月刊誌 指導と評価

2013年 3月号
  1. 2013年 3月号 Vol.59-3 No.699  定価:450円
特集
いまこそ特活、道徳、総合
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特集

いまこそ特活、道徳、総合

教育調査研究所研究部長  寺崎千秋

★平成二五年度は、教育課程を改訂してから実質五年目であり、特別活動、道徳、総合的な学習は完全実施五年目である。次期改訂までの中間点として「生きる力」の実現状況を評価し見直しをする時である。
★教育課程の見直しの視点として特別活動、道徳,総合的な学習を取り上げ、「生きる力」を育む上での意義を再確認する。
★特別活動、道徳、総合的な学習の指導を確実に行うためには、教師力の見直しと授業力の更新が必要である。
★以上の取組を意図的、計画的、組織的に行うためには、校長は認識をあらため、リーダーシップを発揮することが必要である。 

特別活動はこうしたい

福岡教育大学・九州栄養福祉大学非常勤講師(元福岡市立長尾中学校校長)  岸川 央

★特別活動では、「望ましい人間関係をいかにつくるか」が最も重要である。
★学級集団づくりのためには、構成的グループエンカウンターやソーシャルスキルトレーニング等を取り入れた学級活動が有効である。
★生徒会活動の活性化は、生徒会役員が中心となった学校が一つになる取組の設定にかかっている。
★生徒が、保護者と共に達成感を味わうことができる学校行事の仕組み方が重要である。

道徳教育が目指すべき方向

千葉大学教授  上杉 賢士

★道徳の学習は集団で行うことが暗黙の了解事項になっている。この特質を最大限に生かすための理論的基盤は、「構成主義パラダイム」にある。構成主義とは、「収集した知識や情報を自分なりに再構成することが学びである」と説く哲学である。共に学ぶ学習において、お互いが情報源となり、考え方や価値観を提示し合うことによって、より深い学びが期待できる。そして、道徳のこの特質を生かした学びは、他の教科や領域にまで敷衍され、現下の多様な教育課題に十分応えうるものである。

総合的な学習の特質をいまこそ再確認しよう

上智大学教授  奈須 正裕

★科学の教育(教科)と生活の教育(特活、道徳、総合)がそれぞれに充実するとともに、「知の総合化」によって互恵的に補い合い高め合うのが、現行教育課程の基本構造である。
★総合的な学習は三つの生活実践課題をめぐり、子どもが主体となって現に生活を創造、変革する営みを通して「自己の生き方を考えることができる」ように育て上げていく学びと実践の場である。

生徒指導の充実と確かな学力の育成

高知県黒潮町立大方中学校長  岡崎哲也

★生徒指導における、2次的支援を組織化し個別の支援を充実させることと、1次的支援としての取組を充実させることで、意欲的に学習に取り組める生徒が育成できると考えた。
★1次的支援の取組として、ガイダンスカリキュラムを実施することで、人間形成に必要な知識とスキルの育成を授業として取り組むことにより、個人のスキルも高まり、学級・学年の中で、きまりや人間関係づくり、授業や行事など、よりよいものをめざそうとする集団として成長するであろうと期待した。言語活動も充実し、表現力が高まりより確かな学力につながると考えた。
★ガイダンスカリキュラムを実施するにあたって、教員の研修を行うことで、教員自身も、主体的にさまざまな教育活動に取り組もうとする姿勢になると考えた。

特活、道徳、総合で震災後のケアを-震災で被災した子どもたちを、どう支援してきたか

仙台市立沖野東小学校教諭  八巻 寛治

★心に傷を受けた子どもの心のケアが重要になっている。自然災害や事件・事故に遭遇した後に求められる“子どもの心のケア”を、東日本大震災を経験した筆者が、被災地の状況と経過、今後の支援・援助者にとって必要なものを模索し、子どもの心のケア(不安や悩みの解消)を考えるきっかけにしたいと思う。
★特に、阪神淡路大震災が起きた数年後に、子どもたちの心が荒れ、不適応を起こしたり、衝動的な言動をする児童生徒が増えたとの報告事例がある。今後学校現場で求められることになるる支援・援助の目安は何か、現行の道徳や特別活動で取り組める不安や悩みの解消とは何かの有効性を確認したい。

イギリスのCitizenship Education-イギリスでの特活・道徳・総合学習を合わせたような時間の紹介

京都教育大学教授  水山光春

★英国におけるシティズンシップ教育は、現代民主主義社会を支える能動的な市民を育成する教育で、現在、中等学校において必修教科となっている。その実態は、ナショナルカリキュラムに学習内容が定められていて評価・評定があることを除いては、社会的・道徳的責任を大切にする意味では道徳的であり、生徒会活動や学校行事を活用する意味では特別活動的であり、積極的に地域と関わろうとする意味では総合学習的である。しかし、その概念の幅広さから、成果が明確でないという批判も受けており、二〇一四年には見直されることになっている。

連載

新学習指導要領で教科調査官が求める授業(9)中学校国語 文部科学省教科調査官
冨山哲也
文部科学省視学官
杉田 洋
学級ソ-シャルスキルを子どもに育てる(12)陥りやすい落とし穴とその対応 都留文科大学特任教授
品田 笑子
これからの評価を考える(11)評価の過去と未来 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
平成24年全国学力調査結果の考察(9)国際学力調査と比較して考察する-中学校国語 宇都宮大学准教授
飯田 和明
TIMSS2011算数・数学結果の分析と考察 国立教育政策研究所TIMSS研究代表
銀島 文
これからの小学校国語の授業づくり(24)書くこと、1年 筑波大学附属小学校教諭
白石 範孝
小学校社会科の授業のあり方(6)3年、町たんけん 東北福祉大学特任教授
有田 和正
小学校算数の発展・応用を学ぶ授業をつくる(7)2年 青山学院大学教授
坪田 耕三
小学校理科の授業づくり(12)3年B(1)「昆虫と植物」 文部科学省教科調査官
村山哲哉
小学校英語活動のポイント(45)小・中連携「外国語教育」の教育課程とその運営上の留意事項について 国立教育政策研究所名誉所員
渡邉 寛治
アドラー心理学で教師力を高めよう!/賞罰に代わるアドラー心理学 ヒューマン・ギルド代表
岩井俊憲
教育測定・統計入門(12)分散と平均に関する検定 法政大学教授
服部 環
学校の法律相談(23)教員の服装を指示できるか 国立教育政策研究所名誉所員
菱村 幸彦
だんわしつ/テストは教育改革の基礎 (財)応用教育研究所所長
辰野 千壽
ひとりごと/吸殻拾い 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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