機関誌 指導と評価

2025年 6月号
  1. 2025年 6月号 vol.71-6 No.847  定価:450円
特集
❶認知能力に配慮した教育❷IT時代に本を読む
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特集

❶認知能力に配慮した教育/認知能力のとらえ方-CHC理論を中心に-

法政大学教授  服部 環

★認知能力とは、推論・問題解決・思考などを通して情報を獲得・処理する能力であり、知能と同義としてとらえられます。
★認知能力の構造については、スピアマンの二因子理論から始まり、サーストン、キャッテル、ホーン、キャロルらの研究に基づく様々な理論的立場があります。現在の主流は、キャッテル-ホーン理論とキャロルの三階層理論を統合したCHC理論です。
★CHC理論は、児童生徒の認知特性を理解し効果的な教育支援を行うために開発された認知能力検査の理論的基盤となっており、現在も改良が続けられています。

❶認知能力に配慮した教育/認知能力をとらえる個別式知能検査-WISC-ⅤとKABC-Ⅱを中心に-

北海道教育大学教授  青山 眞二

★認知能力を測定する個別式知能検査は、医学的診断から教育的活用へとその役割を広げています。本稿で解説するWISC-ⅤやKABC-Ⅱなどの検査は、子どもの総合的な知能水準だけでなく、各種指標の「個人内差」から強みと弱みを把握し、認知特性に基づく効果的な指導法を導きだすために活用できます。

❶認知能力に配慮した教育/認知能力に配慮した学習指導-認知能力検査「NINO」を活用した授業実践-

泉南市教育委員会学力向上対策室兼人権国際教育課指導主事  室谷 大宜

★本市では、認知能力検査「NINO」を市内全小中学校で導入し、個々の子どもの認知能力を把握することによる効果的な指導の実現をめざしている。NINOの視点を教職員間の共通言語とすることで子ども理解が深まり、意図的な机間指導や学習のつまずきに寄り添った授業計画が可能になった。非認知能力と認知能力を両輪で育むものと捉え、学校教育の様々な場面でNINOの視点を活用し、すべての子どもにとって効果的な実践に今後も取り組んでいく。

❶認知能力に配慮した教育/認知能力のアセスメントと支援-学習に困難のある子どもの理解と支援-

聖徳大学教授  東原文子

★本稿では、認知特性に応じた学習支援のあり方を検討する。漢字書字に困難を抱えた小学生の事例から、WISC-ⅤやKABC-Ⅱに基づくアセスメントの実際と、その子の得意・不得意を踏まえた「長所活用型指導」の有効性を示す。
★個々の認知特性に合わせた「個別最適な学び」の支援は、「令和の日本型教育」において重視される。通常学級の指導でもUDLを意識して、「長所活用型指導」の発想を生かしたい。

❶認知能力に配慮した教育/認知カウンセリングによる認知能力を高める指導

広島大学大学院人間社会科学研究科准教授  深谷 達史

★本特集のテーマ「認知能力に配慮した教育」からは、認知能力を安定的なものと位置づけ、実践のあり方をその子の認知能力にあわせることがイメージされます。一方、認知能力の中には学習方略のように可変的な能力も含まれます。この場合、認知能力そのものを改善することを目指した実践を構想することもできるでしょう。本稿では、そうした実践として認知カウンセリングを紹介します。

❷IT時代に本を読む/IT時代の読書を考える

帝京大学教育学部教授  鎌田和宏

★読書離れが進む現状に対し、IT時代における読書の重要性を再考する。学力基盤や情報活用能力の育成に不可欠な読書は、知識習得や思考力、自己形成に貢献する。デジタル化が進む現代では、電子書籍を含めた多様な読書環境の整備が重要であり、IT時代だからこそ、情報を吟味し深く理解するための読書が不可欠である。

❷IT時代に本を読む/学校図書館の役割

公益社団法人全国学校図書館協議会顧問  設楽 敬一

★学校図書館は、「静かに本を読むところ」「校舎の最上階の隅にあり、鍵がかかっているところ」など、読書好きの児童生徒の居場所と捉えている人もいる。学校図書館法は、「教育課程の展開に寄与する」と「児童又は生徒の健全な教養を育成する」ことを目的としている。これは、最後までじっくり本を読み解く「自立した読書」や、互いに学び合う学習活動ができる「自立した学習者」などを育むのに必要な役割を明記したものである。

❷IT時代に本を読む/本で調べる・本に学ぶ-電子書籍読み放題を活用した授業-

神戸市立菅の台小学校主幹教諭  清水 啓

★教育の現場にICTや電子書籍が導入されるなか、子どもたちを読書にどのように向き合わせていけばよいか。本にふれる機会の確保とともに、本や図書館資料を活用した学習指導が求められているなかで、ここでは、読書指導の構想として、「低学年の楽しむ読書」「中学年の調べる読書」「高学年の考える読書」を指導の柱に、電子書籍読み放題を活用した授業について考察する。

❷IT時代に本を読む/図書に親しむ環境づくり-公共図書館の立場から-

川口市立中央図書館副主幹  本山 郁美

★子どもたちを取り巻く読書環境、教育環境は激動の時代を迎えています。文部科学省が令和5年3月に定めた第五次「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」においても、①不読率の低減、②多様な子どもたちの読書機会の確保、③デジタル社会に対応した読書環境の整備、④子どもの視点に立った読書活動の推進、が謳われています。子どもたちが本に親しみをもち、たくさんのすてきな本と出会える手助けができるよう、公共図書館の立場から様々な取組みを行っています。

連載

巻頭言/いつも手元に本があった 東京学芸大学名誉教授
河野義章
次期教育過程における学習評価の改善策はこれだ!(2)思考力等の目標の明確化と評価基準の理解を助ける評価事例が必要 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
言語技術としての「事実と意見の区別」(15)歴史学・歴史教育における<事実>とは 北海道大学文学研究院教授
橋本 雄
文部科学省教科書調査官(体育)
渡辺哲司
協働学習が成り立つ学級集団づくり(3)現状に応じた学級集団づくりの取り組みが協働活動・学習につながっていく 早稲田大学教授
河村 茂雄
明日の教育を拓く-研究開発学校の挑戦(1)異学年集団で教科を遊ぶ「はっけん」の時間-香川大学教育学部附属高松小学校- 日本大学教授
山森 光陽
カリキュラム・マネジメント推進における校長のリーダーシップ(2)副校長時代のカリマネ経験を校長職に生かす 甲南女子大学人間科学部教授
村川雅弘
資質・能力をはぐくむメタ認知の指導(2)メタ認知の指導①-何を教えるのか? 大阪公立大学教授
岡本 真彦
宿題と家庭学習(9)宿題をやめた岐阜小学校のいま-自己肯定感をはぐくむ「家庭学習」への転換- 岐阜市立岐阜小学校校長
清水 也人
コーチングに学ぶ「対話力」(4)組織的なことに悩んでいる先生との対話 「教と育」研究所代表
内藤睦夫
つなぐ・つながる支援(3)被災地の復興と子どもたち-石巻から- 石巻市立開北小学校元校長
鹿野 宏美
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