法、調査内容、学力の推定法から行った。

    ★調査方法については、基本的枠組み、調査対象、抽出法から比較した。調査内容については、調査内容の枠組み、調査問題の作成やその様式、調査問題セットの構成から比較した。

    ★三つの調査は、多くの点で異なっていることと、それぞれの存在意義を明らかにした。

    ★最後に、調査の影響とその危険性、調査に基づいた指導の改善の必要性について論じた。

    全国学力調査と自治体が行う学力調査   魅力的なプロジェクトとしての「学力調査の時代」
    佐賀大学講師  村山 詩帆

    ★全国的な学力調査と同時並行で、自治体の学力調査が実施される。佐賀県の例では、調査の目的は全国学力調査とほぼ共通だが、調査する教科、対象に違いがあり、全国学力調査を補完するよう設計されている。

    ★全国学力調査と佐賀県調査には、改良の余地があるものの、試行錯誤する過程でQOL(Quallty of Life)の不平等を明らかにできる。また、そこからローカル・オブティマム(地域に応じた最適性)を議論するための手がかりが得られる可能性がある。

    ★学力調査から析出される政策的インプリケーションは、教育の規範的原理、教育の正義論に波紋を投げかける。この意味で、「学力調査の時代」とは魅力的なプロジェクトである。

    自治体の行う学力調査と標準学力調査
    (財)応用教育研究所部長  堀口 哲男

    ★近年、多くの自治体で学力調査が行われるようになってきた。自治体の行う学力調査の形態や内容は多様であるが、標準学力検査とは相互補完関係にあるといえる。

    ★標準学力検査とは標準化の手続きを経て作成されたテストで、妥当性や信頼性の検討が行われている。個人のレベルでの分析を視野に入れた場合や学力の定点観測、指導の検証をする場合などに、標準学力検査は有効である。

    アメリカの学力調査NAEP
    東北大学教授  村木 英治

    ★全米学力調査(NAEP)は、アメリカの大規模調査として一九六九年から実施されている。NAEPはその目的に従って、メイン、トレンド、州別NAEPと分かれる。

    ★小・中・高校から第四・八・一二学年が標本対象として選ばれ、小・中・高校で教えられている教科科目のほとんどが網羅されている。

    ★調査結果は、人種別、地域別、居住地別に集計されている。

    ★NAEPに使われている重要な測定技術としてBIBデザインや項目応答理論があげられる。これらの先進的な活用が、学力についての社会調査として、利用価値の高いデータの蓄積を可能にしてきたといえる。

    望ましい全国学力調査のあり方
    東京理科大学嘱託教授  澤田 利夫

    ★ゆとり教育が学力低下を助長させたとする議論は、二〇〇〇年以降の教育界の話題の中心であった。それにPISA調査の結果から、習得した知識や技能を実生活に活用する力、まさに読解力や活用力に関する学力が低下しているということもわかった。また、子どもたちの学力が二極分化の傾向をますます強めているという事実もわかってきた。

    ★これらを受けて文部科学省は、児童生徒の学力の実態を組織的、系統的に調査して、教育の改革・改善に資することを目的に、全国一斉学力調査を実施することになった。

    ★ここでは、ペーパーテストを中心に全国一斉学力調査のあり方等を多少の批判や課題を交えて考えてみる。

    連載

    坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり   「わかる」と「できる」-基礎・基本の考え方(9)加減法の意味・時計の読み 青山学院大学教授
    坪田 耕三
    読解力を育てる(3)   マンガの読解力 聖徳大学短期大学部助教授
    吉田 佐治子
    望ましい全国学力調査のあり方を考える(5)   イギリスのAPU調査を参考として-態度と学習に影響を与える事項の調査 静岡県立袋井高等学校教諭
    鈴木 秀幸
    授業をつくる(17)   中学校美術科「『協働の学び』を生かした美術の授業」 お茶の水女子大学附属中学校教諭
    小泉 薫
    ペーパーテストで思考力・表現力を測る(9)   中学校社会科-地理的分野 富山大学附属中学校教諭
    山田 智子
    標準検査を活用した教育実践(9)   「いごこちのよい学級にするためにQ-Uを活用していじめを防止する」 兵庫県西宮市立夙川小学校教諭
    牧野 天志
    どうする?小学校英語(24)   「PDCAサイクルで教育の説明責任を果たそう!」 国立教育政策研究所名誉所員
    渡邉 寛治
    だんわしつ   三五歳、四五歳、五五歳の危機管理 神戸女子短期大学学長
    長瀬 荘一
    ひとりごと 元公立中学校教諭
    吉冨 久人