月刊誌 指導と評価

2021年 8月号
  1. 2021年 8月号 vol.67-8 No.800  定価:450円
特集
❶読解力を育てる❷二足のわらじ
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特集

巻頭言/二足のわらじ 教員と研究者

 

特集➊読解力を育てる/読みのプロセスと読解方略の指導-心理学の視点から

東京学芸大学准教授  犬塚美輪

★説明文読解の最終目標は、内容理解に読み手の知識を関連づけた「状況モデル」の構築であり、そのためには読解方略の効果的な利用が必要となる。
★読解方略の獲得には、「方略を知らない」「自発的に使えない」「うまく使えない」という三つの壁がある。
★国語に限らずさまざまな教科や場面で方略を用いる練習をしながら、児童生徒に読む力を育む必要がある。

特集➊読解力を育てる/読む力を高めるための3つの訓練-国際社会で生き抜くために

つくば言語技術教育研究所所長・桃山学院教育大学特別客員教授  三森ゆりか

★読む力を高めるためには、児童生徒の読書量に任せるのみでは不十分であり、読み取った結果を選択や穴埋め式の解答形式で測ることも不適切である。日本国内のみならず国際的にも通用する読みの力を獲得させるには、欧米先進国と同様三つの訓練、すなわち大量に読ませること、読むスキルの指導、そして読むことと連動させた書くスキルの指導が必要である。国際基準に則った指導方法とカリキュラムの整備が急務である。

特集➊読解力を育てる/日本語教育における読解力の伸ばし方-留学生の読解教育

国立国語研究所教授  石黒  圭

★留学生の読解教育には、語彙力・文法力を伸ばして語学的な側面を強化する方法と、文章の話題を見抜いて内容の知識に引きつけて理解を楽にする方法がある。そのいずれにおいても、文章を「読む」ことは「書く」ことに比べ、言葉の意味さえわかればよい点で負担の軽い処理である。そこで教える内容を必要最小限に留め、母語でできる能力を日本語でもできるようにするのが、日本語教育の読解力の伸ばし方である。

特集➊読解力を育てる/英語読解力をどう伸ばすか-中学生・高校生のつまずきから

神奈川大学教授  久保野雅史

★中学校・高等学校の学習指導要領では、「必要な情報を読み取ること」「概要・要点をつかむこと」が、読むことの目標として示されている。しかし、このような活動の手前でつまずく学習者が少なくない。英語という外国語の語彙や構造への習熟が不十分であることが考えられるが、簡単な語彙や構造からなる文章であっても、読解につまずく場合には、母語の読解力とも関連づけて指導する必要がある。

特集➊読解力を育てる/読解力(読書力)の診断とその育成-教研式Reading Testの活用を中心に

放送大学客員准教授  塩谷京子

★学校現場では学校図書館の整備が進み、教科書では読書への誘いに多くの頁が使われているなど、児童生徒の身近に読書をする環境が整ってきている。その一方で、評価と指導の両側面をとらえる動きは以前からあるものの、読書力を診断するフレームワークが確立されていないなど検討すべき問題がある。本稿では、教研式Reading-Testをもとにした調査研究から見えてきたことや、現場での研究データの活用事例を紹介する。

特集❷二足のわらじ/「実践」と「研究」による視野の広がり

大坂大谷大学准教授  四辻伸吾

★学校の教師は子どもたちの成長に向けて強い熱意をもちながらさまざまな実践を行っている。しかし、ともすればそれらの実践は教師の主観的な判断にもとづく取り組みになってしまう可能性がある。そのような主観的な視点とは別に研究的な視点をもつことで、エビデンスを伴った客観性のある実践を行うことが可能となる。「実践」と「研究」の二つの視点をもつことは教師の視点に幅をもたせるとともに、子どもたちの成長を促すことへとつながっていくであろう。

特集❷二足のわらじ/教育研究実践者でありつづけるために

富山県公立学校教諭  小西一博

★「教育研究実践者」になるために、どのような手順を踏めばよいかを筆者の経歴を例にあげながら示しました。まず、在籍校に勤務しながら大学院博士後期課程に進学します。そこで研究テーマに基づいて研鑽して、博士号を取得します。その後、さらに査読つきの各種学会誌に研究成果が掲載されるように研究を継続します。そうすることが、科学者-実践者モデルに依拠した「教育研究実践者」になることにつながると思います。

特集❷二足のわらじ/教師が取り組む研究活動の意義と楽しさ

岡山大学教育学部附属特別支援学校教諭  角原佳介

★大学時代、私は小学校の教員をめざしていた。しかし、一年目に特別支援学校での勤務となり、今年で十二年目となった。特別支援学校に勤める中で、さまざまな子どもや大人との出会いを経験し、研究活動の大切さや面白さに気づいた。
★日々の業務だけでも忙しいとされる学校の教員が「研究活動に取り組む意義とは?」「研究活動の面白さとは?」について、私自身の経験を踏まえながら紹介する。

特集❷二足のわらじ/現職養護教諭から大学教員へ

熊本大学大学院教育学研究科教授  久保昌子

★「養護教諭として勤務していた時代」「勤務しながら大学院生でもあったころ」「大学教員として養成にかかわっている現在」について、養護教諭の職務の歴史的変遷を踏まえながら、研究に関するエピソードを記した。また、現職教員の研究テーマは学校現場にあり、その中での実践を実践報告としてまとめ、雑誌や著作物として発表すること。さらには論文として投稿し、世に出すことが貴重であることを提言する。

特集❷二足のわらじ/よりよい授業を作り上げるために

弘前大学教育学部附属中学校教諭  小野貞治

★自分は授業がへたで、指導力や発想力もない。そのような自分が教育のプロとして、よりよい授業を作り上げるためには研究(努力)するしかない。研究活動は、休みを削り生みの苦しみを味わいながら指導案作りをしたり、振り返りをしたりするが、授業で生徒から「わかった」「数学っておもしろい」という反応があり、力を伸ばせたという喜びがある。さらに、研究組織で尊敬できる先輩や仲間と出会い、人間的な交流で人生もより豊かになっている。

特集❷二足のわらじ/最東端の地から最先端の授業を発信したい

北海道釧路管内公立中学校教諭  樋口達也

★中学校の社会科では、膨大な情報量がある教科書の内容を一単位(五〇分間)で基本見開き一ページで扱います。生徒たちの受験という大きな壁を突破させるため、系統的な知識注入・用語暗記型の授業が展開され、社会科成立時から謳われている民主主義社会の形成者育成が置き去りにされているように感じます。この状況を打破するため、民主主義社会の形成者育成と問題解決学習を結びつけた授業開発研究に取り組んできました。

連載

「教師力」アップセミナー子どもとともに成長する教師をめざして(3)本気には本気で!己に克つ!魂の炎上!-特別活動こそ「魂」を鍛え上げる場- 神奈川県川崎市立宮崎中学校教諭
町田 憲二
実効ある目標準拠評価(2)ペーパーテストの改善-中学校社会科(地理的分野) 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
事実を伝え、意見を述べる 自ら進んで取り組む『書くこと』の指導(5)生徒が生き生きと学ぶ実践(主体的に書く、論理的に書く)② 福井県立藤島高等学校教頭
渡邉久暢
読解力の育成(5)筆者の発想・意図の推論と、自分の考え・論理の形成を促す読みの指導を 兵庫教育大学大学院教授
吉川芳則
いまどきの特別支援教育(5)当事者の視点から支援を考える① NPO法人東京都自閉症協会
綿貫愛子
実践に生かす 学校心理学(3)大学における心理教育的援助サービス 名古屋大学
松本寿弥
名古屋大学
松本真理子
ガイダンスカウンセラーの挑戦(5)教育カウンセリングに知見を活かす-教師の指導をサポートするカウンセラー 公立学校スクールカウンセラー(元富山県南砺市立福光中部小学校校長)
水上 和夫
学びを広げる・学びを深める(4)算数科と理科学習における「気づき」と「関連づけ」に関する一考察-小学五年算数科「単位量あたりの大きさ」と中学一年理科「密度」の学習に着目して- 中部大学現代教育学部現代教育学科特任准教授
橋本美彦
教育統計・測定入門(96)パラメトリック加速モデル 法政大学教授
服部 環
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