月刊誌 指導と評価

2011年 5月号
  1. 2011年 5月号 Vol.57-5 No.677  定価:450円
特集
指導と評価を一体化した授業づくり(2)算数・数学、理科、生活、図画工作、保健体育
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特集

指導と評価を一体化した授業づくり-思考力・判断力・表現力を中心に

国立教育政策研究所総括研究官  山森 光陽

★「指導と評価の一体化」という用語がスローガンになること自体、これまで指導と評価を別物ととらえてきたことの表れではないか。指導と評価は一体化させるべきものではなく、常に一体であると考えるべきではないか。
★新しい教育課程で重視されていることの中でも、思考力の育成は中心的な課題である。思考力を高めるためには、児童生徒が問題解決過程において実際に思考を働かせることが必要である。解決すべき課題に児童生徒が価値を見いだすことで、より深い思考が促される。
★評価規準や判定基準を教師と児童生徒が共有することが、学力を高めることに寄与する。
★形成的評価の一貫として実施する児童生徒に対するフィードバックや言葉かけの適時性に対する配慮が必要である。    

指導と評価を一体化した授業づくり-小学校算数

埼玉大学准教授  二宮裕之

★「評価を児童の学習活動それ自体の中の一部分として学習の場を構成する」という「評価の学習目的」の視点を、『指導と評価の一体化』を志向する授業づくりを進めていく際の核としたい。
★構成主義的認識論に立つと、「学習のふり返り」「学習のまとめ」といった自己評価活動は、学習活動そのものとしてとらえられる。
★「思考の過程を表現する」「自分の考えを説明する」という算数的活動は、表現されたものを見てそれをもとに考えを進めていることでもある。つまり『思考の手だてとしての表現』を活用する算数的活動を進め、思考を促進しているものと解釈できる。
★児童が行う「自己評価活動」としての表現を見とることで、教師は容易に形成的評価を行うことができる。またその表現は児童の思考の過程であるとともに、さらなる思考を促すものである。すなわち、表現を見とることは「思考・判断・表現」を評価していることにほかならない。また、そのような表現を見とり促していくことこそが、指導と評価を一体化した授業を進めていくと考えられる。

指導と評価を一体化した授業づくり-中学校数学

全校国公立幼稚園長会事務局長・前東京都公立中学校長  楚阪 博

★PDCAの評価サイクルの理解とこの評価サイクルによる数学指導の際の評価の難しさを認識した上で授業づくりを考える必要がある。
★指導と評価の一体化を進めるに当たっては、「小学校算数からの指導の連続性」と「授業づくりの際の評価計画」を大切にすることである。
★指導計画・評価計画を立てるに当たっては、中学校三年間で育てたい力を明確にした上で計画を立案することである。
★評価結果をどのように伝えるかも指導と評価の一体化を図る指導の工夫としたい。
★生徒に育てたい力を身に付けさせるには、数学の授業だけでなく、日常生活の中から数学を学ぶ良さを気付かせることも大切である。

指導と評価を一体化した授業づくり-小学校理科

京都文教大学准教授  大前暁政

★子どもを評価することは、実は教師の授業を評価していることと同じである。単元の途中や終わりに評価を行う。全員ができていれば、教師の授業がよかったことになる。多くの子ができなければ、教師の授業が悪かったことになる。
★単元を終えた時に、知識と技能を習得させることができるような授業を行いたい。そしてできれば、理科好きになる子どもに育てたい。
★そのためには、単元を終えた後に子どもがどうなっているのかのイメージをもつことが大切だ。
★単元に入る前に、習得させたい知識と技能を明らかにしておく必要がある。
★単元計画の考え方と指導と評価の仕方について提案する。

指導と評価を一体化した授業づくり-中学校理科

東京都葛飾区立桜道中学校長  立澤比呂志

★評価は日々の授業で随時行われるが、評価の対象となる要素には様々な側面があり、一面的なとらえ方では評価できない。評価はするが、うまく活用できず、評価に振り回されてしてしまうようではいけない。
★そこで、学習過程での評価活動を「評価計画に基づく評価」と「毎時間の授業で随時行う評価」に分け、二種類の評価表を活用し、日々の授業で無理なく行えるよう工夫した。
★新学習指導要領で追加された内容「自然環境の保全と科学技術の利用」における指導と評価の例を示した。
★評価で大切なことは、評価結果を生徒の学習改善・充実、生徒の個性の伸長、教師の指導改善、学習環境等の改善等に役立てることである。

指導と評価を一体化した授業づくり-小学校生活

國學院大學栃木短期大学教授  田中 力

★学習指導要領の新たな内容については、単元の目標、評価規準を設定し、それをもとに指導と評価の計画を作成する必要がある。
★指導と評価の一体化を目指すためには、活動中の子どもの姿を評価し、評価したことを、その場でその子へ返していくことが大切である。
★活動の節目では振り返る活動を行うようにする。子どもに自己評価を促すことになるとともに、指導者は次の活動を構想するための重要な情報を得ることになる。

指導と評価を一体化した授業づくり-小学校図画工作

東京学芸大学准教授  西村 徳行

★新学習指導要領の特徴は、子どもの学びのプロセスに働く力を、より具体的な姿として整理し、示されている点にある。
★図画工作科の授業づくりにおいては、表現や鑑賞の活動を通して、子どもたちが自分自身の感覚や感じ方、表現の思いなどを十分に働かせることを重視しながら、そこで育てたい資質や能力を明らかにし、それらが学習の過程でどのように働くのかを検討しながら、それぞれの場に応じた授業として、具現化していくことが求められている。
★本稿では、鑑賞活動の授業づくりを例に、指導と評価を一体化させた図画工作科の授業づくりについて述べる。

指導と評価を一体化した授業づくり-中学校保健体育科

筑波大学附属中学校教諭  関野智史

★新学習指導要領では、指導の充実とともに評価の明確化も求められている。評価は生徒のためであり、教師の指導にも役立つものでなければならない。
★適切な評価のために、自己評価を利用した「学習カード」の活用を紹介したい。学習カードを分析的に利用することで生徒の学習状況が見えてくるし、形成的授業評価として指導にも活用できる。

連載

●教室でできる特別支援教育(2)はじめの一歩、次の一歩! 名城大学教授
曽山和彦
●これからの小学校国語の授業づくり(2)「読むこと」2年生-説明文 筑波大学附属小学校教諭
桂  聖
●坪田耕三先生の基礎・基本を学ぶ小学校算数の授業づくり 「わかる」と「できる」基礎・基本の考え方(59)-小学校六年、円の面積 青山学院大学教授
坪田 耕三
●中学校外国語科の評価(2)中学校外国語科の4技能を育成する言語活動とその評価 さいたま市立南浦和中学校教頭
柳澤登紀男
●自己の生き方を育てる学校教育(8)「生徒指導と人格形成」 樟蔭学園常任理事
森田洋司
文部科学省児童生徒課課長
磯谷桂介
明治大学教授
諸富 祥彦
●教師のための発達心理学(2)乳幼児期における遊びと発達 関東学院大学准教授
鈴木みゆき
●PISA2009年調査国際結果の解釈と教育改善(1)読解力その1 国立教育研究所国際研究・協力部長
渡辺 良
●学校の法律相談(2)生徒の所持品を検査できるか 国立教育政策研究所名誉所員
菱村幸彦
●小学校英語活動のポイント(25)PDCAサイクルによる「外国語活動」の運営の在り方と方法-その5(指導案作成の基本1) 国立教育政策研究所名誉所員
渡邉 寛治
●だんわしつ/「ジョン万次郎・江東の会」で学びを 東京都江東区教育センター
落合 静男
●ひとりごと/音楽を聴く 元公立中学校教諭
吉冨 久人
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