月刊誌 指導と評価

2010年 8月号
  1. 2010年 8月号 Vol.56-8 No.668  定価:450円
特集
新しい指導要録(1)
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特集

指導要録改訂の考え方

 

★目標準拠評価を深めていく。そのためにも評価と補習を組み合わせるようにする。学力の3要素から4観点として整理した。思考・判断・表現の観点は特に表現力を思考との関わりでとらえるようにする。関心・意欲・態度の評価の工夫が必要になる。そういった学校現場の工夫を教育委員会が支えていく。

学習評価と指導要録の改善について

文部科学省教育課程課教育課程室長  梶山 正司

★学習評価の意義は,評価を通じて学習評価の改善を生かしていくことにある。そのため、今回の文部科学省の通知においては、一人一人の学力の把握を適切に行うことができる現在の評価の在り方を基本的には維持しつつ、その深化を図っていくことを示している。
★また、総括的評価の性格も有する指導要録についても,その性格は基本的には異なるものではないことから,新しい学習指導要領による指導の改善に対応した改善を行うことが求められている。
★さらに、教員の負担感の軽減を図るためには、学校において組織的・計画的な評価の取組を進めることが必要である。

各教科の学習の記録

教育評価総合研究所代表理事  鈴木秀幸

★「思考・判断・表現」の観点は、長期的な発達段階を踏まえたレベルを評価基準とするスタンダード準拠評価によるべきであり、知識・技能を活用するということから、パフォーマンス評価が必要となる。今後その開発が急がれる。
★「関心・意欲・態度」の評価は非常にむずかしい。だれでも「十分満足」といえる状況のみ評定に加算する方式が望ましいのではないか。
★「評定」は、当面は観点別の数値的処理によるほかないだろうが、入試に用いられる場合には、その地域内で統一することが望ましい。

総合的な学習の評価方法

関西大学教授  安藤 輝次

★総合的な学習の評価では、問題の発見や解決、探究、協同、学び方、生き方などを形成的に評価するのが適切である。具体的には、①最終ゴールをイメージさせながら、学びの目標と評価の観点を子どもに示す、②観点を念頭に置きながら、子どもに学びの過程で生まれた学習物(失敗作や下書きなども含む)を時系列でポートフォリオに収める、③教師は、評価の観点を意識しつつ、形成的・総括的な評価をするが、子どもの意外な面や驚きなども教師用ポートフォリオに収めておくことである。

行動の記録

東京学芸大学教授  永田繁雄

★「行動の記録」については、十の評価項目を参考とし、「十分に満足できる」と判断される場合に○印を付けるという形式や方法は従来と変わらない。
★その中で、教育基本法をはじめとした改正法令や新しい学習指導要領の趣旨を踏まえること、また、設置者の設定する評価項目に各学校が教育目標に基づき項目を加えることも適当であることが、改善の方向性として示された。
★各学校においては、このことを踏まえ、新しい道徳教育との関連も考慮しながら、全教師で趣旨を共通理解をし、児童生徒の豊かな生き方を促す多面的で創意ある評価を進めることが期待される。

総合所見及び指導上参考となる諸事項

法政大学教授  服部 環

★総合所見及び指導上参考となる諸事項の欄は、今改訂でも継続された。
★記入内容も、小学校で外国語活動、中学校で部活動が追加されたが、基本的には継続された。児童生徒のよさや進歩の状況を幅広く把握し、個性を生かす教育に役立てる。努力を要する点などについても、その後特に配慮を要するものは記入する。また、集団の中での相対的な位置付けに関する情報も必要に応じて記入する。
★さらに、通級指導を受けている児童生徒については、指導を受けた学校名、授業時数、指導期間、指導の内容や結果等を記入する。通級指導の対象ではない児童生徒で教育上特別な支援を必要とする場合は、必要に応じて指導方法や配慮事項を記入する。

特別支援教育における評価と記録

聖徳大学教授  河村 久

★障害のある児童生徒の学習評価についての基本的な考え方は、障害のない児童生徒に対するものと基本的に変わりがあるものではない。
★障害のある児童生徒の学習評価に当たっては、児童生徒の障害の状態等を十分理解し、様々な方法を活用して、一人一人の学習状況を一層丁寧に把握する工夫が必要である。
★通常の学級では、障害の状態等に即した適切な配慮を行い、指導要録にも必要に応じ、効果があったと考えられる指導方法や配慮事項を記入する。
★特別支援学級に在籍する児童生徒や通級による指導を受けている児童生徒の指導要録に関しては、基本的に従来からの規定を引き継ぐ。

新指導要録を見て

文教大学学園長・応用教育研究所所長  石田 恒好

★名称・基本的性格は、教育は教師の指導が中心、評価の主体はもっぱら教師の時代のものである。教育の中心が児童生徒の学習に、評価の主体に児童生徒をはじめすべての教育関係者がなっている現在、この状況にふさわしい、せめて「学習」を加えるという改訂はすべきである。
★観点に「学ぶ力」は残し、教科の視点からの検討も行うべきである。
★目標準拠の評定を行うため、各欄について、「十分満足」の状態を、学年ごとに、具体的に示すのを急ぐことである。
★個に応ずるための中核的な資料(学習能力、認知能力、知能)は強化すべきである。
★用語の明確化を含め、基本的な検討が必要である。

連載

教えて考えさせる授業の実践(2)中学校理科 京都市立京都御池中学校教諭
松本圭代
坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(50) 小学校五年、基本図形の面積 青山学院大学教授
坪田 耕三
これからの国語科教育(5)小学校読むこと文学的な文章 兵庫県芦屋市教育委員会学校教育部長
上月敏子
これからの理科教育をどうするか(11)中学校二年「化学変化と原子・分子」 筑波大学附属高等学校講師・元筑波大学附属中学校教諭
荘司 隆一
教育・心理検査入門(5)標準学力検査NRTの活用-学力検査を結果ではなく出発である 長野市教育センター所長
宮下袈裟登
自己の生き方を育てる学校教育(5)「総合的な学習の時間」の人格形成-つながり、かかわり、引き受ける 上智大学教授
奈須 正裕
明治大学教授
諸富 祥彦
小学校英語活動のポイント(17)「外国語活動」におけるDo`s and Don`ts-その5 国立教育政策研究所名誉所員
渡邉 寛治
教育の窓(13)パフォーマンス評価の理論的な背景を探ること 京都大学教授
田中 耕治
だんわしつ/古典っておもしろそう-たとえば中国の白楽天 岡山大学大学院教授
下定雅弘
ひとりごと/ほめる 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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