月刊誌 指導と評価

2009年 5月号
  1. 2009年 5月号 Vol.55-5 No.653  定価:450円
特集
特別支援教育の現状とこれから
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特集

特別支援教育の現状とこれから

兵庫教育大学大学院教授  柘植 雅義

★従来の特殊教育から新たな特別支援教育への転換は、二〇〇一年から徐々に、おおむね着実に進んだ。しかし充分な成果が見られなかった事項や、新たな課題も出てきた。特別支援教育の推進には、教師、学校、地域(自治体)の格差への対応も課題である。
★小中学校等では、特別支援教育の理念や基本的な考えの理解が浸透し意識改革が進んだ。また、特別支援教育のシステム構築が完成し、その機能化の段階に入った。
★特別支援教育の視点を盛り込むことを目指した授業改善、個別の指導計画の充実、通級指導教室における教育課程の編成と指導の工夫等が課題である。特別支援学校ではセンター的機能の発揮が進んだが、今後のあり方が課題である。

学校と行動をどう支援するか

東京成徳大学大学院特任教授  中野 良顯

★通常学校における特別支援教育の二大課題は、良質の学習支援と行動支援である。
★学習支援の有効な方法は、次の順序で行う構造化された、ラーナーフレンドリーな学習指導である。①はじめに目標を言う、②既存知識を活性化させる、③アドバンス・オーガナイザーを与える、④新しい情報を提示する、⑤子どもに実習させる、⑥授業のまとめをする、⑦宿題を出す、⑧次回の予告をする。
★行動支援の有効な方法には、積極的行動支援(PBS)がある。望ましい社会的行動が必ず報われる、共通の価値、共通の言語、共通の経験をもつ学校文化を構築するシステム・アプローチである。

特別支援学校のこれから

東洋大学教授  宮崎 英憲

★学校教育法の改正により、障害種別の盲・聾・養護学校は、複数の障害に対応できる特別支援学校となり、さらに幼・小・中・高校等に助言・援助を行う特別支援教育のセンター的機能を担うことになった。ただし、これまでの特定の障害に対応した学校も、法的には設置可能である。すでに、この制度転換を受けた取組みは、進みつつある。
★他方、センター的機能の質の向上は大きな課題である。担うべき援助は多岐にわたるうえ、個別の教育支援計画の作成をはじめ、関係機関との密接な連携協力が欠かせない。そのための時間確保、仕組みづくりが求められる。

特別支援教育の実際  千葉県版ピアサポートプログラムとQ-Uをツールとした指導の試み

千葉県北総特別支援教育研究会  齋藤恵美子・勝田真至

★北総特別支援教育研究会では、本来は通常学級の集団を育てるべく開発された「楽しい学校生活を作るためのアンケート(Q-U)」と「千葉県版ピア・サポートプログラム(豊かな人間関係づくり実践プログラム)」の両方のツールを用いて、特別な支援を必要とする児童の学級での適応を図るべく、通常の学級と連携した個別の支援をコーディネートし、実践を試みた。
★本稿では、そのコーディネートと実践にあたるための基本的な考え方を紹介し,実践報告を考察した。

特別支援教育の実際  学校の「チーム支援」で学級経営を支える

北海道釧路市立美原小学校教頭  高畠昌之

★日本の教育プログラムは、40人(最高で)という人数が集団生活を行えることが前提で、そこには「ルール」とそれを守ろうとする集団が存在することを意味する。そこへ、臨機応変的な環境づくりが必要となる特別支援教育が導入された。「特別扱いを特別支援と納得させる学級経営」が求められ、「一斉指導」と「個別支援」の融合が課題となった。これを担任一人で担っていくのは大変である。
★「通常学級での特別支援教育」とは、学級経営を支える「チーム支援」を学校システムとしていかに作るかという「学校経営」のあり方を問うものであると考える。ここでは、河村茂雄氏が出版した『学級担任の特別支援教育』の理論をもとに実践した事例を紹介する。

特別支援教育の実際  応用行動分析学を用いた学校環境調整プログラム

神奈川県逗子市教育委員会教育部長  石黒 康夫

★特別支援教育を実践する上で、学級や学校の環境を整えることは大切なことである。しかし児童生徒の問題行動により、学級や学校の秩序が乱れている学校もある。
★児童生徒の問題行動の原因が障がいであるか否かにかかわらず、有効に働く介入方法が求められている。問題行動の指導も望ましい行動を強化するための機会ととらえ、児童生徒の望ましい行動を増やすことにより問題行動を減少させる。
★特別支援教育を行う上で、環境調整に有効なツール「School-Wide Positive Behavior Support、SWPBS」の日本初の実践例を紹介する。SWPBSは、それ自体とそれを実践する過程が学校の環境調整となる。

特別支援教育の実際  コー^ディネーターの役割を中心に

神奈川県横須賀市立常葉中学校総括教諭  野見山 光

★学校内の共通理解と特別支援教育を柱とした校内体制づくり
★学校のアセスメントと子どものアセスメント
★教科担任制の長所と短所
★特別支援教育は、日常の中にある。
★学級指導、教科指導、生徒指導の中での特別支援教育
★校内体制の機能的な役割と保護者や地域への働きかけ

特別支援教育の充実-アメリカから何を学ぶか

東京成徳大学大学院特任教授  中野 良顯

★米国の特殊教育のパラダイムシフトを展望し、日本の特別支援教育を改善する手がかりを探る。
★米国では「二〇〇一年初等中等教育改正法」(落ちこぼれ防止法)と「二〇〇四年障害個人教育改善法」を契機として大転換が生じた。
★鍵概念は、通常学級を拠点とする多層サービスの提供、サイエンス・ベースの有効な指導法、指導に対する子どもの反応ぶり(RTI)、そして指導と評価の一体化、である。RTIを中心に、これらの概念を説明し、日本の特別支援教育の充実策を考える。

連載

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坪田 耕三
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