月刊誌 指導と評価

2015年 8月号
  1. 2015年 8月号 Vol.61-8 No.728  定価:450円
特集
学力向上と授業づくり
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特集

学力とは-学力の質的向上と評価の役割

大阪教育大学名誉教授  北尾 倫彦

★思考重視の動きによって知識が軽視されることを危惧する。構造化し活性化した知識は思考の源泉なのである。
★問題解決力や創造力のような主体的思考力を伸ばすには、その核となる仮説検証法的な方略や拡散と収斂の発想などを学ばせる必要がある。
★情報化し価値観の多様化した社会では、自律性と協働性が欠かせない。学習態度としてこれらを重視したい。
★実践面では評価が改革の鍵となる。これらのねらいを具体化した評価規準の作成、評価技法の組合せと新しいテストの開発が課題になるであろう。

学力向上とは

京都大学准教授  石井英真

★テストで測れるもの(測定学力)は教える側が願い意図したもの(理念学力)の一部であり、めざすべき学力の中身が明確化され、その妥当性が検討されないとき、「学力向上」は「テスト(見えやすい学力)のための教育」に陥る。
★単元末や学期の節目で「使える」レベルの学びの機会(「真正の学習」)を意識的に保障し、パフォーマンス評価で知的・社会的能力の長期的な育ちを評価していく。
★目標の明確化は、ドラマ性や創造性をもった展開のある授業を導くものであるべきで、それによってこそ真に発展性のある学力が形成される。

学力向上と授業づくり

京都文教大学准教授  大前暁政

★活用や探究の力をつけるには、例えば、協同学習、探究学習、問題解決学習などの、子ども主体の学習形態が効果的である。しかし、このような子ども主体の学習を進めようと思えば、授業づくりと学級づくりの両面で、前提条件を満たしておく必要が出てくる。
★つまり、「学級づくり」と「授業づくり」は連動しており、それぞれに下から積み上げていく段階があることを意識しておく必要がある。さらに、子ども主体の学習を行う際には、「意欲・関心・態度」「思考・表現」「技能」「知識・理解」の四観点の評価だけでなく、「学習の進め方の理解」や、「学習活動への貢献度」などの別観点での評価も必要になる。

確かなことばの力の育成~判断・評価の視点を取り入れた授業を通して~

広島県三次市立十日市小学校指導教諭  大澤八千枝

★「学力」とは、基礎・基本の力を土台とし、自己実現するための「ことばの力」であるととらえる。
★「ことばの力」を育成するためには、さまざまな情報に対して、その妥当性を吟味・評価し、自分の考えを作り上げる思考過程が重要である。
★問題解決的な学習展開を行い、ねらいを明確にした言語活動を設定することで、児童の思考を促し、自己解決できるという実感を伴った学習経験を味わわせることが必要である。

学力向上のための授業はどうすればよいか-小学校算数

秋田大学名誉教授  湊 三郎

★算数の学力なるものを授業を通して語ることにし、題材に異分母分数の加法を取り上げ、秋田県で日常行われているシート学習に従い、教科書を教材のソースとしてこの方式の学習具としての学習シートの簡易な開発法と、それに基づく授業実践を例示した。
★半世紀の経験をもつ「シート学習方式」は、今日の学習指導要領が標榜する学力観や望ましいとされる学習法を本来的に内包し、児童の学習を活動的・主体的にするにとどまらず、小規模なカリキュラム開発を教師に取り組ませることで教職を専門職化させ、教師に主体性を賦与した。

よりよい社会(持続可能な社会)を構築することをめざした中学校社会科の学習指導

東京都練馬区立大泉西中学校教諭  池下 誠

★これからの社会は、これまで以上にグローバル化が進み、価値観の異なる人々が、限られた世界の中で常に共存していかなければならない先の見えない社会になっていくことが予想される。このような中で、よりよい社会(持続可能な社会)を構築していくためには、生徒一人一人の問題解決的な能力を高めるとともに、異なる価値観をもった人々の中で合意形成を図るような経験を積むことが、ますます重要になってくる。そのため、中学校社会科の学習指導は、ESDの視点を取り入れるとともに、問題解決的な能力を育成することや合意形成を図るような学習指導を行うことが大切である。

学力向上のための授業はどうすればよいか-中学校理科-

広尾学園中学校・高等学校副校長 元筑波大学附属中学校副校長  角田陸男

★いま必要とされているのは「持続可能な学力」である。
★授業の質を保証するのは「教師力(授業力)」である。
★学力向上を目指す授業でとくに重要なのは「教材研究」である。

対話を通した「思考力」の育成-「育てるカウンセリング」を生かして、個々の考えを広げ深める授業づくり-

香川大学附属小学校指導教諭  西岡由都

★「思考力」を育成するためには、子どもたちどうしが、自分の考えを関わらせ合う対話が有効だと考える。しかし現代の子どもたちは、他者とのかかわりに困難さを覚えていることがうかがえ、思考を深めたり広げたりするような対話が実現しにくい状況にある。
★本校では、このような子どもたちに、対話活動を保障すべく、育てるカウンセリングを生かした働きかけを試みている。子どもの実態を把握し、子どもどうしがよりよく関われるよう支援をしながら、いまその育成がより強く求められている「思考力」を高める授業づくりを行っている。

連載

チーム援助で特別支援教育のさらなる充実を(5)養護教諭が行うチーム援助-コーディネーターとしての活動とは 宮城大学准教授
相樂直子
「学校づくり力」アップセミナー(5)生徒指導力が高まる学校づくり 岐阜聖徳学園大学教授
玉置 崇
QUで学級集団づくりと学力向上を図る(5)東京都狛江市の取組④今後の課題 早稲田大学教授
河村 茂雄
学校の法律問題(29)学校事故と保護者の責任 日本女子大学教授
坂田 仰
目的別文章の書き方(5)説明文の書き方 早稲田大学国際学術院教授
佐渡島紗織
感度を高める言葉の教育(17)有標と無標 早稲田大学国際学術院教授
佐渡島紗織
道徳をこれからどう指導したらよいか(5)船員が参加できる授業展開の模索 愛知県豊橋市立嵩山小学校教諭
坂口 肇
小学校算数の発展・応用を学ぶ授業をつくる(36)6年 青山学院大学教授
坪田 耕三
新しい教育評価の動向/M・プレーストリー、C・シンネマ「カリキュラム構成原理に関する論争」 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
平成27年度全国学力調査問題の分析と指導への示唆(2)小学校国語 東京家政大学客員教授
大越 和孝
平成27年度全国学力調査問題の分析と指導への示唆(2)中学校数学 横浜国立大学准教授
両角 達男
教育測定・統計入門(40)独立成分分析 法政大学教授
服部 環
テキヤの女 日本児童文芸家協会会員・東北文教大学講師
高橋まゆみ
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