月刊誌 指導と評価

2013年 4月号
  1. 2013年 4月号 Vol.59-4 No.700  定価:450円
特集
指導と評価の一体化をめざす
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特集

指導と評価の一体化をめざす

教育評価総合研究所代表理事  鈴木秀幸

★「指導と評価の一体化」とは、評価の結果を指導の改善に生かす評価を行うことであり、形成的評価の必要性を述べたものである。
★研究すべきことは、課題の在り方、フィードバックの仕方、評価基準の理解、自己評価を指導過程にどう組み込むかにある。
★近年の形成的評価は、高次の技能の育成を図る目的で行われている。

中学校国語-学習状況をとらえ、子どもの読みをフィードフォワードする評価と指導

お茶の水女子大学附属中学校教諭  宗我部 義則

★評価とは、生徒の学習状況をAかCかなどと判断することではない。彼らの学びを現状より一歩でも高みへと誘うことだ。
★そのために、学習途中での評価では、「学級集団全体の読みの傾向をとらえること」「個々の読みの状況(文章中のどの場面をどの言葉を手がかりに、どう解釈しているか)の2点が大切になるだろう。そしてこれらをとらえた上で、それによって以降の授業での発問や指示、授業の展開を変えていくことである。
★「評価を指導に生かす」というのも評価結果を生徒たちにフィードバックするのでなく、すべての生徒の学習をもう一歩高い状況へ、もっと面白いと思う〈読み〉へとフィードフォワードしていくことだと考える。

小学校算数瞬時の評価や一時間の評価を指導に生かす授業の工夫

新潟市立鎧郷小学校教諭  神子島 強

★導入では自分の考えを述べさせる質問をし、全員を同じ土俵に上げる。そして、課題解決への見通しを児童の反応と表情から把握する。
★「瞬時の評価」をするために、座席表を効果的に用いてすばやく全体の状況を把握することで、その後の個別支援につなげる。
★分からないときは「操作活動」をさせ、実感的に理解できるようにすることで、低位の児童でも解決への見通しをもつことができる。
★授業の終末に「振り返り」の時間を設けて自己評価させることで、その時間の習得状況を把握するとともに、次時の授業の見つめ直しや指導の在り方を考える。

中学校社会科-「学び合う学び」における指導と評価

愛知県小牧市立小牧中学校教諭  梶田雅登

★形成的評価を充実させるためには、生徒の意見・反応・表情等に対する教師の評価(教師評価)だけでなく、その意見に対する他の生徒の意見・反応・表情(相互評価)を教師が指導に生かすことで、指導と評価の一体化を図ることができる。
★とくに「学び合い」においては、グループ内での個の様子をつかむことが大切である。さらに教師のすべきことは、グループ内で他とつながっていない生徒と他の生徒をつなげることである。

指導と評価を一体化した授業づくり小学校理科-目標像をもち評定・助言を繰り返すことで子どもを伸ばす

京都文教大学准教授  大前暁政

★「評定」と「助言」を取り入れることで、子どもを伸ばす授業を紹介する。
★「評定」によって、子どもの「達成度」を示すことができる。
★「助言」によって、子どもの「努力の方向」を示すことができる。
★その結果、子どもはやる気になり、知識技能を身につけることができる。
★「評定・助言」することが、そのまま「指導」になっている授業である。
★ただし、このような「指導と評価が一体化した授業」をするためには、「単元後の目標像」をもつことが大切だ。しかも、高い目標像を設定するのである。そうすることで、授業は自然と充実していく。

生徒を生かすバイタルサイン-瞬時の評価から一時間の評価まで 

筑波大学附属中学校教諭  蒔田 守

★「瞬時の評価」を可能にするためには、生徒の平時の状態を知り、日常的にきちんとコントロールすることが肝要である。その平時の振れ幅から逸脱したとき、教師は生徒に瞬時のフィードバックを行う必要がある。
★毎時間行う授業開始の挨拶前の何気ない時間にも教師は多くの事柄を観察し、さまざまな観点から生徒の状態を診断できる。
★一時間の評価を次の時間に生かすためには、おわりの挨拶に現れる生徒の評価や係生徒のつぶやきが大きなヒントになる。具体的な改善方法は、かつての自分の授業ノートや同僚のワークシートを見直すことで得られる。

小学校音楽-出口(評価)を考えると入口(ねらい)と通り道(指導)が決まる

福島県鮫川村立青生野小学校教頭  吉川武彦

★授業中の瞬時の評価と指導、題材の中での評価と指導には、「記録に残す評価」と「指導に生かす評価」という考え方を整理しておくことが大切である。
★瞬時に子どもの何を見て評価し、どんなことを即座に指導するか、これは、見る視点を定め、子どものちょっとした動きや表情を見落とさないことが大切である。
★ワークシートは指導にも生かすことができ、記録にも残すことができる。ただし、授業の意図と絡めて、何を書かせるか、何を残すかが大切である。
★音楽科で指導と評価を結ぶものは、ずばり〔共通事項〕である。指導事項と関連させながら、焦点化したねらいと評価規準を設定することが重要である。

小学校図画工作科の授業づくり

東京学芸大学准教授  西村 徳行

★新しい学習指導要領の特徴は、子どもの学びのプロセスに働く力を、より具体的な姿として整理し、示されている点にある。図画工作科の授業づくりにおいては、表現や鑑賞の活動を通して、子どもたちが自分自身の感覚や感じ方、表現の思いなどを十分に働かせることを重視しながら、そこで育てたい資質や能力を明らかにし、それらが学習の過程でどのように働くのかを検討しながら、それぞれの場に応じた授業として、具現化していくことが求められている。本論では、「造形の秩序」に着目した実践事例をもとに、指導と評価を一体化させた、図画工作科の授業づくりについて述べる。

体育授業の「指導と評価の一体化」をめざして

筑波大学附属小学校教諭  平川 譲

★評価とは評定やそのための資料集めとイコールで結ばれるものではない。評定も含むが、そのほとんどが指導に直結するもので、体育授業の子どもへの声かけ、賞賛はまさに指導と評価が一体化していると言える。教師の経験値が上がってきたならば、本人の評価(指導)だけでなく、教師の価値観を伝えることと、周囲への影響も意識した評価活動ができるといいだろう。
★その場で即時的に評価できないデータ処理が必要なものは、持ち帰り評価して次時の指導に生かす。データをもとにクラスの伸びを評価・賞賛したり、個人の問題点や周囲のかかわりを指導する。

中学校技術・家庭-計測・制御における技能観点に着目した形成的評価

新潟県上越市立春日中学校教諭  水野頌之助

★私は、形成的評価を実現する四つの要素のうち、「生徒と評価規準を共有すること」では、図表等を工夫した生徒用の評価規準表を提示し、その表について生徒と話し合う場面を実施した。生徒は、これからの活動への見通しをもち、学習に意欲的に取り組む姿が見られた。
★また「自己評価と相互評価」については、自己評価を毎時間の最後にさせるだけでなく、製作前の構想段階で相互評価を行わせた。構想段階での相互評価場面の設定は、つくりたいものに必要な技能を発揮させることができた。

連載

特別支援教育のさらなる充実を求めて(1)学習障害の特徴と支援 東京学芸大学教授
小池敏英
小中学校国語の授業づくり(1)小学校「読むこと」 お茶の水女子大学附属小学校教諭
片山守道
小中学校外国語教育のあり方(1)新学習指導要領での外国語教育の課題 文部科学省初等中等教育局教科調査官
直山木綿子
どうする?小学校音楽の授業(1)小学校音楽科の現状と問題点 筑波大学附属小学校教諭
高倉 弘光
教材で子どもが輝く小学校社会科の授業(1)6年、古代の中国との交流から何が見えるか?わが国の国名のおこりとその意味 東北福祉大学特任教授
有田 和正
小学校算数の発展・応用を学ぶ授業をつくる(8)2年 青山学院大学教授
坪田 耕三
小学校理科の授業づくり(13)4年B(2)「季節と生物」 文部科学省教科調査官
村山哲哉
教育測定・統計入門(13)相関係数に関する検定(その1) 法政大学教授
服部 環
学校の法律問題(1)学校、法、社会 日本女子大学教授
坂田 仰
だんわしつ/図書室バンド ミュージシャン
深田悦之
ひとりごと/お化け屋敷 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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