データが語る① 学校の課題  河村茂雄著

クラスの人数を減らせば、子供の学力は高まるのだろうか。

子供たちの「学びに向かう力、人間性等」の涵養が促進され、「個別の知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」の獲得が推進されるのだろうか。

コロナ禍の中で、学級人数の適正化の議論が、再び、さかんになっている。

今般、特段に考慮されているのは、流行中の新型コロナウイルス感染症が、現時点で疫学的・病理学的に未知であり、唯一の確実な予防策がソーシャルディスタンシング(密閉・密集・密接の回避)であることから、教室の人口密度を下げることで、感染症予防の効果が望める点だろう。

この状況下、萩生田文科大臣が、教育再生実行会議(2020年7月20日)において、少人数学級の「計画的な整備」に向けて検討していく考えをいち早く示したことなど、現在、学級編制は検討の局面にあるようだ。

10年以上前の本だが、今も学級編制を考える際のヒントが得られる本を紹介したい。

そのことが書かれている第1章全文を、今回、無料で公開する。

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第1章 学力向上(pp.26-50)

① 1学級の人数を減らせば学力は向上するのだろうか

② 小1プロブレム・中1プロブレムには、学級人数を減らすと効果があるか

③ 学級集団の状態によって学力差は生じるか

④ 静かに学習が行われている管理型学級では、学習意欲も高いか

提言 まずは「学級集団」という最重要な学習環境を整える

(河村茂雄著(2007)『データが語る① 学校の課題』図書文化)

この分析は、著者らが2004から2006年にかけて、小中学生約5万人に対して行った、全国的な調査が元になっている。

本稿冒頭の問い(クラスの人数を減らせば、子供の学力は高まるのだろうか)等に対して、本書は「児童生徒の学級生活の満足度」「学力の定着度」「学習意欲」の三つについて、学級規模による比較から検討を行っている。

詳しくはファイルを見て欲しいのだが、学級の人数を減らすことは「学力の定着」「学習意欲」にある程度の関係をもつことがわかった。

また「学級生活の満足度」については、小学校と中学校で様相が異なる。特に中学校では、学級規模が15人以下になると、学級生活満足度、学習意欲ともに低下する。

著者は、公立学校に通う児童生徒がそれぞれに異なる家庭環境を負っていることからも、かれらの学習支援として、学級集団での学びが大きな意味を持つと考えている。

ただし、集団教育には強みと危うさが同居しており、「どんな集団で学ぶか」(集団の質)が、教育効果を左右する大きな要因なのである。

それは、著者の、教員及び教育相談員の経験と、その後の心理学者としての研究成果に裏打ちされた結論であり、説得力がある。

なお、著者自身が「本書のデータも5~10年後には見直しが必要」と明言しており、このデータを、このまま今後の政策決定等のエビデンスに用いることは適切でないだろう。

また、著者の提言は、当時のデータを踏まえた、当時の情勢に対するものであり、現在の状況に対するものではないこともお断りしておく。

学校の課題|教育図書|図書文化
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注:本書(無料公開のPDF含む)を利用する際は、一般的な著作物利用のルールに則してください。図の転載を行いたい場合は、お手数でも編集部まで許諾申請をご連絡ください。

参考文献:教育新聞web、2020年7月20日『少人数学級を「計画的整備」 教育再生実行会議スタート』 https://www.kyobun.co.jp/news/20200720_06/

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