月刊誌 指導と評価

2022年 1月号
  1. 2022年 1月号 vol.68-1 No.806  定価:450円
特集
❶学習の改善に生かす評価❷脳科学から見たガイダンスカウンセリング
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特集

特集❶学習の改善に生かす評価/形成的評価と総括的評価

教育評価総合研究所代表理事  鈴木秀幸

★総括的評価は、一定の学習が終了した時点で、その間の学習成果や学習状況を要約して示す。形成的評価は、一定の学習過程の途中で、学習の改善をめざして行われる評価である。
★本稿ではそれぞれの評価に内在する課題とその対処法や、両者の関係について議論する。

特集❶学習の改善に生かす評価/小学校国語科の実践

筑波大学附属小学校教諭  青山由紀

★小学校国語科では、領域ごとの学習過程にそって指導事項が位置づけられている。1年間もしくは2年間の見とおしをもちつつ、それぞれの単元では学習過程の一部に焦点化した指導と評価を行う必要がある。
★本稿では、「読むこと」(精査・解釈)と「書くこと」(考えの形成・記述)を関連づけ、伝統工芸について調べ、その魅力を伝えるリーフレット作りの活動に児童が取り組んだ実践を紹介する。

特集❶学習の改善に生かす評価/小学校音楽科の実践

東京都港区立芝小学校主任教諭  石井ゆきこ

★小学校音楽科では、表現領域・鑑賞領域と〔共通事項〕を関連付けた題材構成を工夫し、中心となる指導事項を明確にして評価の重点化を図る。
★「知識」「技能」は、音楽活動を通して、「思考・判断・表現」と関わらせて習得できるようにする。学習につまずきが見られた場合は、その原因に気付かせ、改善の仕方や練習方法などを具体的に示す。
★「知識・技能」の総括的評価においては、題材ごとに重み付けを変えることも考えられるが、年間を通してバランスよく育成することに留意する。

特集❶学習の改善に生かす評価/中学校数学科の実践

盛岡市立上田中学校副校長  佃 拓生

★数学科の単元設計では、重点となる思考力・判断力・表現力等と、その布石となる意味理解の指導をセットでとらえたい。
★「主体的に学習に取り組む態度」の総括的評価は、「知識・技能」や「思考・判断・表現」とセットで考える。テスト等の結果だけでなく、ふだんの学習で粘り強く考えたり、対話的な学びをとおして自らの学習を調整したりする様子も加味する。

特集❷脳科学から見たガイダンスカウンセリング/脳科学にもとづいた発達支援

川村学園女子大学准教授・早稲田大学応用脳科学研究所招聘研究員  今井正司

★脳機能の発達過渡期である児童の学習と適応を促進するためには、脳機能を鍛えるよりも、脳機能に合わせるアプローチのほうが効果的である。本稿では、脳機能に合わせたアプローチの1つとして「ワーキングメモリ」に負荷をかけない授業展開やコミュニケーションの方法に関する要点を紹介したうえで、それらの取り組みを支える「メタ認知」を促進するような評価の対象とかかわり方についても紹介する。

特集❷脳科学から見たガイダンスカウンセリング/子どもの感情コントロールと脳のしくみ

大河原美以心理療法研究室室長  大河原美以

★感情は、皮質(前頭前野)と皮質下(情動脳)との情報のやりとりにより、年齢相応に自動制御される。しかし皮質下の生理的な不快感情と身体感覚を否定される環境で育つと、防衛反応が作動し、年齢相応の発達が困難になる。
★脳のしくみを知ることをとおして、「子どもに脅威を与え防衛反応を引き起こすことは教育にならないこと」「不快感情には大事な役割があること」を共通理解とすることが、教育現場においてきわめて重要な意味をもつ。

特集❷脳科学から見たガイダンスカウンセリング/脳科学・神経科学の進歩と少年非行

駒沢女子大学教授  須藤 明

★少年非行の要因は複雑である。非行臨床では、生物-心理-社会モデルにもとづいたアセスメントと処遇がなされるが、昨今における脳科学・神経科学の研究により、未成年者や若年成人の発達特性、課題、非行・犯罪との関連性が徐々に明らかになってきた。こうした研究成果は、生物学的決定論を導くものではなく、環境との相互作用の中で、非行リスクが高まる、もしくは低減するのであり、環境面の重要性を改めて認識する必要がある。

特集❷脳科学から見たガイダンスカウンセリング/脳科学から見たマルトリートメント(児童虐待)

福井大学教授  友田明美

★マルトリートメントが頻度や強度を増すと、子どもの脳は部位によって萎縮したり、肥大したりするなど、「物理的」に損傷を受ける。その結果、学習意欲の低下や非行、こころの病に結びつく危険性がある。軽微な場合はそのようなことは起きないが、一度傷を負った脳をもとに戻すことは容易でないのも事実である。小児期のマルトリートメント経験と「傷つく脳」との関連性についての理解がもっと深まれば、子どもに対しての接し方は変わっていくはずである。そのことが、子どもたちにとって未来ある社会を築くことにつながればと願う。「将来を担う子どもたちを社会全体で育て守る」という認識が、広く深く浸透することを願ってやまない。

特集❷脳科学から見たガイダンスカウンセリング/脳科学に基づく親子支援プログラム

文教大学教授・子育て科学アクシス代表  成田奈緒子

★脳の先天的機能異常であるいわゆる発達障害において、遺伝因子とともに重要なのが環境因子である。筆者らは近年エビデンスが増加している「ペアレンティング(親をはじめとする養育者が子どもに与える環境刺激)」の効果に着目し、発達障害のある親子に対して、積極的な親子介入支援を行っている。これは、正しい睡眠から始まる規則正しい生活習慣を確立することの意義を親子で共有し、具体的な方法を指示して実践させることである。これにより、機能不全の家庭改善と、子の問題解決を行う。

「自信」を育てる「自己評価」のすすめ

名古屋大学名誉教授  安彦 忠彦

今月のイチオシ!!実効ある目標準拠評価⑺ペーパーテストの改善:小学校社会-「思考・判断・表現」を中心に

教育評価総合研究所代表理事  鈴木秀幸

連載

「教師力」アップセミナー子どもとともに成長する教師をめざして(8)教科教育-既成概念を撃破するガイダンス! 神奈川県川崎市立宮崎中学校教諭
町田 憲二
事実を伝え、意見を述べる 自ら進んで取り組む「書くこと」の指導(10)単元設計のポイント、国語科としての目標と評価 東京学芸大学附属国際中等教育学校主幹教諭国語科
杉本紀子
読解力の育成(10)意見文と説明文の区別、その日本的事情-「意見」とは何か- 文部科学省初等中等教育局教科書調査官(体育)
渡辺哲司
いまどきの特別支援教育(10)即興の視点から考える発達障害のある子どもたちの学び 神戸大学
赤木和重
ガイダンスカウンセラーの挑戦(10)コロナ禍におけるガイダンスカウンセラーの挑戦 群馬医療福祉大学
川崎夫佐子
小学校英語の総括的評価⑹小学校英語ではコミュニケーション能力を評価しよう 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
教育統計・測定入門(100)調整分析と単純傾斜分析 法政大学教授
服部 環
コラム/人間関係づくりのための基本姿勢-愛情をもって「叱る」① 福岡教育大学・九州栄養福祉大学非常勤講師(元福岡市立長尾中学校校長)
岸川 央
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