月刊誌 指導と評価

2012年 3月号
  1. 2012年 3月号 Vol.58-3 No.687  定価:450円
特集
新教育課程を実施してみて
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特集

小学校の新学習指導要領完全実施一年目の実施状況から見える課題

東京都新宿区立津久戸小学校長  堀竹 充

★経験の浅い教員の増加という、学校の人的構成の変化により、新学習指導要領の趣旨を生かした指導の推進に全力で当たることがむずかしい状況も出ている。特に、年間指導計画の作成・改善、評価基準の作成を担う人材の不足から、十分な対応ができていないことが課題となっている。
★時間数の増加への対応はできているが、そのことにより教員の研修機会の減少、共通理解を図る機会の減少など新たな問題も起きている。
★今年度顕在化してきた課題の解決には、適切な実態把握と、その結果に基づく改善方針と計画的な取組が不可欠である。

言語活動の充実-改善の考え方とポイント

京都女子大学教授  井上一郎

★言語活動は、新教育課程の中で重視されたが、充実するまでには至っていない。そのような結果を招く理由として、求められている「言語活動」の概念が曖昧であったり、それ故に具体的な取組の方策が効果的でなかったりすることが起因していると考えられる。言語活動は、各教科等の基礎・基本の内容の一部であり、各教科等を貫くものであることを強く自覚し、教育課程全体の中で明確に位置付ける。それとともに、取り上げるべき言語表現の様式やそれを実現させる読解・表現行為のプロセスに応じた効果的な単元展開と、思考力や記述力を高める教材開発を行わなければならない。

理数教育の充実-算数科の新教育課程実施元年をふり返って

青山学院大学教授  坪田 耕三

★新教育課程実施元年を振り返って、現場の授業にどのような変化が生じたか。どのような授業改善が測られようとしているか。教科書はかなり分厚くなり充実したが、「教科書の計算練習が従来よりずっと増えた、これを一年間の授業の中で果たして終えることができるのか」といった声も聞く。説明を上手にさせるように、わさわざ「話型」を作って子どもにこれに従った話をさせる授業も多い。だからといって、算数の内容にあまりふれないままであっては問題である。このように、現場では様々な悩みが生じているのが現状である。
★これらを、「算数科改訂の基本方針」から、次の5点に分けて考察してみたい。①「活用」することについて、②「スパイラル」による教育課程の編成について、③数学的な思考力・表現力の育成について、④学ぶ意欲を高めることについて、⑤算数的活動の充実について、である。
★さらに、「考える力」の育成について、帰納的な考え、類推的な考え、演繹的な考えの三つについてもこれからの算数科で力を入れたいところであるので言及した。

いま、理科の授業で本当に大切にしたいこと

筑波大学附属小学校教諭  露木 和男

★新学習指導要領の精神、それは子どもが生き生きと追究する授業の実現を目指すことである。その基本は、子どもの問題解決の授業にある。子どもが「問い」をもち、自ら追究の歩みを始めることが、学習指導要領の精神に則ることである。その要諦は、「前提」「矛盾」「再構成」の三つである。今年度さまざまな学校で授業を拝見したことをもとにこのことを提案したい。

伝統や文化に親しむ態度を育てる授業づくり~探究的な活動の質の向上~

広島県福山市立樹徳小学校長  長谷川眞澄

★伝統文化教育を教育課程の中にどのように位置づけるか。教科・領域との関連を図る中で、総合的な学習の時間がより探求的な活動になるよう伝統文化教育の全体計画や学年計画を作成し、授業改善を行った。
★伝統や文化に親しむ態度を育てる授業をどのように進めるか。教科・領域を関連させ系統的に取り組んだ。目標は、教科・領域での目標であることを意識して進めた。また、探究的な活動とするための学習過程と体験活動・言語活動、学び合いの充実を図った。

道徳教育の充実

さいたま市立蓮沼小学校長  須郷恵子

★学校における道徳教育は、学習指導要領において「道徳の時間を要(かなめ)として学校の教育活動全体を通じて行うものである」(総則)と示され、新しく「道徳教育推進教師」(第3章道徳の第3)の役割も明記された。
★学校の特色を表し見て分かり活用できる「道徳教育全体計画」の作成、「道徳教育推進教師」への期待、児童(生徒)が道徳的価値を自覚し自己の(人間としての)生き方を考える「道徳の時間」改善に向けた動きについて述べる。

体験活動の充実

茨城県大子町教育委員会指導主事  清水洋太郎

★「体験活動の充実」の教育的意義:「体験活動の充実」は、これまでも強く求められてきた。「体験活動の充実」を通して、今回は子どもたちの社会性や豊かな人間性を育むことが求められた。
★これまでの体験活動を振り返り活かす視点が大切である。学校教育活動全体の中における体験活動の意義を確かめることが必要である。
★「体験活動の充実」には、ねらいを明確にもち、計画的・系統的な指導を意識することが大切である。発信と受信により新たな視野を得るようにすることが必要である。

小学校外国語活動

東京都葛飾区教育委員会指導主事  葛西利昭


★小学校外国語活動が始まり、各学校では、「コミュニケーション能力の素地の育成」に向けた取組が行われている。しかしながら、スキルの定着を目指した活動が一部に見られ、またゲームをしたり歌を歌ったりする取組で、外国語活動本来のねらいを達成できるのか。ねらいを達成するためには、児童の実態を踏まえ「評価規準」を設定し、単元を構成し、PDCAサイクルを確立することで、外国語活動を実践していくことが肝要である。

連載

学校で取り組む特別支援教育(6)チーム支援 東京成徳大学教授
田村節子
これからの小学校国語の授業づくり(12)「読むこと」6年生-文学 筑波大学附属小学校教諭
桂  聖
坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(69)-小学校6年、線対称な図形 青山学院大学教授
坪田 耕三
新年度からの中学校社会科地理的分野の授業づくり(3)パフォーマンス評価を取り入れた授業(北アメリカ州と関東地方) 十文字学園女子大学准教授
三藤あさみ
第5回全国学力調査の問題について(1)算数・数学 青山学院大学教授
坪田 耕三
思考力・判断力・表現力を育てるパフォーマンス課題(6)理科におけるパフォーマンス課題と「本質的な問い」 京都大学大学院助教
中池竜一
小学校英語活動のポイント(35)PDCAサイクルによる「外国語活動」の運営の在り方と方法-その15(指導の基本5) 国立教育政策研究所名誉所員
渡邉 寛治
学校の法律相談(12)通知表の記載ミスの責任 国立教育政策研究所名誉所員
菱村 幸彦
標準検査を活用した教育実践(14)学力検査結果を活かして「教師が自らの指導を振り返り」学力保障をめざした長野市の取組-NRT結果の分析・振り返りをもとにして、複数年かけ検査結果を活かす指導改善を進めた研究実践 前長野市教育センター所長
宮下 袈裟登
だんわしつ/ICT教育の進展とそれを活用した授業実践 東京都北区立西ヶ原小学校副校長
野間俊彦
ひとりごと/目的 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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