月刊誌 指導と評価

2012年 1月号
  1. 2012年 1月号 Vol.58-1 No.685  定価:450円
特集
教師力を育てる
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特集

教師力と国家資格

筑波大学名誉教授  阿部生雄

★教員の資質能力向上に対する思いが強まるに伴い、指導力不足教員に対する人事管理システムが各教育委員会に導入され、教育現場では人事考課制度が一般化した。教育再生会議による教育三法の改正議論を経て教員免許は10年期限付きとなり、教員免許状更新講習での30時間の研修が課せられた。その後、民主党は、2009年の民主党への政権交代の折に、マニフェストで「教員免許制の抜本的見直し」や「教員養成課程の6年制」を打ち出した。しかし、その具体的展望も見出せないうちに、いまや教員免許への国家試験の導入とその国家資格化が重要な検討課題となっている。導入には慎重な議論が必要である。

授業をする力-小学校理科

筑波大学附属小学校教諭  白岩 等

★理科という教科は、観察、実験をベースに授業が進められていく。そこには教材というものが必要不可欠である。それゆえ理科において授業力をつけるためには、教材を見る目を養うことがまず重要である。
★また、授業を構成していく上では子どもから「?」が生まれ、子ども自身の問題となることが大切である。そのことが主体的な問題解決につながっていくのである。また、科学的な見方や考え方を養うためには教師が子どもの思考活動を活性化するような授業を構成していくことも重要となってこよう。 

授業力-中学校国語科における-

元岐阜大学教授  安居総子

★授業は、計画・実施・評価の過程を踏む。そのすべてにかかわるのが授業力である。国語教師のプロフェッショナルとして問われるのは、授業設計力と教室運営力である。授業設計はどのような内容の授業にするかということで、国語科では言語活動によって言語行動力(話す・聞く・書く・読む)をつけることが目標としてあるから、言語と言語活動を含み込んだ「言語経験」の状況が内容となる。
★実際は、学習者の学びを成立させるために、学習者の実態を把握し、育てたい力を掲げ、言語活動と学習材を組み合わせて具体化する。そして学習展開中は、個々の学習者、学習者集団の動きや反応、全体の流れを見ながら授業を進め、評価力を中心とした指導支援を行う。

子どもを見る力-中学校理科の授業を成立させるために-

千葉市立こてはし台中学校長  堀米 宏

★教師には基本的資質として、、子どもの実態や現状を的確にとらえ対処する能力が求められている。
★教師と子どもにはスクリプトの違いがある。このことを十分認識しておくことが、「わかる授業」につながる。
★理科の授業で子どもを見る力は、教師自身が正しい科学概念を身に付け指導にあたることで養われていく。

学級経営力を高める

山梨県都留市立壬生第一小学校教諭  浅川早苗

★学級経営がなぜ重要か、再認識が必要だ。
★学級集団つくりは、児童の心理社会的発達を促す重要な教師の仕事である。
★学級集団を客観的にとらえるデータを活用することで、学級経営の目標を定める。
★学級集団つくりの実際を紹介する。
★学校の組織力を向上させて、教師集団の学級経営力を高める。

子どもとの関係づくり

京都府教育委員会南丹教育局指導主事  井戸 仁

★周囲からの愛情や信頼、期待などに「包み込まれている感覚」をもつことこそが安心や自信、誇りや責任感をもたらす。(京都府教育振興プラン)
★自尊感情や自己肯定感を高める一つの方法として、的確な強化子を与えることが求められる。その強化子の一つに「ほめる」がある。
★子どもの欠席に伴う家庭訪問や「良いこと」を伝えに行く家庭訪問は児童生徒、保護者の自尊感情や自己肯定感を高め、人間関係を構築するために有効である。方法として、①玄関先で(家の中には上がり込まず)②子どもの同席は特に必要ではなく、③できるかぎり、五分間以内で行うことがキーである。、
★リレーションのつくり方を、①特定の価値観に固執せず、自他一体になるoneness、②味方になって支えるweness、③自分を打ち出すInessという言葉で示されているように教育カウンセリングを実践に生かすことが重要である。

社会への自立を促す教師力のあり方

文教大学准教授  新井 立夫

★「働かざる者、食うべからず」というレーニンが新約聖書のパウロの言葉を引用して言った有名な言葉がある。いつの時代も食うために、よりよく生きていくために学び、働くという視点は、いちばん大切なことであるのに、社会的・職業的自立を促す教育がなされていない。
★義務教育段階から一貫した体系的な「キャリア教育」の実践をすることは法的根拠も明確にあり、学校教育として必要不可欠である。各学校種に関わる教師力は、「つながり」をキーワードに学校教育全体をキャリア教育的視点でとらえ、「学ぶこと」「働くこと」「生きること」が一体のものであることを意識させ、覚悟をもたせ、取り組ませる力にほかならない。

全教員が校内研究で教師力を高め合う

東京都品川区立大井第一小学校長  大島久幸

★そもそも、校内研究会をなぜしなくてはならないのか。何のためにするのか。それを明確にしてからスタートする必要がある。
★校内研究を「研究」と大上段に構えず、研究というレベルを目指すのではなく、一人ひとりの指導力の向上、さらに学校力を高めるための「研修」ととらえてみてはどうであろうか。他校の良い実践や先行研究から学ぶことも大切である。
★これまで行われてきた校内研究の課題は何か、マンネリ化してはないか。校内研究授業日だけでなく、日常的にまた集中的に取り組める仕組みが必要である。

連載

学校で取り組む特別支援教育(4)地域コーディネーターの役割 筑波大学附属大塚特別支援学校主幹教諭
安部博志
これからの小学校国語の授業づくり(10)「読むこと」4年生-文学 筑波大学附属小学校教諭
二瓶弘行
坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(67)-小学校6年、比 青山学院大学教授
坪田 耕三
新年度からの中学校社会科地理的分野の授業づくり(1)世界と日本の諸地域学習の取扱いを中心に 筑波大学附属中学校教諭
山口 泰宏
思考力・判断力・表現力を育てるパフォーマンス課題(4)国語科におけるパフォーマンス課題と「本質的な問い」 福井大学講師
八田幸恵
小学校英語活動のポイント(33)PDCAサイクルによる「外国語活動」の運営の在り方と方法-その13(指導の基本3) 国立教育政策研究所名誉所員
渡邉 寛治
学校の法律相談(10)テスト教材のコピーは認められるか 国立教育政策研究所名誉所員
菱村幸彦
だんわしつ/授業に生かすアドラー心理学 ヒューマン・ギルド代表
岩井俊憲
ひとりごと/アリガトウ 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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