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特集
認知心理学がとらえる「思考」―仮説検証の思考力を育成するための留意点は何か―
★思考は認知心理学の重要な研究課題であり、問題解決、帰納的推論、演繹的推論、創造的思考、意思決定などの観点から多様な研究がなされている。
★科学的認識を深めるのに不可欠な仮説検証の思考には、帰納的推論と演繹的推論という二種類の推論が必要になる。
★仮説検証の思考の「仮説着想の過程」で正しい仮説の着想を妨げる阻害要因の一つは「素朴理論」である。一方、「仮説評価の過程」の阻害要因の一つは「確証バイアス」である。
★仮説検証の思考の阻害要因を克服するには批判的思考が不可欠である。したがって、仮説検証の思考力の育成には批判的思考力の育成が不可欠であり、そのための主要な指導上の留意点を列挙した。
集団において思考は発展するか
★みんなでいっしょに考えれば、一人で考えた場合よりも優れた効果が得られるという素朴な信念はさまざまな研究で否定されている。集団における思考の優位性は、次のような条件のもとに生じる。①メンバー個人が目標を明確にもち、②互恵的な人間関係を作ることに努力をすること、③集団内の互恵的相互作用が機能するためには、何を言っても受容される土壌を集団内に整備すること、④そのような集団の中で思考の結果だけでなく、なぜそうなったのかというプロセスも相手に伝えること、⑤その伝え方には、話し言葉だけでなくメモや図などを示す方法を使うこと。このような工夫をすることにより、集団での対話の中で「文殊の知恵」が生み出される。
イギリスでの思考力-スキルとしての体系化と実践的指導
★イギリスでは思考力に関する資格試験があり、そのための参考書や、思考力について体系的に論じた本がある。
★思考力に関する参考書や書籍は、思考力の内容を体系的に示し、練習問題を解かせることで、これを育成できると考えている。
国語科における思考
★国語科は、言語と思考の関係が話題となる主たる教科である。このため、国語科における思考としては、「言語による思考」が主として取り上げられるが、「言語によらない思考」も他教科との関係で視野に入れる必要がある。
★国語科における思考は次の三つの様相からとらえることができる。①言語の特質と機能の多様性、②伝達と表現へのメタ認知的思考、③二重カリキュラムという見方。
社会科における思考
★学校教育法第30条2項に示された学力の考え方には、キーコンピテンシーと通底したものがある。道具=知識や技能を用いて問題を解決するという考え方である。それは、これまで思考を形式的な操作活動、あるいは問題解決のプロセスを踏むことだという形式面に着目した考え方を転換させ、思考の質まで問うことになった。今日、社会科における思考力とは、知識、概念を活用して社会的事象の意味や意義、特色や相互の関連をとらえる力であり、それは「解釈」や「説明」という言語活動を通して育てることになる。
算数・数学科における思考
★計算が得意、考えることが苦手という認識は正しいか。意識の問題を得意・苦手の枠で測れないのではないか。
★数学を「計算だ」と見られがちであり、それゆえ学習の場に機械的な活動が多く見られる。数学の本質がよりとらえられる活発な思考活動が行われるようにしたい。
★数学的な考え方を重要視することは日本の数学教育の一大特徴である。実践の面においてもっともっとレベルアップしたい。
★批判的思考は能動的・主体的思考であり、教師も学習者もそのどちらも批判的思考を行う主体である。目下教師も学習者も批判的思考を学ぶ途上にあり、ますますより批判的になるようにしたい。
理科における思考
★理科においては「思考する」というのはあくまでその発達段階に応じた範囲での知識を用いて行なわれる必要がある。それゆえある段階での思考は、次の段階での思考と、質的にも異なる。
★理科は自然科学そのものではない。それゆえ理科教育とは、実験や観察という近似的に可能な体験を行わせ、比喩や方便を用いつつ、しだいにその時代において認められている自然科学の見解を理解することができるように導く教育法である。
★深く思考し理解するためには、実験や観察であっても、その発達段階、教育水準に応じた体系的で相互に関連した十分な知識が必要である。そのための効果的な技法の一つとして概念地図法がある。
外国語(英語)科における思考
★外国語(英語)科においては、日本語と同様、入手した情報を基に、自分の意見を構成するなど「思考」を促すことがある。さらに思考してたどり着いた内容を英語で「表現」することにも重点が置かれる。
★思考を表現するための決まり文句や語彙は教え定着を促し、思考した内容を、語彙や構文を増やしながらも手持ちの英語で表現するスキル及び発想を転換する力を育成したい。
★本稿では、大きく「言語材料で思考」「異文化理解で思考」「自文化発信で思考」の三点において、英語科において「思考」し「表現」する指導・支援を考える。
韓国における遂行評価(performance assessment)の特徴と有用性
★韓国の初等学校・中学校・高校の進学率は世界一の水準であり、国内外の学業成就度では「基礎学力未満」の比率も毎年減少している。このような結果は、教育目標、内容、方法、評価のそれぞれの側面における多様化・専門化・特性化した教育政策の推進によるものである。
★1990年から継続的に推進している遂行評価(パフォーマンス評価)の有用性として、①学生の思考の多様化と創意性の向上させたこと、②学生の知識や能力を長期間にわたって評価することにより、教授・学習方法を改善したこと、③教授・学習方法を個別化、多様化、そして質的向上のため、個々の学生において意味がある学習活動が実施されたこと、④学生の実際状況での能力、つまり実践的な力量を高めたこと、⑤教師の評価専門性を向上させたことなどがある。
連載
新学習指導要領で教科調査官が求める授業(4)小学校理科 | 文部科学省教科調査官 村山哲哉 文部科学省視学官 杉田 洋 |
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学校で取り組む特別支援教育(2)養護教諭だからできる特別支援教育 | 茨城県常総市立菅生小学校養護教諭 忍田とし子 |
これからの小学校国語の授業づくり(8)「読むこと」2年生-文学 | 昭和学院小学校長・前筑波大学附属小学校教諭 青木 伸生 |
坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(65)6年、速さ | 青山学院大学教授 坪田 耕三 |
思考力・判断力・表現力を育てるパフォーマンス課題(2)算数・数学科におけるパフォーマンス課題と「本質的な問い」 | 京都大学准教授 石井英真 |
小学校英語活動のポイント(31)PDCAサイクルによる「外国語活動」の運営の在り方と方法-その11(指導の基本1) | 国立教育政策研究所名誉所員 渡邉 寛治 |
中学校外国語科の評価(8)「書くこと」の言語活動とその評価1 | さいたま市立南浦和中学校教頭 柳澤登紀男 |
学校の法律相談(8)有形力の行使はすべて体罰か | 国立教育政策研究所名誉所員 菱村幸彦 |
だんわしつ/南三陸仮設診療所での支援活動を経て | 看護師 公平理絵 |
ひとりごと/繰り言・愚痴・負け惜しみ | 元公立中学校教諭 吉冨 久人 |