月刊誌 指導と評価

2009年 12月号
  1. 2009年 12月号 Vol.55-12 No.660  定価:450円
特集
学力向上策を工夫する(3)社会、英語
  • 【在庫なし】

特集

PISA型読解力の育成をめざす小学校社会3,4年の授業づくり

兵庫県佐用町立上月小学校教諭  古川光弘

★新社会科では、特に「PISA型読解力」の育成をめざす。新学習指導要領の三・四年の目標(3)は、従来の「調べたことを表現する」から、「調べたことや考えたことを表現する」と変更されているからである。これは五、六年も同じで、「技能・表現」と「思考・判断」を統合した力ととらえらえる。
★PISA型読解力を三段階に分ける。まず「資料を読み取る」時間を十分確保する。写真や具体物などから、いろいろな事実を発見する読解力レベル1の学習である。次に、調べたことをもとに子どもたちに資料を作成させ、それを比較したり、関連付けたりする読解力レベル2の学習に取り組む。

小学校社会5.6年

山形県村山教育研究所指導主事  田所昭裕

★小学校高学年の社会科学習では、社会的事象に関する基本的な知識や技能の習得はもちろん、社会的事象を多面的・多角的に考え公正に判断する能力や、公共的な事柄に参画していく資質や能力も育てたい。
★さまざまな学習活動を通してどんな力を育てたいのかを明確にする必要がある。学習活動の質を高めることが、何よりの学力向上策であり、言語能力を育むことにもつながる。
★教師自身が社会的事象のもつ意味を多面的・多角的にとらえ、構造的な枠組みの中に位置づけたうえでさまざまな学習活動のよさを生かした単元展開ができるかが、授業改善の鍵を握る。

中学校社会-地理的分野

筑波大学附属駒場中・高等学校教諭  大野 新

★地理的分野は、新学習指導要領によって大きく2編の構成となった。その中心は世界と日本の動態地誌による学習である。世界では州ごとに「主題」を設定し学習する。日本では7つの中核テーマを地域にあてはめ、追究する学習を展開する。大きな内容の変化に対応して、あらためて基礎・基本の学習が重要となる。
★現在扱われていない世界や日本の地域情報をどのように収集し、地誌として構成するかが問われる。地図帳の活用や地域調査の充実など現在の学習で課題とされていることも改めて強調されている。今まで以上に、習得から活用への学習展開が求められている。

中学校社会-歴史的分野

筑波大学附属中学校教諭  関谷文宏

★中学校社会科の歴史的分野でも、「何のために学力向上をめざすのか」という問いに対しては、新学習指導要領と解説に示されているように、あくまでも社会科の教科目標=公民的資質の基礎の育成と答えられる指導者でありたい。
★歴史的事象について考察・判断しその成果を自分の言葉で表現する学習など、生徒が主体的に学べる時間を十分に確保した3年間の指導計画を作成する。
★歴史を大きくとらえることが学習の中心であることを理解させるためにも、「時代を大観し表現するためのワークシート」のような教材を効果的に活用する。
★小学校の歴史学習との有機的な接続を図り、生徒が「苦手意識」をもたず、「分かる楽しさ」が実感できる学習を展開する。

中学校社会-公民的分野

富山市立堀川中学校教諭  道木善信

★教科書に沿っての概説・要点整理を中心とした社会科の授業を、とりわけ公民的分野においても、生徒の関心を引きつけ意欲を駆りたてるような授業、社会で生きる力を育てるための授業に改善が求められている。本稿では、PISA型読解力の向上を意識した取組みを視点に実践と考察を試みた。主体的に現代社会に生きる力を身に付けていきたい。

小学校外国語活動ではぐくむ学力

さいたま市立大谷口小学校教諭  荒木 大輔

★外国語(英語)活動ではぐくむ「コミュニケーション能力の素地」。この力で最も重視するものが、「人と積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度(資質)」である。
★外国語(英語)活動がねらう資質と能力について正しく理解し、学校の実態やはぐくみたい学力を踏まえて、自校の目標を設定することが重要である。
★外国語(英語)活動の目標の実現には、外国語を用いた言語コミュニケーション活動を通して得た、「自分の思いが通じた」「相手の気持ちが分かった」という実感が不可欠である。

中学校英語1年-入門期を中心に

筑波大学附属中学校教諭  蒔田 守

★約80年間にわたり「教科書を開かない音声を重視した入門期指導」を行ってきたが、入門期指導で行うべき事柄を次のように再定義した。『文字に頼らず音声のみによって基本的な英文を導入・口頭練習するという従来からの内容に加えて、文字の表す音やつづりと発音の関係、「読むこと」「書くこと」の基本的な技術を教授する』
★最終的な指導目標を、「夏休みに自力で学習することができるようにさせること」とし、夏休みまでに学習する教科書本文の内容をきちんと理解し、正しく音読でき、正確に書けるようにさせる。
★小学校での英語活動も大きく動いているこの時に、中学校の入り口である「入門期」は、ますますその重要性を増している。小学校で行ったことを生かしつつ、教科として生涯学習の礎を築くための入門期と位置付けたい。

中学校英語2.3年

横須賀市教育研究所指導主事  吉川知彦

★新学習指導要領の実施に伴う中学校外国語指導の改善は、小中高12年間の外国語教育を見通して取り組まなければならない。
★中学校外国語指導の改善には、①言語活動の改善、②文法・語彙指導の改善、③4技能の総合的な指導の改善が求められる。いずれも、既習事項を活用しながらコミュニケーションを成立させるように仕向け、意味の伝達が必然的に求められる場面を設定することが大切である。
★上記の改善点を支えるものとして、明確な到達目標、その目標に基づく3年間の指導計画、そして評価の活用が欠かせない。

連載

坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(42) 小学校五年、十進位取り記数法 青山学院大学教授
坪田 耕三
PISA型読解力を育てる(16)教育心理学からのアプローチ 東京大学教授
藤村宣之
これからの理科教育をどうするか(4)小学校高学年「エネルギー」「粒子」 筑波大学附属小学校教諭
白岩 等
第三回全国学力調査を分析する(5)地方レベルと学校レベルでの分析と活用 国立教育政策研究所総括研究官
山森 光陽
新しい教育評価の動向-主要論文の解説(21)教科プロフィールを用いた生徒の学習進歩を評価し、記録し、報告する方法 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
ネット時代の読書論(21)読書の方法を考える-その1-「井上流本の読み方十箇条」に学ぶ 東京家政大学教授
平山 祐一郎
小学校英語活動のポイント(9)要録等の記入上の留意点について  国立教育政策研究所名誉所員
渡邉 寛治
だんわしつ/日本語のおもしろさ 国文学者
中西 進
ひとりごと/道草三人 元公立中学校教諭
吉冨 久人
TOP