月刊誌 指導と評価

2010年 1月号
  1. 2010年 1月号 Vol.56-1 No.661  定価:450円
特集
やる気を育てる
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特集

新教育課程でやる気をどう考え、どう育てるか

名古屋大学名誉教授  安彦 忠彦

★今回の学習指導要領改訂では、「意欲」などの情意面はあまり強調されていない。むしろ「知識・技能」・「学習習慣」と「思考力等」とのバランスが重視されており、「やる気=意欲」はその基礎にあるものとされているが、かつてほど絶対視はされていない。
★また、「やる気=意欲」と見れば、「意欲」は脳科学的には「意志」と「欲求」に分けられ、それぞれ別の大脳の部位で担当されているので、教育的対応は異ならねばならない。

やる気の心理学-自己決定理論(SDT)からの提言

筑波大学名誉教授  櫻井 茂男

★自己決定理論を構成する「有機的統合理論」によれば、外発的な学ぶ意欲には自律性の程度によって三~四つの段階が設定できる。その段階と内発的な学ぶ意欲(自律性がもっとも高い段階)の段階における「学ぶ理由」と、子どもの適応(学業成績がよいことと精神的に健康なこと)との関係を分析したところ、自律性の高い「学ぶのがおもしろいから」と「自分の夢を実現したいから」に代表されるような理由で学ぶことが、子どもの適応によいことがわかった。とくに後者の学ぶ理由は、今後の指導において重要である。

小学校でやる気を育てる

千葉県習志野市立大久保小学校教諭  小宮 健

★子どもがやる気を出すときは、①好奇心・知的好奇心が旺盛なとき。②向上心が旺盛なとき。③夢を実現しようとするとき。④自尊心や自信が旺盛なとき。に整理できる。これらの意識が重なり合って、やる気を出している。
★国語でも算数でも、答を求めさせるのでなく、自ら創り出す活動が子どものやる気を引き出す。
★「給食指導」「総合的な学習」「先生との対決」でもやる気を育てることはできる。子どもの「向上心」「好奇心」「自尊心」を刺激しつつ、子どもの主体性を引き出し、できた成果を大いに認めることである。

小学校でやる気を育てる

香川県まんのう町立高篠小学校長  環  修

★教師の仕事は、子どもに夢と希望をもたせることである。それに向かってのやる気を育てるために、よさを認め褒めて伸ばすことが大切である。
★子どもに任せじっくり取り組ませ、教師がうまくフォローしながら成功へと導く。この成功体験が自信となり、次へのやる気につながる。
★子どもに「ありがとう」と言える家庭で育った子どもは、思いやりと自信をもち、やる気のある行動ができる。

中学校でやる気を育てる-やる気の心理学

高知大学准教授  鹿嶋真弓

★学習自体をおもしろいと思えるのは、「知らないことを知ったとき」と「できないことができるようになったとき」である。この2つに共通するのが感動である。ゆえに、感動を伴う体験、感動を伴う授業を展開することである。
★やる気のない生徒のやる気を育てるため、われわれ教師のできることは2つ。生徒の「今できていること」と「よい変化」に気づくこと。そして何よりも、『望ましい変化』につながる変化を見逃さないことだ。
★『やる気』へのブレーキを解除するために何ができるか、考えられる具体的方法を何でもいいからやってみることである。方法はきっとたくさんある。ここではそのいくつかを紹介する。

中学校でやる気を育てる学校づくり

石川県小松市立国府中学校長  坂谷敦子

★学校としての課題をとらえ、目標を重点化した経営計画・評価計画の公開で、学校づくりのビジョンを関係者と共有化する。
★学校研究を学校運営の要とすることで、教師集団が常に目指す姿を共通に認識しながら実践を進めていくことを可能にする。
★全ての基盤は学級づくりにある。Q―Uの活用や人間関係づくりや社会性の育成を目指すスキル学習は効果的である。指導の体系化を図ると共に、教師自身も必要なスキルを習得することが授業づくりの技を磨くことに活きてくる。
★生徒会活動の活性化や学校行事の充実化を図ることで、自己有用感や達成感、充実感を持ち、次への意欲化につながる。教師は個や集団が生きる場面づくりや「しかけ」を考えたい。

高等学校でやる気を育てる

京都市立堀川高等学校長  荒瀬克己

★目的と目標という点から考えてみると,正当で明確な目的のある場合に,自ら目標設定ができて取り組むことができるならば,やる気が生まれる。
★学力の重要な三要素の関係を見ると,学習意欲は,基礎学力と活用能力によって養うことができるのではないか。
★面白いこと,意味のあることをしたいという思いが,内在するやる気につながる。

学習意欲を育てる-ELLIの利用

教育評価総合研究所代表理事  鈴木秀幸

★生徒の自己認識をもとに、生涯学習ができる意欲や技能(学習力) をもった子どもを育てる指導に、ELLIを利用した方法がある。
★まず、学習力を七つの学習要素として、子どもに質問紙に答えて もらい、結果をクモの巣グラフに示す(ELLI)。これをもと に教師と長所・短所を話し合う。指導過程ではELLIのグラフ は常に参照され、学習で進歩が見られたら書き加えていく。
★わが国では、子どもの興味・関心から出発する総合的な学習に適 していよう。

連載

坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(43) 小学校五年、合同な図形 青山学院大学教授
坪田 耕三
●PISA型読解力を育てる(17)PISA型読解力を育てるカリキュラムマネジメント 横浜国立大学附属横浜中学校副校長
米澤利明
これからの理科教育をどうするか(5)小学校高学年「生命」「地球」 筑波大学附属小学校校長
佐々木昭弘
第三回全国学力調査結果を分析する(1)小学校算数 青山学院大学教授
坪田 耕三
重複テスト分冊法と学力調査 立教大学名誉教授
池田 央
新しい教育評価の動向(22)主要論文の概説「理解のレベル区分」 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
●ネット時代の読書論(22)読書の方法を考える-その2-「思考のレッスン」に学ぶ 東京家政大学教授
平山 祐一郎
●小学校英語活動のポイント(10)コミュニケーション力(資質・能力)の育み方と見取り方のポイント-その4- 国立教育政策研究所名誉所員
渡邉 寛治
だんわしつ/関係で教育する 文教大学学園長・応用教育研究所所長
石田 恒好
ひとりごと/ああ 上野駅 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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