月刊誌 指導と評価

2016年 7月号
  1. 2016年 7月号 Vol.62-7  No.739  定価:450円
特集
いじめ、暴力問題
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特集

いじめ被害を受けた児童生徒の早期発見と対応-いじめ被害者の被援助志向性を考慮した援助とはー

大阪教育大学教授  水野治久

★いじめは日本だけの問題ではなく、欧州や米国でも最優先の教育課題である。したがって、学校でいじめゼロを目指すことはむずかしい。いじめゼロを目指すと教師がいじめの問題を他の教師に相談できなくなる。いじめ被害を受ける児童・生徒は助けを求めないことがある。そのため、教師は、子どもの変化を見抜く視点をもつことが大事である。遅刻や欠席、不登校や成績の変化などに敏感でありたい。教師は、子どもが助けを求めやすい学級雰囲気を醸成することが大事である。また児童・生徒が被害を訴えきたら、しっかりと子どもの話を受け止めたい。

学級崩壊回復への取組

前新潟県柏崎市立比角小学校長  若林 勝

★教育委員会の要請で、A小学校に学級崩壊回復の目的で平成28年1~3月の3か月間勤務した。3年生の学級で直接子どもに関わったり、担任を支援したりした。その際河村茂雄著『学級崩壊回復マニュアル』を参考にした。まず、ルールの回復と子どもどうしの関係づくりを大切にした。さらに、河村氏は「心の教育」の実践を強調している。そこで、道徳教育の手法を活用して落ち着きがない児童自身の気付きや学級としての教育力を高め、一人一人の子どもの内面から崩れた人間関係の修復を目指した。

暴力への対応(生徒間)

会津大学教授兼文化研究センター長  苅間澤勇人

★いじめや暴力等の未然防止策を手厚くしても、それらは起こる。したがって、早期に察知して、重大事案に発展させないことが大切である。いじめや暴力等を察知するためには、見つけようして見ることが必要である。いじめや暴力等を目撃したら、その場でしつこく介入する。察知した後は、保護者の協力を得て被害者と加害者に指導と援助を行う。学校に不信感をもつ保護者には、不信感を取り払いながら信頼関係を築いて対応する。
★いじめや暴力の防止対策は未然防止や発生後の早期対応の取組等を総合的に行うことが大切である。

暴力への対応(対教師)

神奈川県逗子市教育委員会教育部長  石黒 康夫

★対教師暴力は、学校の最大級の危機。対教師暴力が起きたら、危機(対教師暴力)の発生・認知期→危機への対応・収束期(解決)→通常生活への回復期(復帰・再発防止)の手順でクライシスマネジメントをする。
★事態の収拾、事情の把握、子どもへの指導、家庭への連絡までを事件が発生した日のうちに行う。
★保護者は、教師とともに子どもを育てるパートナーであるという意識をもつ。
★生徒指導体制に課題があると考え、自校の体制を見直す。学校全体で予防的な生徒指導に取り組むべきである。

保護者対応

高知市立城西中学校長  吉本恭子

★保護者対応の基本は、人として子どもを思う気持ちを大切にした対応をするというごく当たり前のことである。ただ、「とにかく早く解決させたい」とか「この保護者は苦手だ」という教師の利己的な思いが見え隠れするとこじれてしまう。
★すべては信頼関係のうえになりたっているので、事が起こってから対応するという姿勢ではなく、つね日ごろから保護者と連絡をとり合い、話ができる関係をつくっておくことが大切である。
★子どもや保護者の批判が飛び交っているような職員室では、誠意をもって対応するという姿勢は望めない。非言語で伝わるものについても、日ごろから意識できるようにしたい。

発達促進的生徒指導によるいじめ・暴力行為の防止

東京理科大学教授  八並 光俊

★いじめ・暴力行為の実態から、課題解決的・事後対応的な(治す)生徒指導の困難さと限界は明白である。人権教育や非暴力主義の徹底、言語的コミュニケーション能力や人間関係形成能力の育成を、小学校段階から系統的、計画的、継続的に行う必要がある。そのためには、児童生徒の個性の伸長や社会性の育成に重点を置いた発達促進的(育てる)生徒指導の展開が鍵となる。発達促進的生徒指導を支える理論は、ガイダンスカウンセリングである。また、方法としては、ガイダンスカリキュラム=発達促進的生徒指導カリキュラムが主となる。

法律から見たいじめ問題、暴力問題―いじめ防止対策推進法をこう活かす        

弁護士  山田由紀子

★「いじめ防止対策推進法」の要は、国・地方公共団体・学校が策定・設置する<いじめ防止基本方針>と<いじめ対策のための組織>である。
★とくに学校の組織は、児童生徒の主体的な取組を含む多様な取組を年間計画として実行し検証する、情報を収集し共有する、いじめの疑いがあれば緊急会議を開いて迅速な対処をするなど、いじめ対策の中核とならなければならない。

連載

学校力・教師力アップセミナー(3)子どもの関係づくりを進める 公立学校スクールカウンセラー(元富山県南砺市立福光中部小学校校長)
水上 和夫
QUを活用した学級づくりと個別支援(4)QUを使った集団のアセスメント 会津大学教授兼文化研究センター長
苅間澤勇人
特別支援教育のこれから(4)校内体制整備 東京都調布市立飛田給小学校長
山中ともえ
これからの教育評価(4)形成的評価の新しい考え方 和歌山大学教授
二宮衆一
感度を高める言葉の教育(28)混成語の作り方 国立国語研究所教授
石黒  圭
小・中学校国語の「書くこと」(3)小学3年:全体の中で中心を考えて書く 筑波大学附属小学校教諭
青木 伸生
先人に学ぶ「数学的な考え方」(3)島田茂編著『算数・数学科のオープンエンドアプローチ-授業改善への新しい提案-』より 青山学院大学教授
坪田 耕三
理科におけるアクティブ・ラーニング(3)課題選択学習・課題設定学習2-①中学2年:物質のすがた 創価大学教職大学院准教授
大関 健道
これからの英語教育をどうするか(3)小学校中学年『外国語活動』 筑波大学附属小学校教諭
荒井和枝
深い学びとメタ認知を促す「教えて考えさせる授業」(1)「教えて考えさせる授業」とその展開状況 東京大学名誉教授・帝京大学中学校高等学校校長
市川 伸一
シティズンシップ教育(4)ドイツの政治教育 早稲田大学教授
近藤孝弘
教育測定・統計入門(50)高次因子モデルと双因子モデル 法政大学教授
服部 環
だんわしつ/西東京市新任教員公務災害事件東京地裁判決のご報告 弁護士
川人 博
弁護士
平山紋子
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