月刊誌 指導と評価

2012年 5月号
  1. 2012年 5月号 Vol.58-5 No.689  定価:450円
特集
評価の効率化と簡素化の進め方
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特集

評価の効率化、簡素化の考え方と進め方

国立教育政策研究所名誉所員・浦和大学特任教授  工藤 文三

★評価の効率化、簡素化は、それが評価の妥当性や信頼性を損ねたり、指導と評価の一体化に寄与しない場合、否定されるべき取組である。この点で、効率的な評価とは、「目標の実現状況をより的確に把握できる評価」のことを指すととらえることが妥当である。
★効率的な評価を進めるためには、中核的な指導事項を明確にした授業を進めると同時に、それらを適切に評価できるような場面と機会の設定、学習状況を的確に把握できる評価方法の選択、学習状況の解釈と判断が重要である。
★簡素化及び負担感の問題は、担当する児童生徒数や教師の業務の在り方などとも関連しているため、前提条件なしに検討することには問題が残る。

簡素化、効率化による評価の信頼性の向上

教育評価総合研究所代表理事  鈴木秀幸

★思考・判断・表現(さらに一部の技能)の観点は、従来からなじみのある到達度評価(正確にはドメイン準拠評価)の考え方で評価するのに適さない。スタンダード準拠評価の考え方によるべきであり、国で示した「評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料」もその端緒ととらえるべきだ。今回初めて登場した評価事例集(生徒の作品)は、この評価の信頼性を高め、かつ効率化するので、重要である。
★「知識・理解」の観点は、総括的評価としては、良く構成されたペーパーテストで評価すれば十分である。

筆記試験を用いた評価の効率化

国立教育政策研究所総括研究官  山森 光陽

★筆記試験を用いること自体が,学習評価の効率化を図る手だてであるといえる。効率化を項目作成から採点に至るまでの所要時間を減じることととらえると,項目作成や採点準備を慎重に行うことで,採点にかかる時間を減じることができるようにすることが,いっそうの効率化につながると考えられる。
★パフォーマンス評価を行うには真正性の高い課題を設定する必要があるが,これは容易な作業ではない。パフォーマンス評価はこの方法によってのみ評価可能な部分に限定して実施するとともに,筆記試験との組み合わせで評価を行うことが,課題の真正性を高め,ひいては学習評価全体の効率化につながる。

小学校国語-授業改善が「評価の効率化と簡易化」のかぎ

筑波大学附属小学校教諭  青山由紀

★評価の効率化と簡易化のカギは、次の三つのポイントによる授業改善である。
①評価の観点が学習者に伝わるような課題や発問をつくること。②学習のねらいの明確化。そのためには、ねらいに見合った言語活動を設定することが大切である。
③自己評価チェックリストを作成してみること。評価の観点が焦点化され、それぞれの評価段階の具体的なモデルイメージをもつことができる。
★さらにそのベースとなるのが、構造化された板書とノート指導である。

中学校社会科-より簡素で効率的な評価を行うための効果的な指導とは

筑波大学附属中学校教諭  関谷文宏

★学習指導要領に示された内容を生徒一人一人に確実に身に付けさせることができる効果的な学習指導が、簡素で効率的な観点別学習状況の評価を可能にする。指導の改善や個に応じた指導の充実が図れない「評価のための評価」に効率を求めても意味はない。
★総括的評価に適した地理的分野の「身近な地域の調査」、歴史的分野の「時代を大観し表現する活動」、公民的分野の「よりよい社会を築いていくために解決すべき課題を探究する活動」のような学習指導をより重視すべきである。
★「十分満足できる」状況にある生徒の発表や作品の内容には、他の生徒の学習意欲や思考を高め、知識や理解をより確かなものにしていく効果がある。

小学校理科の評価~「てこの規則性」の実践例から~

文京学院大学特任教授  森田 和良

★評価活動の効率化や簡素化のためには、いつ、どの項目を、どの時間に、どのような方法で評価するのかを、指導計画の中に明確に位置づけておく必要がある。そして、対象とした内容をどのような基準で判断するのかという観点を明確にしておく必要がある。
★見通しをもった評価活動をするためには、十全の準備が大切である。
★また、指導と評価を効果的に機能させるためには、短時間で簡単にできる「理解確認」の方法も、今後は開発していく必要があるだろう。

小学校図画工作・中学校美術の学習評価~効率化と簡素化の要点~

聖徳大学教授  奥村高明

★本稿では、学習評価の効率化と簡素化について、まず①学習指導要領と学習評価が一体的に改訂・改善されたことから検討する。次に②学習評価を、材料や用具、学習環境、評価方法などを時系列にそって整えた「題材」のパーツとして組み込むことの重要性を押さえる。その上で③学習評価を進めるポイントを(1)関心・意欲・態度、(2)目標や指導との一体化、(3)〔共通事項〕、(4)評価計画、(5)評価資料の五つのポイントから整理する。

小学校・中学校音楽の評価

鳴門教育大学准教授  小山英恵

★教育評価の効率化・簡素化とは、評価行為が子どもの学力の質をより高め、より確実なものにするために的確に機能することととらえられる。「真正の評価」としてのパフォーマンス評価は、①音楽の営みのまとまりとしての評価課題によって質の高い学力を効果的に育成する、②形成的評価と自己評価の結合によってパフォーマンスを的確に把握し、高める、という点において、教育評価の本来の役割において効率的に働く評価として、音楽科における評価に示唆をもたらす。

連載

特別支援教育に取り組む(2)ユニバーサルデザインの学級づくり・学校づくり 三重県いなべ市立員弁西小学校教諭
片山昭子
学級ソーシャルスキルを子どもに育てる(2)学級ソーシャルスキル(CSS)の内容と実践に生かすポイント 早稲田大学教授
河村 茂雄
これからの小学校国語の授業づくり(14)「話すこと・聞くこと」5年生 筑波大学附属小学校教諭
白石 範孝
坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(71)-小学校6年、平均 青山学院大学教授
坪田 耕三
小学校社会科の授業のあり方(1)6年歴史-日本の防災の原点をさぐる 東北福祉大学特任教授
有田 和正
小学校理科の授業づくり(2)3年A(5)「電気の通り道」の学習における観察・実験のポイント 文部科学省教科調査官
村山哲哉
第5回(平成23年度)全国学力調査の問題について(2)小学校・中学校国語 東京家政大学客員教授
大越 和孝
アドラー心理学で教師力を高めよう!(1)教育に役立つアドラー心理学 ヒューマン・ギルド代表
岩井俊憲
小中学校国語教育統計・測定入門(2)測定尺度の水準 法政大学教授
服部 環
小学校英語活動のポイント(37)PDCAサイクルによる「外国語活動」の運営の在り方と方法-その17(指導の基本7) 文京学院大学大学院客員教授
渡邉 寛治
学校の法律相談(13)どんな場合に「公欠」が認められるか 国立教育政策研究所名誉所員
菱村幸彦
だんわしつ/2人の新任教員の死をめぐって 弁護士
川人 博
ひとりごと/頑張れ! 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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