月刊誌 指導と評価

2023年 7月号
  1. 2023年 7月号 vol.69-7 No.824  定価:450円
特集
❶思考力の育成と評価❷特異な才能のある子の支援
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特集

特集❶思考力の育成と評価/思考力をどう育てるか

大阪教育大学名誉教授  北尾 倫彦

★概念的葛藤、表象の組合せ、仮説検証的止揚などの、思考を理論化する核概念を分かりやすく説明した。本稿を参考にして教科ごとの核概念をその根底から子どもたちに理解させてほしい。また論述や対話も取り上げているが、教師は書かれていることを助言するにとどめ、子どもの主体性にまかせてほしい。

特集❶思考力の育成と評価/オーセンティックな評価(真正な評価)

教育評価総合研究所代表理事  鈴木秀幸

★オーセンティック評価はパフォーマンス評価と重なり合うことが多いが、現実社会で生じるような課題を用い、通常の学習活動の中で評価する点でパフォーマンス評価と区別される。
★オーセンティック評価は妥当性と実生活上の課題解決の重視の流れから登場したものである。実施に時間がかかることから、どのような能力・技能を評価することからに用いるか、熟慮して実施する必要がある。

特集❶思考力の育成と評価/思考力の測り方-ペーパーテスト(標準学力検査)を中心に-

東北大学教授  宮本友弘

★思考力等の把握では、実行可能性の視点からも、ペーパーテストの利用価値は失われない。
★全国学力調査では選択式や短答式であっても思考力等を測定が可能であることが示されており、作問上の工夫改善を図る上でのモデルとなる。
★教研式標準学力検査NRTの妥当性が全国学力調査との相関分析から実証された。標準学力検査としての特長から、教師及び児童生徒の自己理解を深めるツールとしての活用も期待できる。

特集❶思考力の育成と評価/批判的思考力の育成と評価-フランスのバカロレア試験を中心に-

立命館大学准教授  細尾萌子

★AIの急速な発展により、批判的思考力の育成は急務となっている。フランスでは、大学入学資格試験であるバカロレア試験で批判的思考力を問うているため、その力を初等・中等教育を通して段階的に育むカリキュラムを構成している。日本でも、小中高の各教科においてどのような批判的思考力を育むかを議論すべきである。また、大学での学習の基礎となる批判的思考力を問える大学入試を開発すべきである。

特集❷特異な才能のある子の支援/特異な才能のある子の指導・支援をめぐる視点・論点

関西大学名誉教授  松村 暢隆

★文部科学省の「特異な才能のある児童生徒への支援の推進事業」が開始された。この目新しいテーマには十分に正しい理解が必要になる。
★「特異な才能」は意味が限定されず、幅広い領域・特性や程度の才能を表す。それはIQ等の特定の基準で一律に定義されず、基準は個別の取組ごとに決められる。また、才能のある子の指導・支援は、通常学級を拠点とした個別最適な学び・協働的な学びの中でインクルーシブに実施される。発達障害や才能が原因で「困っている才能のある子」への支援も今後の課題になる。

特集❷特異な才能のある子の支援/特異な才能のある児童生徒に対する支援-教育政策の視点から

文科省初等中等教育局教育課程課学校教育官  川口貴大

★文部科学省の有識者会議「審議のまとめ」では、特異な才能のある児童生徒に対する指導・支援に関する今後の取組の基本的な考え方として、令和3年中教審答申の理念である「全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実」が示された。こうした考え方の下、文科省は令和5年度から関連事業に取り組み、特異な才能のある児童生徒に対する指導・支援の充実を図ることとしている。

特集❷特異な才能のある子の支援/特異な才能のある子の理解と支援-学際的な研究アプローチの視点から-

関西国際大学教授  鳥居深雪

★特異な才能のある子の理解について、「ニューロダイバーシティ」の概念を中心に、当事者運動と脳科学の視点から述べる。次に、心理学的な視点から、知能のとらえ方、2Eの心理学的特徴について述べる。最後に、現在の教育制度の問題と今後の課題、法制度としての合理的配慮の提供との関連、セルフアドボカシーという福祉的な視点についてもふれる。

特集❷特異な才能のある子の支援/高等教育における支援-自己理解と能動的な支援要請の視点から-

東京学芸大学准教授  小林 玄

★特異な才能への支援には、「困難さへの対処」と「高い能力の伸長」の両側面がある。これらは表裏一体であり、本人の適切な自己理解が両側面の効果を高めると思われる。能動的な支援要請を必要とする高等教育にあっては、学生自身の自己理解の深化、困難さへの能動的な対処の姿勢をサポートすることが支援の要となると思われる。

特集❷特異な才能のある子の支援/2Eギフテッドクラスの取組

NPO法人翔和学園長  伊藤寛晃

★本稿では、NPO法人翔和学園のアカデミック2Eギフテッドクラス(小中学部・高等部)の実践から得られた知見をまとめる。
★子どもの「特異な才能」が真に発揮されるためには、仲間や専門家との「個別最適な真正の学び」のなかで、批評や失敗もポジティブに受けとめ、全力で挑戦できる「安全な学習環境」が大切である。また、そこでの学びを妨げるかれらの生きづらさが、「身体レベル」で起きている可能性に気づくことが大切である。

連載

巻頭言/大学入学共通テストは思考力を測れているか 東北大学教授
倉元直樹
目標準拠評価を教育に生かす(15)国語の評価③-簡単な評価基準を詳しい評価事例集で補完 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
算数科で育てる「思考・判断・表現」する力(3)子どもの思考過程に見える数学的な見方・考え方のつながり③ 明星小学校副校長・前筑波大学附属小学校副校長
夏坂 哲志
読解力の育成(小学校実践編)⑶思考の系統を意識した説明文の授業づくり-小学校中学年 筑波大学附属小学校教諭
青山由紀
書くことの指導(小学校実践編)⑵表現方法を培う書くことの授業づくり②-3年生「報告文」の実践- 筑波大学附属小学校教諭
白坂洋一
いま必要な校内研修⑷ワーク・エンゲイジメント(働きがい・やりがい)の視点を取り入れて教育効果を目指す 福島県田村市立常葉小学校長
榊原 康夫
「叱る」を考える⑷非行と「叱る」 駿河台大学教授
角田 亮
教科書をひらいて授業を創る(15)科学的な探究の観点から中学校理科の教科書を読み解く 横浜国立大学教授
和田一郎
「あきらめる」を肯定的にとらえる⑷/「まあいいか」と手放すことのしなやかさ 十文字学園女子大学准教授
永作  稔
教育の窓(63)CBT(Computer-Based Testing)の特徴と留意点 法政大学教授
服部 環
特別寄稿/学びの支援に役立つ認知理論⑹-本物の対話が学びを深める- 大阪教育大学名誉教授
北尾 倫彦
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