月刊誌 指導と評価

2012年 11月号
  1. 2012年 11月号 Vol.58-11 No.695  定価:450円
特集
通常学級における特別支援教育(2)行動が気になる子どもたち
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特集

通常学級における特別支援教育

筑波大学教授・元国立特別支援教育総合研究所上席総括研究員  柘植 雅義

★通常学級における特別支援教育の中で、特に行動が気になる子どもへの対応についての基本的な考えを述べる。まず、Aさんの離席行動のエピソードを紹介する。そして、“気になる”行動は教師のとらえによって左右されるものであり、客観的な事実としての問題行動とは異なること、気になる行動への対応では行動の「型」と「機能」に着目し、理解と対応策を探っていくこと、また、行動面の問題が学習面の問題と絡んでいることもあること、教室での気になる行動が家庭でも現れるかという問題、一教師としての対応と学校としての組織的な対応、さらには、通級による指導など校内のリソースや郊外の専門家などとの連携などについて考えていく。

行動が気になる子どもたちのアセスメントと支援

法政大学教授  小野純平

★発達障害を有する子どもたちの行動上の問題とその支援について取り上げるとともに、発達障害と類似した行動特徴を示す反応性愛着障害について、発達障害との類似性と差異を中心に解説する。また、こうした障害のアセスメントと支援において、知能検査を積極的に活用することの重要性と検査結果の解釈のポイント、および近年注目されている長所活用型指導(Strength Based Education)を導入することの意義について述べる。

国語授業のユニバーサルデザイン

筑波大学附属小学校教諭  桂  聖

★全員が楽しく「わかる・できる」国語授業をつくるには、特別支援教育の視点を取り入れることが有効である。クラスで気になるAさんに対する指導の工夫は、クラス全員が楽しく「わかる・できる」国語授業につながることが多い。
★指導の工夫とは、「論理」を授業の目標にしたうえで、授業を焦点化したり視覚化したり、授業で共有化を図ることである。授業のねらいや活動を絞ったり、視覚的な手がかりを重視したり、話し合い活動を組織化したりする。
★ただし、こうした指導の工夫だけでも活動が停滞する子がいる場合には、個別の配慮も必要である。

行動が気になる子どもたちの支援-通級

東京都墨田区立梅若小学校主任教諭  青木美穂子

★通常の学級での配慮された環境や指導は、発達障がいのある児童にとって、居場所や学びやすさにつながる。
★行動面に課題のある子どもは、自己肯定感が低下しがちである。成功体験を積むことによって、自信と意欲を回復することが必要である。
★社会性スキルを意図的に指導する場として、通級での小集団指導は有効である。
★週の大半を過ごす在籍校や家庭との連携は必須である。

行動が気になる子どもたちの支援-中学校

岡山市立京山中学校教諭  唐川和江

★中学校で「行動が気になる子どもたち」を考えるとき、さまざまなタイプの子どもたちが頭に浮かぶ。不登校・いじめ・非行・無気力…多様化する生徒像と多様化するニーズに適切な指導や支援を行うためには、全教職員が特別支援教育に関する専門性を高めることが大切である。そして、学校全体で支援を行う校内体制の充実・機能化を図らなければならない。
★二次障害となってしまっている困難さを抱えた生徒が、三年間で自己肯定感を取り戻し、自立と社会参加を目標に夢をもって進路選択できるように支援するためには、本来の原因や、改善していかなければいけないのは何かを見極め、排除ではなくインクルーシブ教育をめざした学校全体の取組が大切である。

行動が気になる子どもたちの支援-幼保から小学校へ

聖学院大学教授  金谷京子

★保育と教育には差異があり、保育の場から小学校への移行は、子どもにとっても教師にとっても保護者にとっても、不安や緊張を伴う。ことに気になる行動をする子どもには、配慮が必要である。
★保育者や保護者が環境調整する支援とともに、子ども自身が就学前から身に付けておくと小学校への接続が円滑にゆくであろう行動、セルフコントロール、コミュニケーションスキル、集団ルールの理解、セルフマネジメントなども保育の中で育てたい。
★移行支援においても特別支援教育における原理と方法は一般の子どもにも有効である。

チームで援助する-保護者をパートナーとして

東京成徳大学教授  田村節子

★保護者の合意をとりながら協働していく援助チームの方法論は、円滑に援助が進む過程を促進するという意味で意義がある。
★チーム援助には、一人ないしは複数のコーディネーターが必要である。
★学級担任・相談担当者・特別支援コーディネーター・保護者とともに、その子にジャストフィットする援助案を作り実行する。
★保護者は一生変わらないチームメンバーである。
★チーム援助では、援助の結果責任は話し合いに参加したチームメンバー全員がとる。
★チーム援助は手間や時間がかかるが、コストパフォーマンスは悪くない。援助チームに参加したメンバーは、その経験を他の子どもたちに生かすことができる。

連載

学級ソーシャルスキルを子どもに育てる(8)学習規律に生かすCSS 岐阜県可児市教育研究所指導主事
木村 正男
これからの評価を考える(7)形成的評価(2)実践研究・算数 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
平成24年全国学力調査結果の考察(2)中学校算数 青山学院大学教授
坪田 耕三
平成24年全国学力調査結果の考察(3)小中学校理科 法政大学教授
左巻健男
これからの小学校国語の授業づくり(20)「書くこと」5年生 筑波大学附属小学校教諭
二瓶弘行
坪田耕三先生の発展・応用を学ぶ小学校算数の授業づくり「深め」「拡げ」て豊かな学び(1)-低学年でも発展・応用(3)1年 青山学院大学教授
坪田 耕三
小学校社会科の授業のあり方(4)5年、水産業・工業 東北福祉大学特任教授
有田 和正
小学校理科の授業づくり(7)3年A「風やゴムの働き」 文部科学省教科調査官
村山哲哉
小学校英語活動のポイント(43)PDCAサイクルによる「外国語活動」の運営の在り方と方法-その23-Hi,friends!1の第2課I`m happy. 国立教育政策研究所名誉所員
渡邉 寛治
アドラー心理学で教師力を高めよう(7)非社会的な行動に対応する 埼玉県幸手市立八代小学校長
武正光江
教育統計・測定入門(8)母平均の推定-推測統計の基礎 法政大学教授
服部 環
学校の法律相談(19)テレビ番組の録画使用は認められるか 国立教育政策研究所名誉所員
菱村 幸彦
だんわしつ/歌のこと 歌手
小林貴子
ひとりごと/文句とお節介 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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