月刊誌 指導と評価

2010年 2月号
  1. 2010年 2月号 Vol.56-2 No.662  定価:450円
特集
セルフコントロール
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特集

セルフコントロールの考え方

東京成徳大学大学院特任教授  中野良顯

★セルフコントロールは、自分が特定の行動(制御行動)を自発することによって、自分の別の行動(被制御行動)を改善することである。
★セルフコントロールは最終的に環境によって制御される行動として初めて分析したのはスキナーである。
★セルフコントロールは就学前から組織的に育てることが望ましい。そのプログラム例を提示する。
★セルフコントロールを可能にする重要な成分は、言行一致行動クラスと賢明な行動選択能力である。どちらも有効な道徳教育プログラムを設計するための重要な基礎概念である。

乳幼児期にセルフコントロールできる子を育てる

鎌倉女子大学准教授   冨田久枝

★乳幼児期の問題として、我慢できない、わがまま、といった悩みを聞くが、乳幼児期では発達の特徴としてそのような行動が見られることもあり、大人側からは問題視されても問題ではない場合もある。また、しつけの問題としてどこまで我慢させるのかといった議論もある。このように乳幼児期のセルフコントロールはその発達と密接に関連している。
★そこでまず、乳幼児期のセルフコントロールに関わる心理的な問題としての欲求不満耐性や自己統制、自己調整などの発達についてそのとらえ方や課題、援助方法について取り上げ、さらに、乳幼児教育の立場からどのような子どもの発達が望まれるかにもふれ、総合的に乳幼児期のおけるセルフコントロールできる子を育てることについて論じた。

学習指導とセルフコントロール

公立学校スクールカウンセラー(元富山県南砺市立福光中部小学校校長)  水上 和夫

★授業では集中や緊張を求めるだけでなく、子どものイライラ、むしゃくしゃした気持ちを理解し、リラクセーションをタイミングよく取り入れる。
★学級全体で行うセルフコントロールを取り入れた活動は、ねらいを分かりやすく伝え、短時間で無理のない活動を続けることで効果が上がる。
★発達障害が疑われる子どもがいる学級では、セルフコントロールに取り組むことで雰囲気が安定し、落ち着いて学習を進めることができる。
★セルフコントロールを取り入れ、集中とリラックスを意識した学習指導を進めることで、子ども自身のストレスとのつきあい方を向上させることができる。

学習指導とセルフコントロール

立正大学特任教授   塚野州一

★セルフ・コントロールを活かし、学習者が自ら主体的に能動的に行う自己調整学習が、教育心理学研究分野で海外および日本でも注目されてきている。
★本稿では、自己調整学習の概要とそこで重視される諸過程、指導法を紹介し、その諸過程におけるセルフ・モニタリングの働きを見る。
★セルフ・モニタリングはセルフ・コントロールの基本的成分だととらえることができる。セルフ・コントロールの向上には、授業や家庭学習でセルフ・モニタリングを働かせる機会を体験させ、その使い方に習熟させることが有効であろう。

生徒指導とセルフコントロール

広島県立教育センター特別支援教育・教育相談部長   齋藤美由紀

★人間は社会生活を営んでいく中で、自分の気持ちを理解してもらえないことや、他者とぶつかり合うことをみな経験する。今の子どもたちには、この当たり前の心のぶつかり合いをどのように乗り越えていくかを、とりわけ学校教育で体験・経験させながら習得させていくことが急務である。
★教師は、生徒指導の人間観・生徒観を踏まえて、子どもたち一人一人を「かけがえのない存在」として尊重し、誰もが遭遇するさまざまな場において、どのような行動をとったらよいか適切に選択するための能力を身に付けていかなければならない。
★子どもたち一人一人が、集団のルールを守ることは、自分のためにもなり、他者への思いやりにつながるということを実感させていくことが規範意識の獲得と、自分で自分の心を調整する(セルフコントロール)力を育成することになる。

カウンセリングとセルフコントロール

早稲田大学講師   岡田佳子・早稲田大学教授   本田恵子

★セルフコントロールとは、感情や欲求を一方的に抑えたり出しすぎることなく、自らの意思でコントロールしながら、その場に合った適切な行動(適応行動)として表現することである。
★ストレス場面で、自分の欲求と社会や自分自身の規範意識の間のバランスを保ち、自我によるセルフコントロールが適切に行われるためには、まず誰に対してどのような感情や欲求があるのかを客観的にとらえる自己理解力を育てる必要がある。そのうえで、学級の見立てに応じて、欲求が逸脱行動にならないために社会のルールに対する規範意識を育てたり、感情や欲求を適切に表現、実行するためのソーシャルスキルを育てたりしていく。

特別支援教育とセルフコントロール

筑波大学教授   野呂文行

★特別支援教育の対象である、特別な教育的ニーズのある児童生徒においても、社会的自立を念頭に置いたときに、セルフコントロールをする力の育成は、大変重要である。
★特別な教育的ニーズのある児童生徒は、短期間でセルフコントロールを身につけることは困難である。そのため、まずは、個々の児童生徒が学校生活で適応していくために必要な支援が何かを見きわめることが大切である。
★個々の児童生徒に必要とされる支援について、最初は教師が実施する。そして段階的に児童生徒自身が、自分の行動をコントロールできるようになるための支援を実施していく。

セルフコントロールの脳科学

お茶の水女子大学教授   榊原洋一

★近年の脳科学的研究によって、セルフコントロールに関わる脳内部位が明らかになってきた。衝動性に関わる扁桃体とその活動を抑制する前頭前野や前帯状回の活動のバランスが個人のセルフコントロールの質と量の決定に関わっていることが多数の研究によって示されている。
★しかし、こうした脳科学的な知見は、多くは成人を対象とした脳機能画像法で得られたものであり、小児期からセルフコントロールが獲得されてゆく過程や、その過程に影響を与える因子(環境)についての基礎的な知見は少なく、臨床応用にはさらに多くの知見の積み重ねが必要である。

セルフコントロール力の評価

(財)応用教育研究所所長  辰野 千壽

★セルフコントロール力は、生きる力の重要な要素であり、その育成が重視される。効果を上げるためには、その評価を正しく行うことが必要である。まず、セルフコントロール力の構成要素を明らかにし、評価の観点を決める。
★評価の方法には、観察法や質問紙法形式のテストがある。
★評価の結果と学力との関係を調べ、指導に役立てる。
★認知活動のセルフコントロールとしてメタ認知が考えられるが、このメタ認知力と学力との関係も考える。

PISA型読解力を育てる(18)小学校国語科での実践

筑波大学附属小学校教諭  二瓶弘行

連載

坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(44) 小学校五年、正多角形 青山学院大学教授
坪田 耕三
これからの理科教育をどうするか(6)中学校第1学年「身近な物理現象」 筑波大学附属小学校教諭
二瓶弘行
第三回全国学力調査結果を分析する(2)小学校国語 東京家政大学客員教授
大越 和孝
標準検査を活用した教育実践(12)NRT標準学力検査の結果を活かして「学力保障」をめざした長野市の取組 長野市教育センター所長
宮下袈裟登
●ネット時代の読書論(23)読書の方法を考える-その3- 東京家政大学教授
平山 祐一郎
だんわしつ/問題表現と解決の模索 宮城教育大学教授
西林 克彦
●小学校英語活動のポイント(11)「確かな学力」と「外国語活動」の目標及び内容について 国立教育政策研究所名誉所員
渡邉 寛治
教育の窓(9)順位を競わずに学力の質的向上を 創価大学教授
赤木 愛和
ひとりごと 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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