月刊誌 指導と評価

2023年 10月号
  1. 2023年 10月号 vol.69-10 No.827  定価:450円
特集
教育・心理検査の意義と活用
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特集

教育・心理検査の意義

法政大学教授  服部 環

★指導要録には標準検査の記録として指導に活用できる内容を具体的に「総合所見及び指導上参考となる諸事項」欄に記入する。
★標準検査は実施方法から採点方法と評定基準、検査結果の解釈など、検査の実施要領が規格化されている。適切に標準検査を選び、さらにテストバッテリーを組むことにより、分析的な情報を得て指導に役立てる。

教研式 認知能力検査(NINO)の活用

東京家政大学教授  平山 祐一郎

★教研式 認知能力検査(NINO)は学習改善や学力向上をねらっている。NINOが予測する学力を児童・生徒が達成しているか、どのような個別的支援が必要か、思考力はどのような状態か、学習をどのように行っているかを把握する資料を提供し、教員間の共通認識と結果に基づいた指導を可能にする。何よりも事後指導が重要であり、アシストシートの活用や適切で温かな結果のフィードバックが不可欠である。

教師のためのWISC-Vのいろは

埼玉大学教授  名越 斉子

★WISC-Vの刊行から2年半が過ぎ、WISC-Ⅳからの切り替えが進んでいる。WISC-Ⅴは特別な教育的ニーズのある子どもの知能の評価に用いられる代表的なアセスメントであり、結果を踏まえた効果的な指導支援を行うことが、教師に求められている。本稿では、教師が知っていると役立つ基礎的事項について、Q&A形式で解説する。

KABC-Ⅱの概要と活用

和光大学教授  熊上 崇

★日本版KABC-Ⅱ(以下、KABC-Ⅱ)は「認知」と「習得」の2つの尺度が組み合わされたテストバッテリーである。
★カウフマンモデルおよびCHCモデルという2つの知能理論モデルに立脚しており、他検査とのバッテリーが組みやすい。
★子どもの認知処理スタイルと学習状況を把握できるので、教育的支援に結果を生かしやすい。

標準学力検査(NRT・CRT)

東北大学教授  宮本友弘

★教研式標準学力検査には、「集団に準拠した評価」のNRTと、「目標に準拠した評価」のCRTがある。学習評価のプロセスを意識して、それぞれの特徴と活用法を理解することが大切である。NRTは集団(ノルム)準拠評価なので、児童生徒の自己理解を深めたり、目的に準拠した評価を補完することが期待できる。CRTの結果は指導要録に完全対応しているので、観点別学習状況の評価や評定の客観的資料になる。

標準学力検査とバッテリー活用

(財)応用教育研究所副所長  堀口 哲男

★標準学力検査とは標準化の手続きを経て作成されたテストのことで、妥当性や信頼性の検証が行われている。
★バッテリー活用とは、複数の検査を組み合わせて多面的に情報を得る方法である。知能検査(認知能力検査)と、標準学力検査NRTの相関的な利用がよく知られており、学習指導に活用されている。
★バッテリー活用には、「能力検査」と「質問紙法検査」を組み合わせたものもある。たとえば、標準学力検査NRT・CRTと、Q-Uの結果をクロス集計したものである。これにより、児童生徒の学習面と生活面の支援ニーズを多面的に捉えることができる。

教研式Reading-Testによる読みの力のアセスメント

(財)応用教育研究所課長  納富涼子

★教研式Reading-Testは、読みの基本的な力を、「読字力」「語彙力」「文法力」「読解力」の4つの下位検査で測定する検査である。
★検査を実施すると、小学生・中学生の基礎的な読みの力(読書力)と、読書についての意識や考え方についての情報が得られ、指導に生かすことができる。

意欲を測る検査

筑波大学名誉教授  櫻井 茂男

★学習意欲に関連した二つの検査を紹介する。一つは来年四月発売予定の「学びのエンゲージメントテスト」(通称、ET)、もう一つは定番の「学習適応性検査」(通称、AAI)である(いずれも図書文化刊)。
前者は最新の「学びのエンゲージメント理論」に基づくCBT方式の検査で、「主体的に学習に取り組む態度」を中心に測定する。後者は学習意欲をはじめ学力向上要因を網羅的に取り上げた検査である。

「Q-U」の活用から広がる教育実践と信頼関係

会津大学教授兼文化研究センター長  苅間澤勇人

★適切な児童生徒理解(アセスメント)が効果的な教育活動につながる。よって、観察法と面接法によるアセスメントに加え、調査法(心理尺度)を用いて児童生徒を多面的に理解することが重要である。
★標準検査「Q-U」で、学級集団の状態と子ども一人一人の理解を深め、意図的に教師のリーダーシップを変えることで、子どもや学級集団が変わる。
★児童生徒を支援して、信頼を築くツールとして利用することが大切である。

教研式道徳アセスメントの紹介-「HUMAN」と「BEING」-

(財)応用教育研究所課長  江澤賢一

★学習指導要領改訂で道徳が「特別の教科」として位置付けられた。それに伴って開発された、2つのアセスメント「道徳性アセスメント HUMAN」と「道徳教育アセスメント BEING」を紹介する。その意義は、道徳における評価があらためて求められたことにある。評価の在り方については、実に慎重に議論が重ねられてきた。道徳性という捉えがたいものだからこそ、さまざまな角度から子どもたちの実態をつかむ必要がある。これらのアセスメントは道徳の評価における一翼を担うものである。

進路適性検査の活用

(財)応用教育研究所副所長  堀口 哲男

★中学校や高校で活用される進路適性検査には、生徒の進路希望や職業興味、価値観、能力的な側面の下位検査が用意されている。
★進路適性検査の結果は、教師が指導に活かすほか、生徒の自己理解資料ともなる。
★検査が提示する職業分野は、職業の世界を体系的に示しており、生徒の視野を広げる効果がある。
★従来の検査用紙での実施のほか、「教育プラネッツ」と呼ばれるインターネットプラットホーム
からの実施も可能となった。

視知覚・視覚認知検査

大阪医科薬科大学小児高次脳機能研究所   奥村智人・清恵会病院堺清恵会LDセンター  三浦朋子

★見る力にはさまざまな種類とその個人差があり、周りの人より目を上手に使って効率よく見れる人もいれば、見ることが苦手な人もいます。見る力のひとつに視知覚・視覚認知があり、WAVESやDTVP-3などの検査を使って客観的に評価することができます。検査結果に基づいて、状態把握を行い、視知覚・視覚認知の発達を促す支援や視知覚・視覚認知に弱さがあるままでも学びやすい工夫や環境調整を行うことが大切です。

発達障害の診断~検査の意味も含めて~

筑波大学名誉教授  宮本信也

★発達障害は、検査結果だけから診断されるものではない。子どもの今の状態像、出生時からの発達経過、これまでの対応とその結果などの情報に、診察結果、子どもの行動観察結果、そして必要に応じて実施した検査結果、これらすべてを総合的に判断して診断されるものである。発達障害の疑いがあるので検査を受けて診断してもらうという姿勢は適切ではないことに留意する必要がある。

連載

巻頭言/学習評価における「妥当性」「信頼性」をあらためて問う 東北大学教授
宮本友弘
目標準拠評価を教育に生かす(17)国語の評価⑤-簡単な評価基準を詳しい評価事例集で補完 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
算数科で育てる「思考・判断・表現」する力⑹計算について考える② 明星小学校副校長・前筑波大学附属小学校副校長
夏坂 哲志
読解力の育成(小学校実践編)⑹思考の系統を意識した文学の授業づくりー小学校中学年 筑波大学附属小学校教諭
青山由紀
漢字を教える・学ぶ⑵複雑な漢字を学ぶのはむずかしいか 東京学芸大学名誉教授
河野義章
「叱る」を考える⑺心理臨床から見た「叱る」-おもに力動的心理療法の視点から- 聖学院大学教授
大橋良枝
子どもを真ん中に置いた支援⑴子どもを真ん中に置いた支援とは-学校における多職種連携を検討する- 和歌山大学名誉教授
武田鉄郎
「あきらめる」を肯定的にとらえる⑺「あきらめる」ことと動機づけの内在化① 十文字学園女子大学准教授
永作 稔
新/教育統計・測定入門⑼古典的テスト理論を用いる項目分析 法政大学教授
服部 環
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