月刊誌 指導と評価

2019年 9月号
  1. 2019年 9月号 Vol.65-9  No.777  定価:450円
特集
パフォーマンス評価導入
  • 入会(年間購読)へ
  • バックナンバー購入へ
  • 【在庫あり】

特集

パフォーマンス評価の提唱と拡大

京都大学大学院准教授  石井英真

★パフォーマンス評価は、思考する必然性のある場面(文脈)で生み出される学習者のふるまいや作品(パフォーマンス)を手がかりに、概念の意味理解や知識・技能の総合的な活用力を質的に評価する方法である。
★パフォーマンス評価では、評価や学習の文脈の真正性が重視され(真正の評価)、知的・社会的能力の育ち(熟達度)をスタンダード準拠評価で長期的に評価していくことが重要となる。
★学習者自身が評価を学習改善に生かすこと(学習としての評価)を意識することで、深い学びの成立や「学び超え」が期待できる。
★手続き論に傾斜し、ものさし(基準表)ばかり立派なものにするのではなく、豊かな課題づくりをこそ、充実させていく必要がある。

パフォーマンス課題と評価基準

教育評価総合研究所代表理事・『指導と評価』編集委員  鈴木 秀幸

★いまパフォーマンス課題が注目されているのは実技教科以外でも設定できるからである。その際、求める能力・技能を実際に用いて評価することが基本である。できれば学習活動全体を用いた課題で評価するのが望ましいが、部分でもパフォーマンス評価といえる。
★評価基準として、スタンダードという数段階の評価基準を用意する。そしてその文言を具体的にわかるようにするため、該当する生徒の作品を用いる(スタンダード準拠評価)。アメリカでは「ルーブリック」が使われるが、これは特定のパフォーマンスを評価する評価基準であり、学習・指導を制約するともいわれている。

パフォーマンス評価と授業改革

関西大学教授  安藤 輝次

★ルーブリックは、授業中に学びの出来・不出来を評価し、不出来をできるように授業改善したり、学習改善したりするために形成的に使うものである。とすれば、子どももルーブリックを使いこなす必要がある。その手だてとして、深い学びの「見方・考え方」を内蔵した一般的ルーブリックを使う。教師は、子どもの興味に訴えて、深い学びの動詞を内蔵したパフォーマンス課題を定め、子どもが調べて、学び合って、振り返る活動を組む。ポイントは、前述のルーブリックを形成的に活用して、不出来をできるように学び直させることである。教師中心授業に慣れた教師なら、ペア学習を講義にはさみ込んで、同僚に参観してもらうことから始めることをおすすめしたい。

公民としての資質の育成に届く社会科授業とその評価

筑波大学附属小学校教諭  粕谷昌良

★社会科は暗記科目の代表といわれる。また、社会科は何を教えたらよいか、どうやって教えたらよいかわからないという声も聞く。「社会認識を通して、公民(市民)としての資質を育成する」という社会科の目標に届く授業と児童の学びはどのようなものであろうか。
★「社会認識を通して、公民としての資質と能力を育成する」ことが目標である社会の評価について、ルーブルックを用いたパフォーマンス評価の実例をあげて、児童の学びの深まりを検討する。

理科におけるパフォーマンス評価

宮崎大学教授  中山 迅

★これまで、理科のパフォーマンステストは「実験テスト」と呼ばれ、国際理科教育調査においても、児童・生徒に、実際に観察や実験を行わせて、行動観察や回答用紙への回答によって、観察・実験の技能、実験計画の立案、データの記載、データのグラフ化などを含む分析、分析に基づく結論の導出などの能力を評価してきた。また、それを参考にした実験テストの実践例も数多く存在する。近年では、純粋な自然科学の文脈にとどまらない日常的な文脈に根ざすオーセンティックな課題を設定したルーブリック評価の取組もあり、ますます多様なパフォーマンス評価の取組が期待される。

小・中学校英語におけるパフォーマンス評価事例

関西学院大学教授  泉 惠美子

★学習指導要領が改訂され、二〇二〇年度より小学校中学年で「外国語活動」が、高学年で教科「外国語」が導入される。また、新学習指導要領では三つの資質・能力が求められており、英語を用いて何ができるかを、実際に児童生徒に四技能五領域にわたり、パフォーマンス課題を与えて、評価していくことが求められている。その際、知識・技能のみならず思考力・判断力・表現力を育成するために、ルーブリックをどのように設定し、児童生徒と共有するのかは重要な課題である。
★そこで、本稿では文部科学省より『外国語教育強化地域拠点事業』の指定を受けて新学習指導要領を先行実施して取り組んだ小・中学校の事例を紹介し、望ましいパフォーマンス課題と評価の在り方について考察する。

パフォーマンス評価の問題点

教育評価総合研究所代表理事・『指導と評価』編集委員  鈴木 秀幸

★「思考・判断・表現」や総合力を評価するのにパフォーマンス評価(ここでは狭義で、パフォーマンス課題に基づく評価)は適しているが、難点もいくつかある。
★まず、妥当性は高いのだが、信頼性が低いことである。また、課題によって生徒の結果が大きく異なること、評価者間で評価結果がかなり不一致なことも問題である。ゆえに選抜などのハイステイクスな場面では使いにくい。
★第二に、時間と労力がかかる。ゆえに限られた時間で頻繁に行うことはむずかしい。
★第三に、パフォーマンス評価に用いる評価基準の問題である。適切な評価基準を作成する必要がある。第四に、わが国ではペーパーテストでの1点刻みの点数による評価こそ厳正だと広く信じられている。この“信仰”の改革も必要である。

今月のイチオシ!!形成的評価と総括的評価を区別する−評価の機能:指導・学習の改善のためか、学習の成果の要約(成績づけ)か− 

教育評価総合研究所代表理事・『指導と評価』編集委員  鈴木 秀幸

 評価はいくつかの分け方がありますが、機能による区別が総括的評価、形成的評価です。この区別はとても重要で、学校教育における評価には両方が必要です。「指導と評価の一体化」という場合の評価は形成的評価のことです(このように形成的評価の重要性が叫ばれるウラには、成績づけ・総括的評価ばかりで学習に効果的な形成的評価がおろそかになっているという現状批判があります)。
●評価の目的・機能は大別して、子ども・教師の学習・指導に生かす形成的評価と、一定期間の学習の成果を要約する総括的評価の2つがあります。歴史的には、各学年や卒業時の成績を要約する総括的評価が先です。進級や卒業後の進路決定に必要だったからです。小学校までしか義務教育でなかった時代、学業優秀な児童を旧制中学に進学させることは、本人にも国家にも大事なことでした。戦後もこうした役割が必要とされ、指導要録の第2回改訂から「評定」欄ができました。
●妥当性・信頼性:妥当性とは、評価したい学力をたしかに評価しているかのこと、信頼性とは、一貫性・安定性の程度(繰り返しても一貫した結果が得られるか)のことです。両者はなかなか両立しません。例えば、一般的な傾向として、客観テストは信頼性は高いが妥当性は低く、論文体テストは逆に妥当性は高いが客観性は低いのです。そのため両者を高めるためには、複数の評価用具を組み合わせるなど工夫します(第4回以降詳述)。
●形成的評価では、学習・指導の改善のために学習の状況を調べます。当然、目標準拠評価(次回詳述)で行い、信頼性より妥当性が重要です。学習の状況を調べたら学習が改善するよう適切な指導や学習のし直しをします。このときフィードバック(とくに正答や説明、達成目標を戻すこと)が効果的です。机間指導でも家庭学習の点検でもテストの返却でも、この条件に合えば形成的評価です(「し直し」がなければ形成的評価とはいえません)。その代わり、学習の全体の状況や、全員の状況を正確に把握することはあまり重要ではありません。
●一方、総括的評価は一般に成績をつけるための評価と受け取られていますが、学習の成果の要約のことです。選抜に利用されることもあるので全員の学習の全体の状況をできるだけ公平・正確に把握すること、すなわち信頼性・客観性が優先されます。また、目標準拠評価のほかに相対評価(集団準拠評価)でも行われます。指導要録は指導機能と証明機能がありますが、全体として総括的評価の記録です。学習に有益な形成的評価が学習にとっては第一とはいえ、総括的評価にもそれと別の役割があるのです。
●評定=総括的評価か?:戦後、教科総合欄を「評定」と名付けたため、「評定」を総括的評価の意味で使う用法が広まりました。たしかに総括的評価には評定による表し方が便利ですが、文章による総括的評価もあります。もともとは評定に総括的評価の意味はありません。

連載

巻頭言/「アセスメント」は「教育評価」ではない 文教大学学園長・応用教育研究所長
石田 恒好
パフォーマンス評価の実践研究(3)ルーブリックを用いた評価方法 埼玉県立総合教育センター教育課程担当
篠田俊文
「教師力」アップセミナー子どもとともに成長する教師をめざして(6)地域の教育資源を生かした学校教育の実現−子どもたちの豊かな学びを創造するためのネットワークづくりと探究学習の実践− 創価大学教職大学院准教授
大関 健道
QUを活用したPDCAサイクルで教育実践の向上をめざして(6)ICTの徹底した活用で教育実践の向上を目指した学校の取組(2) 早稲田大学教授
河村 茂雄
「主体的・対話的で深い学び」を創る(3)「問題解決的な学習」を通して、他者と学び合う力を鍛え上げる社会科学習の研究−倫理的な「価値判断」と、論知的な「言語活動」を基底とした「感じ、考え、志を立てる」授業の実践− 神奈川県川崎市立西高津中学校教諭
町田 憲二
木下是雄と「言語技術の会」ルネッサンス(5)教科書の内容(2)漸進性について 文部科学省初等中等教育局教科書調査官(体育)
渡辺哲司
教育統計・測定入門(79)ニューラルテスト理論 法政大学教授
服部 環
通常学級の実践から学ぶ特別支援のヒント52(6)子どもの思考と問題解決を援助する対話の工夫 埼玉県立大学准教授
森 正樹
教育相談はこう学ぶ!−全国各地の特色ある教育相談研修(6)遠隔地におけるICTを活用した教員研修 北海道教育庁学校教育局生徒指導・学校安全課長
田中賢一
こうすればうまくいく!スペシフィックSGE(7)SGEをもっと広げていきたいねえ−スペシフィックアドバイザー養成講座in山形より− 山形県長井市教育委員会幼保小等連携専門員
鈴木英子
授業をみる・語る・研究する(5)授業ストラテジーの分析 東京学芸大学名誉教授
河野 義章
公認心理師の資格をもつガイダンスカウンセラーの実践(6)スクールカウンセラーとして生徒や教員の成長発達を支援する 函館大谷短期大学准教授
阿部千春
講座キャリア心理学−キャリア発達を支援する(6)質的アセスメント 労働政策研究・研修機構主任研究員
下村英雄
本の紹介(4)『レポートの組み立て方』 指導と評価編集部
「指導と評価」編集部
TOP