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月刊誌 指導と評価

2008年 3月号
  1. 2008年 3月号  Vol.54-03 No.639  定価:450円
特集
  • 学力向上策を考える
  • 【在庫なし】
  • 特集

    学習指導要領改訂のねらい   これからの学力とその指導法
    神奈川大学特別招聘教授   安彦 忠彦

    ★今回の学習指導要領の改訂では、前回の改訂における「生きる力」の趣旨を、平成十五年の一部改正の方向でいっそう徹底し、その中心にある「思考力等」の高いレベルでの育成を図ろうとするものである。

    ★その際、「確かな学力」において加えられた「知識・技能」と「思考力等」との関係が重要となるので、この両者を効果的に結合するために「活用型」の学習活動を新たに導入することとなった。この「活用型」の学習は、具体的には各教科の発展的な学習の場面で行われることが望ましい。

    ★「基礎・基本」の議論はなかったが、「基盤」づくりの必要性が強調され、これは「学力」と「生活」・「行動」の両方を最も下のところから支えるものとして重視されている。

    これからの子どもに必要な学力   学力向上策を考える前に
    大阪教育大学名誉教授  北尾 倫彦

    ★基礎的な知識・技能をすべての子どもに確実に習得させることは、これまで以上に重要な課題であり、学力調査の低得点児を減らす対策として注目したい。

    ★知識活用力・読解力などが重視されるようになったが、質の高い学力という視点から、学習を深め拡げるという授業の本質論に立って問い直す必要がある。その際、探求型授業だけでなく受容型授業の役割も再評価したい。

    ★達成状況の違いに応じた学力向上を図るため、単元別評価と補充・深化・発展課題学習を組み込んだシステムを提案し、それによる現状の改善点を論じた。

    「教える」ことと「考えさせる」こと   新教育課程における学力向上とは
    東京大学教授  市川 伸一

    ★基礎・基本としての知識技能の定着をめざす「習得型」の教育では、「教えて考えさせる」という方針に基づく授業設計が望まれる。

    ★「教えて考えさせる授業」は、受容学習と問題解決学習を接合したものである。「教える」の段階での教師による説明、「考えさせる」という段階での理解確認、理解深化、自己評価という流れが基本となる。

    ★「教えて考えさせる授業」の提唱は、一九九〇年代に、自力発見や協同解決が強調されすぎて、教師が教えることを手控えてしまったということが背景にあるが、”教え込み” ”詰め込み”を奨励するものではない。必要な予備知識を与えることによって、むしろより多くの児童生徒が問題解決学習や討論に参加できるようになることがねらいである。

    学級経営で学力向上をめざす
    千葉大学教授  上杉 賢士

    ★いまの子どもたちが主役として活躍する時代は、自律した個人が強い絆で結ばれる、あるいは相互の強い絆を支えにして自律性を獲得する「自律社会」であるといわれている。その点を勘案すると、子どもたちの生涯にわたって有効に働く学力は、「関係性」と「自律性」の二つの要素によって構成されると考えられ、学校に対する期待もここに集約される。

    ★生徒指導や教科指導においては、それぞれの特質を生かすとともに、この二つの要素の適切なバランスに配慮する必要がある。そのためには、「教えて育てる」ことの限界を知るとともに、関係の中で育てる新たな方策の検討が肝要である。

    指導形態の工夫   ティームティーチングの可能性を広げた小学校低学年の選択制
    佐賀市立春日北小学校教頭  手塚 美代子

    ★佐賀県では平成十七年度から県単独予算措置により、小学校低学年において基本的生活習慣・学習習慣の定着をねらいとして、三五人以下の少人数学級(以下「小規模学級」)または、四〇人学級のままで複数の教師が指導に当たるティームティーチング(以下「TT体制」)のいずれかを、設置責任者である市町村教育委員会が主体的に判断できる選択制を導入している。

    ★導入初年度は対象校の約七割が小規模学級を選択したが、平成十八・十九年度は約六割がTT体制を選択している。これは、TT指導の効果に加え、教員の弾力的活用や協働体制づくりなど、学校組織の改善における効果がそのおもな理由である。

    ★佐賀県における選択制の導入は、学校自らの判断と責任において決定・実施されるため、学校の自主的・自律的取組の促進につながっており、この意味で本政策は学校の独自性を創出させ、教育の質の向上を図るといった政策的インプリケーションとなりうると考える。

    学び方を学ぶ
    立命館小学校教頭  深谷 圭助

    ★学習指導要領に則した検定教科書を教えるという日本の授業は、公教育として一定の水準の教育を展開するためには有効であったかもしれない。しかし、教科書の内容を教えなければならないと教師が思うほど、子どもに学ぶ動機をもたせて学習を進めることは軽視されがちになる。テストでよい点をとるために勉強する、という外発的動機でしか学ばないようになる。

    ★これからは、子どもが内発的な学ぶ動機をもち、自らの意志で学習を進める学び方学習により、学ぶ喜びを子どもが感じ、学ぶ動機を自分で見つけ、自ら学びを進める学び方教育という、教育の軸を確立しなければならない。

    学力向上策と家庭学習・生活習慣
    白梅学園大学教授  無藤 隆

    ★学力を向上させるには、学校教育だけでは十分でない。生活の規律が成り立つことが大切であり、さらに家庭での学習活動により学校の学習を補えるとよい。毎日の繰り返しの中で学習活動が一定の時間行われ、勉強に集中できるようにする。メディア接触をコントロールする習慣をつけ、読書時間を確保する。

    ★家庭での行動は学校が直接監督できないので、親に趣旨を理解してもらえるよう、学校側の連携の働きかけが不可欠である。手をたずさえて子どもを教育していくという風土をつくっていく。宿題は、その意味ややり方を親に伝える。家庭環境の問題などを補う活動を学校で行うことも必要かもしれない。

    これからの教科指導   研究開発学校としての取組み
    広島県尾道市立土堂小学校長  松原 隆二

    ★モジュールタイムを設定し、「読み・書き・計算」などの徹底的な反復学習を行うことにより、児童の基礎・基本の力を高めている。その際に、「スピード・テンポ・タイミング」を重視している。

    ★「郷土科」「情報科」「英語科」の三教科を特設し、「郷土を理解し愛する力、情報処理能力、英語力」を育成するとともに、コミュニケーション能力を高めている。

    ★学力の向上を図るには、「生活習慣の改善」とあわせて指導していくことが必要であり、学校・家庭・地域の連携が不可欠である。

    連載

    坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり   「わかる」と「できる」-基礎・基本の考え方(21)図形 青山学院大学教授
    坪田 耕三
    教師力を磨く(1)   生徒の潜在能力を引き出し、育てる中学校教師の力量 筑波大学附属中学校主幹教諭
    肥沼 則明
    学力調査を正しく読み取る(最終回)   PISAにおける習熟度レベルの設定について 国立教育研究所科学教育研究センター統括研究官
    小倉 康
    教育心理学の外国文献紹介(5)   構成主義の学習理論 (財)応用教育研究所所長
    辰野 千壽
    いま必要とされる教師力をいつどのように身につけるか(2)   学部レベルで育みたい教師力 山形大学教授
    出口 毅
    私の教育評価実践(17)   個に応じた指導の工夫-単元別評価を活用して 大阪教育大学附属池田中学校教諭
    上原 昭三
    どうする?小学校英語(30)   「児童の変容がきちんと見取れる教育を推進しよう!(条件整備その1のつづき) 国立教育政策研究所名誉所員
    渡邉 寛治
    だんわしつ   社会性を育てるスキル教育 埼玉県上尾市立西中学校長
    清水 井一
    ひとりごと 元公立中学校教諭
    吉冨 久人