月刊誌 指導と評価

2011年 1月号
  1. 2011年 1月号 Vol.57-1 No.673  定価:450円
特集
英語力を育てる
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特集

国際コミュニケーション力としての英語力とその育て方

国立教育政策研究所名誉所員  渡邉 寛治

★国際化の進展に伴い、国際社会で必要とされる資質・能力の育成が求められている。それらは、①共生の心・人権尊重・思いやり②主体性③自己決定・行動力などの資質・能力である。この①~③は、国際的なコミュニケーションの場で求められる資質・能力であるとともに、「国際的に通用する英語による実践的コミュニケーション力(資質・能力)」のエッセンスでもある。
★ただし、これらの養成には時間を要する。それ故、小・中・高の接続あるいは連携による教育で育成する必要がある。そこで、本稿では「国際コミュニケーション力としての英語力とその育て方のポイント」について考察する。

小学校外国語活動において育てたい英語力

元東京女子大学教授  西原鈴子

★「外国語活動」によって育まれるのは、「総合的なことばの力」である。その中核となる概念は「相対的なものの見方」「外国語を鏡として見えてくる日本語社会の理解」「異文化に接する態度」であるべきである。
★だれでも新しい知識を得ようとする時には、すでに知っていることと新しく入ってくることを対照し、既存の知識に統合するために調整を行う。児童の年代は特にその過程でエピソード記憶を活性化させることがたくみである。活動の内容はその認知的過程を考慮に入れて組み立てられるべきである。
★習得される言語能力は、文法・語彙等の構造的言語能力のみならず、社会言語的能力、方略的能力等も含んでいる。小学校の外国語活動ではとりわけ方略能力の育成が望ましい。

小学校外国語活動の進め方

文部科学省初等中等教育局教科調査官  直山木綿子

★外国語活動のねらいは、体験的な活動を通して、児童に外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら、言葉の面白さや豊かさ、言葉で人と係わることの楽しさや難しさに気付かせ、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成することである。そのためには、児童が興味・関心を持つ題材のもと、思わず聞いてみたい話してみたいと思うような活動を設定することが大切である。そのような活動を設定するためには、指導者が児童のことをよく理解していることが求められる。
★四月より外国語活動が全面実施となる。学級担任は、児童をよく理解していること、学級経営をしていることに自信を持って外国語活動に取組んでいただきたい。

小学校外国語活動の実際

千葉県成田市立公津小学校教諭  渡邉浩章

★児童に身に付けさせたい資質・能力を明確にし,PDCAサイクルで授業づくりと授業改善を行った結果,外国語活動の評価規準をおおむね満足できるパフォーマンスが見られるようになっている。
★指導計画を立てる上では児童のコミュニケーションへの意欲を喚起する場面設定や,児童がコミュニケーションの機能を十分に生かせるような活動を意図的に仕組むことが重要である。
★担任は授業の責任者であり,ALTは授業の協力者である。担任は活動中,たえず指導と評価の一体化を図り,授業評価を次の授業に生かす。
★外国語活動を通して,言語や文化について体験的に理解を深めていくには,児童自らプロデュースする体験活動が必要不可欠である。

小学校外国語活動の実際

東京都板橋区立大谷口小学校主任教諭  渡邊美江子

★「外国語活動」でめざす児童像については、「異文化理解」「主体的な行動」「発信型のコミュニケーション力」の三つの観点から設定し、「英語ノート1」の内容を活用し単元を構成した。
★毎時間の目標と評価規準を設定することは、児童の変容を見取るうえでも重要である。子どもたちは英語の数に親しみながら数を予想し、計算問題を作成しながら発信活動も楽しみ友だちとの交流を楽しんだ。
★「外国語活動」の目標に沿って、コミュニケーション重視の言語活動を児童が体験できるような活動形態を工夫する。友だちどうしの認め合い、励まし合いの環境がある学級の基盤も大切である。

中学校外国語科でめざすものとその指導法

関西外国語大学教授  中嶋洋一

★今回の学習指導要領の改訂では、「まとまり」と「つながり」がポイントになる。「まとまり」では、英語というツールを使って情報を得る、相手とメッセージがやりとりできるような「内容」を与え、考えさせることが必要である。「つながり」では、①「中学校区の小・中のつながり」②「入力と出力のつながり」③「人と人とのつながり」が鍵になる。
★グローバル・コミュニケーション能力を育てるために、生徒を「自律的学習者」に鍛える。自律のためには、知識だけでなく、「学習の型」も身につけさせたい。型が身につけば、自分でやるようになり、家庭学習にもつながる。また、授業を
できるだけ学習者によるセルフ・コントロール型に変え、自己評価能力を高める努力をしたい。

小学校外国語活動と中学校外国語科の評価

新潟大学教授  松沢 伸二

★現行の目標に準拠した評価には、高校入試において、社会一般からの不信感がある。
★小学校外国語活動の評価については、フレックス(外国語体験活動)の趣旨を尊重し、「言語や文化に関する気付き」の観点にとどめるなど、現在のフレス(スキル学習)寄りの取組みを修正したい。
★中学校外国語科については、発信力の育成が特に求められるから、学年を超える技能の発達のレベルをスタンダードに定め、これに照らして学習者のタスクのパフォーマンスを判定して、発信力が付き、かつ学校間格差のない、公正な評価を実施する。
★「関心・意欲・態度」の観点を、四技能のスタンダードに吸収して、評定への信頼と重みを増す取組みが必要である。

韓国における英語教育の現状と課題

京都大学助教  趙 郷我

★韓国の「2008年改訂教育課程」では、「英語義務教育(公教育)完成プロジェクト」を前面に出し、国際共通語としての英語とその教育のあり方を再認識するとともに、義務教育の段階からのグローバルな人材育成を教育目標としている。
★「小学校英語国定教科書」では、8単元から16単元に拡大改編されており、既存の教科書では見られなかった「ストーリーテリング」のような自発的構成力を必要とする活動を積極的に行うようになっている。
★今後は教科に対する専門的な内容知識、教科教授法知識、教科学習者知識、教科授業環境知識など教科固有の「実践知(practical knowledge)」の構築が必要であると考えられる。

連載

坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(55)-小学校五年、商としての分数 青山学院大学教授
坪田 耕三
これからの国語科教育(10)中学校「話すこと・聞くこと」 お茶の水女子大学附属中学校教諭
宗我部 義則
これからの理科教育をどうするか(16)中学校三年「生命の連続性」 筑波大学附属中学校副校長
新井 直志
第4回全国学力調査結果の考察(3)小学校国語 東京家政大学客員教授
大越 和孝
これからの学習評価(9)評価基準の設定-三つの方法 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
教育・心理検査入門(10)進路適性検査の活用-学年別進路適性診断システム「PASカード」 (財)応用教育研究所副所長
堀口 哲男
新しい教育評価の動向-主要論文の解説(23)Anne Looney&Val Klenowski「知識基盤社会に対応したカリキュラム」 教育評価総合研究所代表理事
鈴木秀幸
教育の窓-受験者の参加意欲を失わせない試験制度を 教育評価評論家
赤木愛和
だんわしつ/学級経営とアドラー心理学 文教大学教育学部教授
会沢信彦
ひとりごと/ぜいたくな時間 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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