月刊誌 指導と評価

2019年 2月号
  1. 2019年 2月号 Vol.65-2  No.770  定価:450円
特集
「気になる子」が輝く学級
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特集

「気になる子」が輝く学級づくり

東京福祉大学准教授  深沢 和彦

★「気になる子」が輝く学級は、子どもたちに自治の力と共生の価値観を育て、丹念に個と周囲をつなぐ支援をした末にでき上がる。時間がかかるが、一歩ずつ歩を進めるしかない。「気になる子」が輝く学級づくりには、2つのキーワードがある。1つ目は「架け橋」である。教師との二者関係をベースに「気になる子」と周囲の子どもをつなぐ指導が必要である。理解し合うことがむずかしい、両者の立場や思いを教師が代弁・通訳しながら、両者の架け橋となり相互理解を図るのである。2つ目は「自治の力」である。これは、常に子どもたちに考えさせて行動を自己決定させ、その結果がどうであったかを振り返る指導過程の中で育成される。

「気になる子」のよさを見つけるアセスメント

埼玉大学准教授  名越斉子

★発達障害は、その子どもの個性を彩る数多くの特性の1つである。子どもの特性は、環境と作用し合い、困難につながることもあれば、子どもを輝かせることもあり、子どもと環境の双方のアセスメントは重要である。
★本稿では、まず、応用行動分析学の考えに基づき、環境との相互作用に着目したアセスメントを紹介する。子どもの適応に大きく影響する環境の1つである指導を見直す手がかりになるだろう。次に、子どもの特性を見るときに役立つ最新の検査を紹介する。知能についてはWISC-Ⅴ、学力についてはiPadを用いたLD-SKAIPを、活用のポイントとともに述べる。
★本稿が、子どもが自分の特性に合うやり方で学びや生活を舵取りし、自分のよさを発揮できる力を育てるための支援に結びつけば嬉しく思う。

強みを活かしたLDの支援

北海道大学大学院博士課程  岩田みちる

★学習障害(LD)は、特定の学習スキルの習得と使用に特異的な困難があり、一般的な方法では学習が難しい場合がある。それぞれの特性を踏まえ、強みを活用した学習方法や環境調整が重要である。
★LDの背景は多様であり、強みにも個人差がある。万人に有効な支援の方法はないため、本人に合った学習方法を尊重することが求められる。

LD児の在籍するクラスの学級経営

神奈川県横浜市立城郷小学校教諭  藤井園子

★通常学級に在籍する発達障害のある児童は、授業や学習に対して不安を感じていることが多い。教員にとっても、特別な支援が必要な児童への配慮の重要性を理解しているものの、どのように適切な支援をすればよいかわからない現状がある。
★LD児の特性を考えて、個々に応じた学習の準備や支援をしていく必要がある。一方で、1つの学級に発達障害のある児童が複数在籍する近年、一人一人に対応していくことにも限界がある。
★教員が、どの学級にも発達障害のある児童が在籍している可能性を考慮して学級経営や教材研究をしていくことによって、学級全体の学習への意欲を高めることにつながる。

ADHDの特性をプラスに活かす

東京学芸大学准教授  小林 玄

★不注意と多動性/衝動性の高さを特徴とするADHD児は、集団活動が主となる学校生活において不適応を起こしやすい。たびたび叱責を受けることによって自信喪失や自己効力感の低下などの二次障害にいたる可能性もある。
★しかし、ADHD児の障害特性は、柔軟な着想や行動力などにもつながり、このような特性のプラス面にも着目しながら支援方針を立案するとよい。本稿では、小学生の3事例をあげながら、問題となる行動の背景を理解すること、子どもの強みとなる能力を活用することの2点からADHD児の特性のプラス面をクローズアップしてみたい。

ADHDの特性をプラスに活かす学級経営

栃木県那須塩原市立東原小学校教諭  丑越信子

★近年、通常学級において「行動面で著しい困難を示す」児童生徒は、周囲から「困った子」としてとらえられ、集団の中で孤立していく傾向が見受けられる。
★この現状において、教員には、通常学級担任としてどのような支援を行い、どのように学級経営を進めていくかが問われている。障害の有無にかかわらず、「インクルーシブの視点」で、子ども一人一人の教育的ニーズに応えるとはどういうことなのか。ここではADHD児を中心に、私自身がこれまでに実践してきた学級経営をとおし、考えていきたい。「困った子」としてとらえる教師自身の意識改革こそ、子ども一人一人が輝く学級経営への第一歩である。

ASDの特性をプラスに活かす

作新学院大学准教授  日高茂暢

★自閉スペクトラム症(ASD)の長所と短所は、心理学研究と臨床実践研究の両面から検証されてきた。短所補充型の教育は子どもに認知的負荷をかけるため、長所活用型の教育と組み合わせて実施する必要がある。
★本稿ではASDの長所として、心理学研究の立場から、①視空間処理、②視覚的理解、③高い動機づけに支えられた注意と記憶、④継次処理、⑤ルーチン化、を紹介する。また、ASDの長所と短所は、集団生活を行う場面では表裏一体であることが多い。長所と短所が場面や方法によって変化することを踏まえ、短所を長所に変える場面を発見し創り出すことについてまとめる。

ASDの特性をプラスに活かす学級経営

東京都昭島市立拝島第三小学校教諭  野澤和恵

★学級担任をして四年目であるが、自閉スペクトラム症(以下ASD)児を含め、多くの「気になる子」に出会ってきた。みんなが輝ける学級経営を行うために、特別支援教育の視点は大いに役に立っている。ASD児が安心して学校生活を送り、社会に出て働く力の基礎が培えるよう、支援を考えてきた。ここでは、そのために心がけていることを、①学級での支援、②ASDの特性から考える支援、③保護者への支援、④授業実践、⑤学校としての支援、の観点から考えた。

連載

巻頭言 特別支援教育と学級経営 名城大学教授
曽山和彦
「教師力」アップセミナー(11)メンタリングによる学び 帝京平成大学教授
白鳥 信義
QUを活用したPDCAサイクルの推進(11)学校のPDCAサイクルを推進するミドルリーダーの活動の実際 早稲田大学教授
河村 茂雄
説明文・意見文を書くことの指導(11)真のアクティブラーニングとしての「書かせる指導」 熊本県立鹿本農業高等学校 進路指導主事兼食品科学科主任
宮田晃宏
新教育課程の評価を考える(20)「資質・能力」を育成し評価する-人材の育成に必要なこと 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
『きめる』学びで知的にたくましい子どもを育てる-主体的・対話的で深い学びを実現する授業づくり-(11)総合活動におけるきめる学び 筑波大学附属小学校教諭
梅澤真一
特別支援教育に生かすペアレンティング(11)大人と子どもが互いに楽しみ合うポジティブな雰囲気を家庭や学級で作る(1) 子育て科学アクシススタッフ
上岡勇二
構成的グループエンカウンター再入門(12)学年末に行うエンカウンターこれまでの総括と新しい一歩を踏み出すために 神奈川県教育カウンセラー
髙橋浩二
コミュニティにおけるガイダンスカウンセリングの展開(11)教師支援とガイダンスカウンセリング 共栄大学教授
和井田節子
成熟した学習者をめざして(10)キャリア教育の視点でつくる新しい学習活動 秋田市立泉中学校教諭
平良木 洋
これからのキャリア教育(11)「社会に開かれた教育課程」におけるキャリア教育の役割 筑波大学教授
藤田 晃之
講座カウンセリング心理学(11)カウンセリングサイコロジストの仕事と養成 東京成徳大学名誉教授
國分 康孝
教育統計・測定入門(74)多値的採点項目へ適用するモデル 法政大学教授
服部 環
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